<第一章 Slothの種> 第1部 家族の団欒9話 裏
展開が遅いぞ!
あの娘の笑顔が気に食わない。
「--ウーゴ兄様、--」
あの娘の声が気に食わない。
「ウーゴ兄様!--」
あの娘の潔癖が気に食わない。
「---!コホン!では行ってらっしゃいませ。あぁ!後ウーゴ兄様は病み上がりなんですから-------!」
彼を気にかけるあの娘が心底気に食わない。
歪な感情が激しくうねり始めた。
◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ウーゴと父親が会話をしている時のことである。
気だるい体を引きずりながら自室に戻ったルナは椅子に腰をかける。少しの間ボーッと天井を眺め、ふと我に返る。
「私ったらいけないわね...。気分転換にお裁縫でもしましょうか」
教養であり、趣味でもある裁縫に一度手を付け始めると彼女は凄まじい集中力を発揮する。真面目な性格に、細かい作業が好きな彼女にとって裁縫は得意なのだ。
しかしその集中力が仇となる。彼女が趣味に没頭している間、纏わり着いているソレが動き始めた。空気として、ソレは体を蝕む。その事に気がつけないでいた。
「あらヤダ!もう少しで夕食の時間じゃないの!」
急いで食堂へ向かうべく椅子から立ち上がろうとしたルナは激しい目眩に襲われた。
「ッ!少し集中し過ぎたのかしら...ゴホッゴホッ...。ッスーハー。良し!問題ないわね!ウーゴ兄様。今日は夕食に来られるかしら...。少し心配ね...」
ウーゴの性格を良く理解しているルナは苦笑いを浮かべ、もし夕食に遅れそうなら声をかけてあげなければ、と考え食堂へ向かい始め妙な感覚に襲われる。
「ンッ...なに?急に体が火照って...?さっきまで寒かったのに?まさか本当に風邪でも引いたのかしら」
◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇ ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ソレは苛立ちを隠せないでいた。
「彼の味方は私だけで十分だろ?なんでお前が彼の味方のフリをするのさ!」
ソレは嫉妬を隠せないでいた。
「血が繋がってるからっていい気にならないでもらいたいね。そもそも彼にお前という存在は必要ないだろう!」
少し経ちソレは彼の感情を受け取る。
「あぁ良いよ!君の感情は私にとって世界一の宝だよ!」
気分が良くなったソレは張り切る。
「君が君であり続けるなら私はそれを肯定し、見守るよ!」
彼女に纏っていた重たく湿った空気がソレの指示に応じる。
「まずはこの女。必要ないよね。彼が穢れるだけだ」
空気が体に侵入し内側から仕掛け始める。
「その潔癖さ、お前には要らないなぁ。まずはそこから崩そうかな」
ゆっくりと、しかし確実彼女の体と精神に異変をもたらす。
肉体は■え、精神は男を■する。ソレの放つ空気は周りを■■する。