表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

8



毎晩、ミューレが居ない寂しさと寒さを感じる。


毎朝、ミューレが居ない虚しさと、居ないという現実に心が切り裂かれるように痛い。




この俺の腕の中に、抱き締めていたのに。

自分の両手をジッと見つめる。


この手で、抱き締めていたのに、すり抜けて・・・。


サヨナラも何も言えなかった。


ミューレ、お前はどこかで幸せに生きているのか?


俺は、お前がいないと幸せになれそうにない。幸せどころか息をすることすら、まともにできそうにない。




俺は1人でどうすればいい?


ミューレなき世界で、どうやって生きていけばいい?




「魔王様、ミューレ様を失った悲しみは分かりますが、そろそろ執務を再開して頂かなくては、この国が回りません。」


「分かっている。」


宰相がもう限界だと、俺を催促してきた。




俺だって一国を預かる魔王だ。関係ない民を不幸にしたいわけでは無い。

この国を潰すつもりもない。


仕事をするか。



それから俺は、仕事に没頭した。


暇があればミューレを想ってしまうから、考える暇が無くなるよう、何でもやった。


魔王が行う仕事以外の雑務もやった。


土木や建築、手が足りない家の畑仕事や木こりの真似事もやった。


何かしていないと、もう立っていられそうにない。




そんな生活を何年も続けた。


「魔王様、たまにはお休みを取って下さい。」


「必要ない。」


最近は宰相だけでなく、部下が城内ですれ違う度に言ってくる。




いつまでこんな生活が続くのか。


もう、誰か俺を殺してくれればいいのに・・・。





王国の跡地は隣国が貰いたいと言ってきた。

魔王国と不可侵の条約を結び、王国の土地はそこに渡した。


どうでもいい。あの後、何十年も経つと、森が育ってきたらしい。

あんな魔法を放ったのに不毛の地にはならなかったようだ。精霊達の力が混ざっていたからかもしれない。


森が育ち、動物なども戻ってきたのを知って欲しいと言ってきた。

やはり人間は欲深いな。




ミューレ・・・幸せにしているか?


俺のことなど、もう忘れてしまっただろうか。




執務室のミューレのために買った本棚や、ミューレに買い与えた本は、そのまま残してあるが、月日の経過と共に色褪せていっている。


ミューレと一緒に眠ったベッドは、壊れてしまったからもう無い。


ミューレのためのクローゼットには、ミューレの服がそのまま入っているはずだが、思い出してしまうのが怖くて開けられない。


もしかしたら、もう中身の服は朽ちてしまっているかもしれない。


それほどに時は過ぎた。




俺がこんな状態だから、宰相は妃を勧めてくることは無い。それだけは良かったと思っている。

あと300年か400年も経てば、俺が魔王を退くことも許されるだろう。


そうなったら、もう良いだろう?


ミューレがいない世界で1人で生きていくなんて、出来そうにない。



閲覧ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ