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寝る時は、もう初めから抱き締めて寝るようになった。
寝る前に髪を撫でてやると目を細めたため、
俺は毎日寝る前に、彼女の髪を撫でるようになった。
今夜も俺は彼女をベッドの上で抱きしめて、髪を撫でている。
俺は彼女の額に口付けた。
すると、ビクッと彼女が動いた。
反応したぞ。
面白いな。
その後、髪をよしよしと撫でて眠りについた。
次の日も、寝る時には彼女を抱きしめて髪を撫で、額に口付けてから眠った。
そうだ、美味しい物はどうだろうか?
彼女にお菓子を色々与えてみた。
「どうだ?どれか好きなものはあったか?」
無表情だが、自ら次の菓子を手に取ったものがあった。紅茶の茶葉が練り込まれたクッキーだ。
「それが好きか。」
なるほど。そのクッキーが好きなんだな。
紅茶味の菓子を色々作らせてみると、プリンもなかなか好きそうに感じた。
そうして、探り探り彼女の好きな菓子を調べていった。
「熱いものは苦手なんだな。」
熱い紅茶は苦手なようで、一生懸命にふうふうと冷ましている姿も可愛かった。
菓子の好みが分かって、可愛らしい姿を見ていると、今度は、彼女を着飾ってみたくなった。
「どれか好みの衣装はあるか?好きな服があればプレゼントしよう。」
たくさんの衣装を用意してみたが、何の反応もなかった。どれが好きか聞いても、興味がないのか目も向けない。
「そうか。じゃあ俺が勝手に決めるぞ。」
俺は淡い黄色のワンピースを選び、メイドに頼んで着せてみた。
嫌がりはしなかった。
「うん。可愛い。似合っている。」
ドレスとかはどうだろうと思い、レースがふんだんに使われ裾が広がった桃色のドレスを選んだ。
「これなんかどうだ?お前に似合いそうだぞ。」
メイドに着せるよう頼んだが、コルセットを締めると、嫌がって脱いでしまったそうだ。
「コルセットが嫌なのか。」
嫌だとドレスを拒否された残念さよりも、彼女が嫌だという意思表示を初めてしたことが嬉しかった。
心を開いてきているのか?
「これからも、嫌なことは嫌だと言っていいんだぞ。」
街へも連れて行った。
さすがに街で逃げられては困るので、手を繋いで歩いた。
逃げるとも思えなかったが、誰かが懸想して攫われても困る。
手を繋いでおけば、俺が目を掛けている事も知れていくだろう。
街の中央にある噴水に興味があるようで、立ち止まってジッと眺めていた。
湖も好きだし噴水も好きだということは、水辺が好きなのかもしれない。
川や海や滝なんかにも連れて行ってみようと思った。
ある朝起きると、彼女はまだ眠っていた。
可愛い寝顔だ。俺の腕の中でどんな夢を見ているのだろう?
髪を撫でてやると、胸に擦り寄ってきた。まるで猫みたいだな。擦り寄ってくるとは可愛いやつだと、よしよしと撫でてやる。
可愛かったので、ご褒美に額に口付けをしてやった。
この小さく開いた唇に口付けたらどうなるだろう?ふと考えが頭をよぎった。
いや、これとはそういう関係ではない。
もっと尊い関係なのだ。まだこれは子供だしな。
欲望のままに獣のように、ただ身体を求めるようなそんな男女の関係にはなりたくないと思った。
それの相手はこれじゃなくていい。相手も欲まみれの後腐れない女でいい。
彼女の頭の上で止まっていた手を再び動かし髪を撫でてやる。
朝からこれを抱き締めているだけで、ささくれ立った気持ちもいくらか落ち着いていった。
いいな。こいつは。何も求めない。
求めるのは、本を読んでほしい時くらいだ。
それくらいなら喜んで応えてやろう。
よしよしとサラサラな髪を何度も撫で、その髪にも口付けをした。
そんなことをしていると、彼女の目がゆっくり開いた。
「おはよう。起きたか?
よし、今日は抱っこして連れて行ってやろう。」
寝ぼけ眼で目を擦る彼女を抱き上げて洗面所まで運んでやり、メイドに渡した。
抱き上げても嫌がりはしなかった。まぁ良しとしよう。
そして今日も本をめくる彼女を眺めながら仕事を進める。
平和でいいな。
殺し合いなんかするもんじゃない。
人間は勝手に俺のことを好戦的で戦争が大好きだと思っているらしいが、いつも攻めてくるのはあちらで、俺は戦争なんか金が掛かるだけだし面倒だからやりたくないんだ。
別に俺はこれ以上領地を広げたいとも思わないし、あちらも今の領地で満足すればいいのに。
あちらから攻めてくる癖に、被害が大きいだの友が殺されただの恨み言を言ったり、最後には、今に見ていろと捨て台詞まで吐いて引いていく。
懲りたかと思えば、何かと文句を付けては、新しい武器だのを開発してやってくる。
それに、こっそりと魔王国に入り込んで、人攫いをする事もある。
容姿のいい子供や女性が狙われることが多く、拉致の報告が入り次第、回収部隊を向かわせて助け出しているが、中には乱暴されて傷だらけで回収される者もいる。何が正義だ。
もう、王国と魔王国のあいだに不可侵領域として不毛の沼地でも作ってやろうかと思っている。
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