表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/15

1

「はぁ、退屈だな。」

欠伸をしながら俺は呟いた。


俺は今、俺の魔王国と人間の王国の戦争に来ている。

弱いくせに何度も戦争を仕掛けてくる王国にうんざりしていた。


俺は前線から遠くの高台に陣を構えて、豪華な椅子の肘掛けに肘をついて顎を乗せて退屈で欠伸をしていた。



ボーッと戦いを眺めていると、

遠くにヒラヒラと舞う白い影を見つけた。


何だ?あれは。


鳥か?大型の蝶か?


遠見魔法を使って見てみると、サーベルを両手に持って、ヒラヒラの服を着た小柄な女が舞うように滑らかな動きで戦っていた。


強いな。



「おい、アレ見えるか?」

隣に立っていた補佐官に聞いてみる。


「あの目立つ白い影の?」

補佐官もどうやらあの白い影が気になっていたようだ。


「あぁ。あれをできるだけ傷付けずに連れて来い。」

気になる。あれほどの動きができる女だ。ちょっと興味を引かれた。


「御意」

補佐官が部下に指示を出したのを見て、俺はまた肘掛けに肘をついた。



人間の出せる力などたかが知れてる。


間も無く、その女が縄で拘束されて連れて来られた。


よくみると、それはまだ幼いと表現できるような年齢の少女だった。12-13才くらいだろうか。

胸の辺りまで伸びた真っ直ぐで真っ白な髪に真っ白な肌。


そして、何の光も通さないような真っ黒で死んだような目をしていた。

表情は無く、言葉も発しない。

怯えるでも、怒るでもなく、暴れもせず、何の抵抗も見せず大人しくしている。



気になったので連れて帰ることにした。


「もう面倒だから適当に魔法ぶっ放して処理しといてくれ。

俺はコレを連れて城に帰る。」

俺の興味はもう戦場にはなかった。


「御意。」

部下達なら難なく処理してすぐに帰ってくるだろう。



少女を抱えて飛行魔法で一気に飛んで城に帰ったが、城に着いても何の反応もなかった。


捕らえられた事で諦めているのか。



何の反応もないのは面白くないな。

恐怖に歪む顔か、怒る顔か。別に女が喜ぶ顔なんか見てもつまらんしな。



部屋に連れていき、縄を解いてベッドに投げると、組み敷いて上から様子を観察してみた。


やはり何の反応もない。声も上げず、表情一つ変えることはなかった。

身体が硬直するでもなく、顔を逸らすでもなく、力を抜いてされるがままという感じだ。



「何だ、何の反応も無しか。つまらん。」

俺は興味を失って、少女をそのままベッドに置き去りにしたまま、執務室へ向かった。



仕事を進め、すっかりその少女の存在は忘れてしまった。


夕食を食べ終わる頃に、部下から戦争の処理が終わったと報告が入った。


部下を労ってから、部屋に戻り、湯浴みをして素肌に薄いローブを纏ってソファーに座った。


グラスにブランデーを注ぎ、香りを楽しみながら月を眺めた。今日の月は、鋭いナイフのように尖った三日月だった。


グラスのブランデーを飲み干すと、私はローブを脱いでベッドに入って寝た。




朝目が覚めると、何だか胸の辺りが擽ったい。それにいつもより温かい。そして柔らかい。


ん?柔らかい?



シーツを捲ると俺の胸に昨日連れ帰った少女がいた。

しかも、俺はその少女を抱き枕のように抱きしめていた。



「なっ!!」



あわてて手を放し、椅子に掛けてあったローブを羽織る。



なんだ。何の表情も無い割に、寝ている姿は可愛いな。


ボーッと眺めていたら、彼女の瞼がピクピクと動き、ゆっくり目を開けた。


相変わらず光を通さないような真っ黒で死んだような瞳だ。

そして目を開けて起きたはずなのに何も喋らずジッと俺を見ている。



何だ?思わず目を逸らした。

何で俺が目を逸らす?



ベッドに放置しておいたからそのまま寝たのか。


裸の男に抱えられてよく眠れたな。

逃げるでもなく。なんなんだ?


縄を外しているのに、寝ている俺を害そうとしなかったのも謎だ。



害がないならしばらく置いておくか。

どうせ人間はすぐに死ぬ。一時の暇つぶしにくらいなるだろう。



その日の晩も一緒にベッドに入って寝た。

俺はちゃんと寝巻きを着て寝た。


起きると、また俺は彼女を抱きしめていた。

そして、何だかグッスリと眠れて寝覚めがいい。


不思議な少女だ。




それから毎日一緒に寝た。

昼間は執務室のソファに座らせていたが、ただ座らせておくのも可哀想なので、子供用の本を与えた。


パラパラとめくっていたが、どうやら字が読めないようだ。仕方がないので俺がたまに読んでやった。



俺が仕事をしていると、服の裾を引っ張られ本を差し出された。読んでほしいと言うことか。読んでやった。


そう言えば彼女が自分から行動を起こしたのは初めてだ。本が好きなのか。


俺は本を色々買い与えた。そして、彼女の本を置く本棚も用意した。



本以外には何に反応するのか気になって、色々買い与えてみた。


ボールやぬいぐるみ、人間の女が好きだと言う刺繍セットや毛糸、アクセサリーも与えてみたが、他のものは見向きもせず、何の反応も無かった。



「庭園へ花を見に行こう。」

花はどうかと思って彼女を連れて庭園に連れて行った。庭園は反応が無かった。



飛行魔法で飛んで、森の湖へ連れて行った。


すると、彼女は湖の滸に立ってジッと眺めていた。これは反応があったということではないか?



俺は国内の色々な湖へ連れて行った。


彼女は、湖の滸にしゃがんで、水を触ったりすることもある。

湖は好きなんだろう。

閲覧ありがとうございます。

完結させますので、最後までお付き合いいただけると幸いです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ