↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/43

この大和撫子、一騎当千だってよ④

「あの……本当にごめんなさい。暴力女だって絶対この町ではバレたくなくて、つい……」


 涙を拭いながら、小柳さんは辛辣な面持ちで話をする。比較的小柄な彼女がちょこんと正座をしながら潮らしく話す姿は、どこぞのお嬢様のようにも見える。

 先程まで拳を意気揚々と拳を振り回していた

のが嘘のようで、ただのか弱そうな女性と化している事実に俺は戸惑っていた。


「んで、しーちゃんは前の町で何かあったの?」

「し、しーちゃん?」

「名前しおりっしょ? しーちゃんじゃダメ?」

「お、お姉様がそれが呼びやすいなら……構いません……」


 そう言いながら、小柳さんは赤面する。

 とりあえず、ルイの初対面だろうがなんだろうが馴れ馴れしいのはいつものことだ。

 ただ、俺がツッコミたいのはルイのことなんでお姉様呼びしてんの? 


「あの……。私、ちょっと特殊な家の出で。小さい頃から色々な武術を叩き込まれてたんです。その上、結構極端な価値観で育てられたというか……あっ、不用意に私に触れないで下さいね。思わず手が出てしまうので」


 今いち全容は掴めないものの、色々と複雑な事情をお持ちであろうことは察せる。

 俺が初っ端ぶん殴られたのは、歩く爆弾を刺激してしまったということなのだろう。


「こんな性格……というか、体質なもので地元じゃ結構有名で。ずっと避けられて生きてきたんですけど、ちょっと大きな事件起こしちゃって……逃げるようにこの町に」

「オッケーオッケー、オールオッケー! あんま話したくないこと、話させちゃってごめんね」

「お姉様……。ごめんなさい、この町ではそんな自分の事絶対にバレたくなかったんですけど、早速彼氏さんのことぶん殴っちゃって。誤魔化しもきかなくて、パニクっちゃったみたいで……。彼氏さんも本当にごめんなさい」


 そう言いながら、小柳さんは俺に向かって深々と頭を下げる。


 ……ん? さっきから微妙に会話がおかしいと思っていたが、そういうことか。

 そりゃ、普通の思考ならそういう風に捉えるよな。


「あの、ちょっと勘違いしてるみたいですけど、俺はルイの友達です。彼氏はこの豚の方ですよ」

「あ、そうなんですか! それは失礼し……え? ……ん?」

「そうそう、金ちゃんはあーしの親友。彼氏は豚のマーくんの方!」

「ああ……えっと。ひ、人には色んなご趣味がありますもんね! い、いいと思います……」


 明らかに引いている。俺もだいぶ感覚が狂っていたが、美女ギャルがいきなり"彼氏です!"って豚を紹介し出したら、そりゃこうなるか。

 

「どちらにしても、彼氏の豚さんの方もぶん殴ったのは事実ですし。ごめんなさい……」

「あー、いいの! こいつ、金ちゃんのことダシにして女の子の家あがりこんで、口説こうとしてたクズだから! 盗聴であーし全部聞いてるし」

「……豚さんやけにブーブーしつこく鳴くと思ってたけど、私口説かれてたんですね」


 俺の感動を返せ。

 ブレなく、マサルはクズだったな。むしろ、もう清々しいくらいだわ。

 まあ、その件の処遇についてはルイに任せとけば問題ないだろう。


「えっと、金ちゃんさん?」

「あ、俺の自己紹介まだでしたね。榊 金之助です」

「あの、金之助さんも本当にすいませんでした。痛い思いさせちゃいましたよね……」


 涙を滲ませながら潮らしく謝る姿が、ただの美少女で困る。ちょっとした二重人格レベルだな。


「いやいや、さっきも言いましたけど殴られるきっかけ作ったのは俺ですよ。全然気にしないでくだ……」

「ねー、しーちゃん無理して標準語喋らなくていいからね。訛ってる方がかわいいよー」


 少しは俺にも喋らせろよ。

 なんか今日、俺に対してのスルー率高くない?

 

「いや、地元の方言で話すと素が出てしまうというか。やっぱり私、この町で変わりたいと思って出てきたので……」

「ふーん? まあ、しーちゃんがしたいようにすればいいと思うけど。ただ、友達はどんなしーちゃんでも受け止めるから。忘れないでね?」

「お、お姉様……」


 だから、顔を赤らめさせるな。

 百合展開やめい。

 

「あのさ、ルイ。小柳さんもマサルがおかしいと感じる人というか……こう、何を言ってるのかわからないタイプの人みたいなんだけど」

「ん? あー、なんか言ってたね。特殊体質でしょ。いいじゃん、金ちゃん! 仲間ができたね!」

 

 そういうことを言ってるんじゃない。

 俺は、その特殊体質について追求をしていきたいんだよ。

 なんで、マサルのことをあーだこーだ言うことに関してみんな無関心なんだ。よそはよそ、うちはうち並にキッパリしすぎだろ。

 

「いや、そうじゃなくて……」と、会話を戻そうとしたところで、小柳さんに横からツンツンと指でつつかれ、耳打ちをされた。


(違和感を感じるのが私達だけなら、ここで追求しても混乱が生まれるだけですよ。それに、自分の彼氏のことあーだこーだ言われても、お姉様も気分悪いと思いますよ?)

(いや……まあ、そうかもしれないけど。でも、このタイミングの方が……)

(……ごちゃごちゃうるさかね。お姉様に変な風に思われたくないのわからんね?)


 素が出ちゃってますね。

 さっきまで涙目で謝ってた人が出しちゃいけない殺気を一瞬感じたのですが。

 というか、キャラを統一させてくれ、こっちが戸惑うわ。


「ほほーう。金ちゃんとしーちゃん仲良しじゃん! あーし、お邪魔だったかなー?」

「と、とんでもないですお姉様! むしろ邪魔なのは……あ、いえ。何でもないです」


 俺か? 邪魔者は俺なのか? 


 なんか、この人色々と不安定すぎるだろ。

 嘘もめちゃくちゃ下手だし、人との関わり下手さが全面的に出ちゃってるな。最近、俺以上のコミュ障の登場が多くて保護者の気分だわ。


 まあ、小柳さんに関しては人生歴が関係しているのだろう……ということにして、色々と目をつぶろう。

ジンセイ、イロイロ

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。