花飾りの豚③
「フゴゴッ、フゴゴップギョッ」
「"気にしなくていいですよ。兄と仲良くして頂いているだけで充分です" だって。優しすぎるっしょ、我が妹」
まだ妹じゃねえから。そういうのも当人からすると困惑するからやめておきなさい。
しかし、マサルの妹にしては佇まいがとてもおしとやかで礼儀もしっかりとしている。
マサルはふてぶてしくイラっとするが、小春ちゃんはミニブタとしてちゃんと可愛いと思えるな。同じ容姿でもここまで違うのか。
「でも、それって不便だよね。病院とか行ったら治る系?」
「どうかな。丸山先生って人に相談してみたことがあるけど、あんまり細かい事は気にするなって言われたな」
「マサルの病院の先生? ……あーし、あの病院苦手。あそこの事務の娘、なんていうか……イカれてない?」
チョーわかるんですけどー。
まあ、そう言ってる君も充分イカれた人の部類なのだが。
「少し話変わるけど、さっき俺と同じような人いたって言ってたじゃん。丸山先生も同じ事言ってたんだけど、誰だかわかる?」
「いやー、誰だっけなー。だいぶ前だったような、最近だったような……。マー君は知らない?」
「プギッ」
「知らないってさ。まあ、思い出したら教えるね」
……また、この反応だ。丸山先生だけでなくルイも心当たりがあるということは、恐らく気のせいだとか勘違いの類いではない。その人は確かに存在したのだろう。
ただ、違和感がある。俺みたいにマサルのことがおかしいと騒ぎ立てる人物を、マサルに近しい二人が忘れるものだろうか。
これに関しては、やはり何か見えない力が邪魔をしているような気がしてならない。
勿論俺がおかしいという可能性も充分にあるんだが……ずっと何かが引っかかっている。
「金ちゃんそんな難しい顔しないの。先生にも細かい事気にするなって言われたんっしょ? さあ、何か美味しいものでも頼も!」
「フゴゴッ」
その後、ルイに翻訳をしてもらいつつ雑談をしながら食事をとった。
小春ちゃんはどうやら隣町に住んでいるらしい。兄妹仲が良いらしいが、小春ちゃんの仕事が忙しく普段は中々会えないようだ。
今日は久々兄妹水入らずのところに、俺達が見事に邪魔に入ったという次第であった。
しかし、小春ちゃんは全く嫌な顔をしていなかった。それどころか高いコミュニケーション能力でルイと話しを盛り上げ、俺にも自然に話しを振るという気配りも見せ、マサルの事は褒め倒し、こんなどうしようもない兄をしっかりと立てていた。
なんだ、この完璧な豚は。一家に一匹ほしいわ。このまま連れ帰ろうかな。
しかし、ファミレスで複数人でダベるなんて俺には一生縁がないと思っていたが、実際に体験してみると楽しかった。
こういう感想を持てるなんて自分でも意外だ。時間の流れがとても早く、気がつくとだいぶ時間が経っていた。
「……やべっ、もうこんな時間。俺そろそろ帰らないと」
「なによー、金ちゃん。これから二軒目行って、浴びる様にお酒飲みながらオールでカラオケっしょ!」
ノリがもう大学生じゃねえか。陽キャのお手本のような計画を勝手に立てるんじゃないよ。
「いや、俺夕方からバイト入ってるんだよ。悪いけど、今日はこの辺で……」
「えー、つまんないのー」
「フゴゴッ、プギョッ」
「まあ、そうだけど……仕方ないね。金ちゃんお仕事頑張ってね」
よくわからないが、小春ちゃんがフォローを入れてくれたようだ。
この娘といると俺の方がよっぽど豚と呼ばれるべき存在だと再認識してしまい、切なくなるな。
「そんじゃ、また。俺の分の会計はマサル頼んだ」
「プギョッ!?」
マサルは若干不貞腐れているが、何も言い返せない様子だった。当たり前だ、俺にどれだけ迷惑をかけたと思っている。
俺が席を立ち、出口へ向かって歩いて行く途中ふくらはぎ辺りをトントンと叩かれた。
振り向いてみたが誰もいない……という訳ではなく、足元に視線をやると小春ちゃんが俺を見上げていた。
「頑張ってね」
「あ、ありがとう……」
なんだ、わざわざそれを言う為に来てくれたのか。本当にいい娘だな。
……ん? 今喋ったか? いやいや、小春ちゃんが喋っても別に良い……のか?
なんだか変な感覚だ。頭にモヤがかかってるような……まあ、いいか。それより早く行かないと。
俺は店を出て、やや早足でバイト場へと向かって行った。
◇◇◇
「どーしたの、マー君? そんなに小春ちゃんのこと睨んで。ただ、お見送りしただけじゃん」
「……ブギョッ」
「ふーん? よくわからんけど、兄妹仲良くねー」
フオンナ、クウキ




