到着
追手との戦いから丸々2日が経ち剣とミレアは帝国と王国の国境を超え、王国の西端にある都市に行き着くことが出来た。
帝国と王国の辺境を超えてきたということで、勿論中央に比べて魔物や盗賊は多くいたが、その尽くを剣が組織の追手に使った剣は使わずに手刀のみで制圧してしまったため、とても危険な度とは言えないものであった。
とはいえ2日間休憩は挟みつつも歩き続けたことは王女であるミレアの体力的には相当な負担だったらしく、
国境を超え王国に入り都市の影が見えてきた頃には完全に疲弊が全身に現れていた。
それに比べ剣はまるで軽い散歩の帰りでもあるかのような軽い足取りで都市の門番に話を通して辺境伯に事前に要請していた馬車の確認をしていた。
「王女さん馬車の確認が終わった。中に入ったら寝ててもいいからとりあえず乗ってくれ」
剣は馬車の御者席に乗り込みつつミレアに向かって軽く言う。
「次馬車が止まった時には王都だ。中に必要なものは全て積み込まれている。
貴重なマジックアイテムの馬車を用意してくれていたからなおそらく1週間程度で王都に着くからゆっくりしてくれ」
「剣様はどうなさるのでしょうか?まさか1人で運転を?」
その問いに対して剣は軽く首を縦に振り、いいから乗れとばかりに荷台を指さす。
その返答に対して、ムッとしたミレアだったが御者を雇えないのは自分の身分によるものだと思い至り、反論を辞めて大人しく馬車へと乗り込む。
馬車h乗り込んですぐに動き出した。
これから約1週間このまま缶詰め状態だが、その辺はしっかりと配慮されており流石に風呂などはないが簡単な生活必需品や本などの娯楽品が置いてあった。
そのまま馬車の中をチェックしたミレアは道中の出来事を思い返す。
彼.....剣は一言で言い表すならば超人だった。
戦闘技術はもちろん体力や観察力、途中の村で見た交渉術や料理までどれをとっても熟練のそれだった。
このような優秀で若い人材が無名なわけが無いのだが、王族として国内の情報を知ることが出来るミレアですらその名を聞いたことは無く。
一般的に王侯貴族しか持つことの出来ない家名についても聞き覚えはない。
勿論王国に多くの貴族がおり没落した後も家名を名乗り続ける者もいるため一概には言えないが、ローズ家というのは少なくとも王国や周辺国の有力貴族では無いということは明らかだった。
ミレアは自分の父親である国王の顔を思い浮かべながら、どんな伝手で彼を雇ったのか無事王城に到着したら質問しよう、と決意し久方ぶりの平穏な時間を過ごすのであった。