出発
「おい起きろ」
ミレアが幼い頃の夢を見つつ宿のベッドで寝ているとすぐ傍からミレアに声をかけてくる者がいた。
寝ぼけ眼で体を起こしたミレアはしばらくボーッと声をかけた者.....剣を眺めて、
「........あ!!?申し訳ありません!起こしていただいてありがとうございます」
そう言葉を返すがミレアは王国の王女だ。
いくら助けてもらったとはいえ見知らぬ男性と同じ部屋で無防備に寝てしまったのをはしたなく思い顔を赤らめ狼狽する。
「ああ構わないが直ぐにこの都市を出るぞ都市の外が騒がしいおそらく追ってだろう」
落ち着いた声つげる剣だったが内容は全く落ち着いてはいられないものだった。
一瞬遅れて言葉の意味を完全に理解したミレアはさっさと支度を整え(特に荷物もないが)出ていこうとする剣を慌てて追う。
「ですが昨日剣様は仰りましたよね、私を攫った組織は帝国とは繋がっていないから都市の中にいれば問題ないって.....」
「確かにそう言ったが向こうもそれは理解している。おそらく都市の中には入ってこないだろうが、外で待ち続けられると完全に身動きが取れなくなって王国への移動が難しくなる。向こうが完全に準備を整えてしまう前に強行突破するべきだ」
そう言って有無を言わさずに宿を出る。
そして一瞬目を閉じ何かを探るように手を動かした剣だったがすぐに目を開き、納得したように頷くと、ミレアのことは全く気にせずに南の門へ向けて早足で歩き始めた。
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南門は昼間ということもあり多くの商人は旅人で賑わっていた。
そんな中を早足で進む旅人らしき青年と少女は周りの賑わいには目もくれずにそのままのスピードでその都市を後にした。
「剣様これからどうするのですか?」
「見張りの多くは西門に集中していたからこうして南門から出てきた。このまま大回りで東に向かう。その途中で襲撃されたら、全員斬る」
ミレアには一瞬剣の眼が鋭い光を放ったように見えたが、それもすぐに消え元の飄々とした態度と目付きに戻りそのまま歩き出した。
しばらく早足で進む剣とそれに何とか追いすがるミレアの構図は変わらなかったが、突然ピタリと足を止めた剣はチッと軽く舌打ちをして呟く。
「思ったよりも強敵のようだな.......
おい王女さんあんたは俺の目の届く範囲で離れいろ。ここで追手を全員斬る」
そう言って後ろを向いた剣はポケットからピアスを取りだし耳につける。
そして動かないミレアを見て言う。
「早くしろ、死にたいのか?」
その言葉を聞きミレアがスルスルとそばの茂みまで下がると、1回頷いた剣はピアスに手を当てて目を細めると次の瞬間には何処からか取り出された剣を持ちこれまた何処からか襲いかかってきた男と切り結んでいた。
「王女の脱走を手引きした者がいると聞いて王国の騎士か暗部かと思っていたがてめえはどっちでもないな?」
その言葉に対して笑みを浮かべつつ剣は手に持った剣を押し込み敵を押し返して、言葉を返す。
「俺はただの雇われ者だ。訳あって国王に依頼されてな」
お互いそれだけ言葉を交わすと剣を構え直す。
そして敵が先に動く