闇オークションからの逃亡
不遜な態度で見下ろしてくる青年を呆然と口を軽く開けつつ見上げた王女は少ししてから
思い切った様子で言った。
「勝手なことですがどうか私を王城まで連れ帰ってください。」
そう言って頭を下げる王女に青年は今度こそ
素の笑みを浮かべて、直ぐに元のシニカルな笑みを張りつけ無言で手刀を
そして牢に繋ぐ手錠も同じように手刀で切断して王女を立たせる。
「なるべく騒ぎは起こさないように王様に言われてるからなこのままこっそり逃げるぞ」
そう言って青年は王女の返事を待たずに先へと進んで行く。
そのあまりにも堂々とした姿に思わず泡を食った様子だった王女だったが置いてかれそうになっていることに気づいてなるべく音を立てないように青年の後を追う。
「あの.....道は分かるんですか?」
「下調べはちゃんとしてあるこの道は新しい商品を運び入れるための入口に繋がっているから出入り口の警備さえどうにかすれば少なくとも明日の朝までは気づかれることは無い。」
その言葉には王女も納得し現在の状況から
無駄話をする余裕は無いと思い至ったのか今度こそ黙って青年について行く。
そこから何度か曲がりながら進むと目の前に扉が現れた。
「お前はここで待っていろ、外は俺が制圧してくる。」
青年がしういうと王女は首をこくこくと縦に降ってその場に留まる。
その様子に青年は頷きそのまま扉を開けて中にスルッと入り込んで行った。
(あの方は丸腰だけど大丈夫なのかしら?)
王女は思わず心配になってしまう。
それも無理はなく、もしここで青年が制圧に失敗して王女の脱走がバレようものならば
オークションの管理官にそれはもう酷い体罰を受けるであろう。
勿論大切な商品なので顔に傷はつけないだろうが傷をつけずに痛め付ける方法はいくらでもある。
そのため王女の今後は完全にほとんど見ず知らずの青年に託されているのだ。
そんな王女の心配をよそに青年がまるで買い物から帰ってきたかのように自然に扉を開き戻ってきた。
「制圧してきた、ここからとりあえず外に出れる。外は森で夜だから徹夜で近くの街まで移動するが問題ないか?」
そして何事も無かったかのように淡々と王女に確認をとる。
正直王城で花よ蝶よと育てられた王女にとって徹夜での移動というのはとても辛いものであったのだが、幸い拉致されてからずっと牢の中でやることも無く体力は残っていたので
無理をすればどうにかなるだろう。
「はい何とかなります。」
それを聞いた青年は扉を開け外に出る。
すると周りには数人のオークション会場に警備員が倒れ伏していた。
どこからも血を流していないのでただ気絶しているだけのようだ。
そのまま森に入り半刻ほどお互い無言で黙々と歩き続けていたが青年から話しかける。
「そろそろ大丈夫だろうとりあえず状況も知りたいだろうしここで休みつつ情報交換と行くか」
そう言ってから適当な木の下に座り込む。
それに倣って王女も横に座る。
「とは言っても俺はお前の状況はほとんど把握してるからお前が俺に質問しろ、俺はそれに答える」
そう言われて少し戸惑ったような王女だったが決心したように口を開いた。