囚われの王女
「なんで私がこんなところに.......」
そこはとある国の闇オークションの会場の地下、これからオークションにかけられる大事な#商品__・__#を保管するための場所である。
そんな世の裏側である商品保管場所に頑丈な手錠をかけられ、鉄格子の内側に転がされているまだ15,6歳であろう少女が半ば泣きながらつぶやく。
この国では奴隷は基本的には禁止されている。
もしこの会場に国の治安を守る警察が乗り込んだのならば経営者はもちろん商品を買いに来た客でさえ捕まるだろう。
しかしこの国にはこのような闇オークションが無数に存在していて警察も半ば諦めている。
そのためこの場で警察によって少女が救われる可能性はゼロに近いだろう。
「私はただ王都で散歩していただけなのになんでこんな目似合わなくちゃいけないの?」
少女はまた1人答えのかえってこない問いを虚空に放つ。
しかしもちろん答えなど返って来るはずが.....
「それは一国の王女ともあろうものが城を抜け出して呑気に散歩なんかしているからだ」
あった。
少女にそう言い放ったのは向かいの牢に繋がれた青年だった。
その青年は先程オークションの管理人が運んできた商品である。
おそらく少女と同じで今夜のオークションで何処ぞの大人に買われて奴隷となるであろう
少女より僅かに年上に見える青年であった。
青年の答えに少女がそちらを緩慢な動きで向くと青年はさらに言い募る。
「世間知らずの王女様が護衛を撒いて城を出たからだって言っているんだよ。
箱入りのお嬢さんに撒かれるような護衛も護衛だが、自分の立場もわきまえず勝手した報いだな」
青年の言葉は少女の心に重くのしかかる。
全くもってこの青年の言葉の通りであったからだ。
全ては自業自得の一言で片づけられるものだ。
「確かにお前は馬鹿な王女で勝手だがそれでもこの国の王女だ。流石にこのまま売り払われることは無いから安心しろよ。」
それまでのような冷たく突き放すような台詞とは異なる言葉を投げかける青年に思わず少女.....王女は目を見開く
「一体何を......そもそもなぜ貴方は私の身分を知っているのですか?」
「それは俺がお前の親父さん......国王に依頼されたからさお前さんの救出をな」
その言葉に王女は思わず青年をじっと観察するような目で見る。
しかしどれだけ注意してみてもこの青年も自分と同じようにつ変わっているようにしか見えなかった。
武器も持たず両手には手錠をかけられ檻の中に入れられている。
「どうやって助けるのですか.......
分かっているのですか?この手錠は魔力の操作を阻害するもの、つまり私たちは魔法で逃げることも出来ない。
そして武器も何も持たないこの状態で魔鉄でできた手錠を壊すことは不可能です。」
そんな王女の問いにシニカルな笑みを浮かべながら青年は答える。
「こんな純度の低い魔鉄、剣を使うまでも無い」
そう言って青年は王女の目にも止まらぬスピードで両手を振った。
するとまるで元から繋がってなどいなかったかのように手錠はいとも容易く外れた。
「音を立てると不味いからな....」
そして立ち上がった青年は手を真っ直ぐに揃えると、フッと短く息を吐きながら牢の扉を横に斬った。
そしてゆったりとした仕草で牢から出ると、
囚われた王女を見下ろして手首を撫でつつ
「さてと助けて欲しいか?お嬢さん」