「夢魔の卵」~夢魔とばく~
数年の時を経て、夢魔は立派な夢魔に成長し、
沢山の悪夢を島国に振り撒く様になりました。
しかし、
あの悪魔が夢魔に眠らされるなんて事は一度たりとも無く…。
え?じゃあ何故、
夢魔が悪夢の仕事が出来る様になったかって?!
魔界のリーダー的存在の夢魔から、
いい加減悪夢班に昇級させろとの指示が出たからであります。
公に指示が出てしまったので、渋々悪魔は悪夢班への昇級を夢魔に告げました。
えぇ…それはもぅ…渋々と、ね?
そんな夢魔が日々楽しく悪夢を振り撒いていると、何処からともなく軽やかな鼻歌が聞こえて来ました。
『♪ふふ~ん夢食いばくの子成長期~』
「ん?」
何とも楽しそうな歌の聞こえる方へ、夢魔は行ってみる事にしました。
その歌が聞こえる方向へと飛んでいくと、
キラキラと白い服を着た子供がっ!!!
『♪美味しい悪夢を沢山食~べて大きなばくになりましょお~♪』
子供がやんわりと微笑み、先程悪夢を植えつけた人間の夢の中へと侵入し、
そっと悪夢を取り出しているではないかっっっ!!!!!
「なっ…折角俺が悪夢見せてんのにっ!!」
「ぷにゅ?夢食いばくは食べちゃうの~☆」
手の平に乗った、極上の悪夢を一口ペロリ♪
「げっ!!!てめっ!!!俺の造り出した最高の悪夢がぁぁぁぁぁっっっ!!!」
「にゅ?えへへ☆就任されたばかりの新米ばくで~す。あなたもばく?でも、形が違うねぇ?」
にっこりと笑う子供のばくは、ほんの僅かに不思議そうな顔をしたが、
結局夢魔に構わず食事の続きをしている。
「…ばく?!俺は違うぞっ!!!俺は夢魔だぁぁぁぁぁっっっっ!!!」
『にゅぅ?…♪大きなばくになりましょお~♪』
バサバサと小さな黒い羽根を羽ばたかせ、ばくを威嚇する夢魔であったが、
ばくの方は全然お構いなしで悪夢を美味しく平らげたのだ。
「ぷはぁvV美味しかった☆さぁて、帰ろ♪…んにゅ?まだ居たのぉ?…ん、じゃあね☆」
「お…おいっ!!!ちょ…話を聞けよっ!!…おーい…」
白い服の子供・ばくは、人の話等聞く耳も持たずに
ふわふわと帰ってしまったのである…。
「∑ダァァァァァァッッッ!!何なんだよっ!!あのばくってのはっっっ!!!!」
ばくが消えた空間に吠えても何の意味も持たない事は、その後の静寂が物語る。
夢魔は大きな溜息を一つ落とすと、
何だか解らない敗北感に肩を落とし悪魔の元へと帰るのであった。
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「…ただいま…。」
『夢魔、何だその膨らんだ頬は…(苦笑;)』
「ぶぅ…。」
むくれた顔の夢魔に思わず苦笑いをする悪魔兄さん(笑)
『はぁ…。何があったかは知らんが、その顔では口付けが出来まい?』
「…だって…」
『だって、では無いだろう?…お前は未だ半人前の夢魔。悪夢の力も未だ足りないのでは無いのか?』
「う゛っ…」
★図星っ!!★
『我を眠らせる事、それがお前への永遠の課題だ…』
「え…永遠なんかじゃないっ!!!…しっかり見てろよ…っ!!!」
ちゅっ…
売り言葉に買い言葉。
お約束でまんまと悪魔の罠にハマる夢魔君。
「ん…っぅん…は…っ!!」
咥内で絡み合う舌と舌…。
いつの間にやらとろけて悪魔の手中に落ちるのは…やっぱりお約束…。
『見ているだけではつまらんな…。』
「ひゃっ…っぁ!!」
そっと滑らせる指先から、
いつしか快楽の渦に飲み込まれて行ったのだった…。
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「すぅ…」
『…いつしかこの手から逃れ、その若い翼で何処へ行くのだ…?』
小さな寝息を立てて眠る夢魔への寂しげな囁きは、
小さな変化を感じ取った悪魔の想い…。