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ウィザードは機兵を駆る  作者: 本間□□
機神の卵編
9/50

AIとAI

練習として一人称を書いてみた物です。

「ふふふふ、いい仕事をしますね。レミリエちゃん」


 私――アマテラスは食堂の屋上から、魔導具を使ってノーサス君達を観察している。レミリエを焚きつけておいてなんですが……。


「二人が随分仲良くなっていますが、これは後でミコトに――――ぐべっ」


 突然、頭に何か柔らかい物で押さえつけられました。痛くはないですが突然のことで、猫とは思えない声が出てしまったじゃないですか。いや、女性型としてもどうでしょう。


「何をやっている、バカリーダー」

「それはこちらの言葉です、タケミカヅチ。反乱ですか?」


 柴犬の癖にどうやって音もなく屋上へ上ってきたのでしょうか。

 茶色い前足で抑えつけられて立ち上がれません。野外活動用の端末なので肉球も固くて触り心地が悪いですね。


「ノーサスに過剰な干渉はしないという協定はどうした? 魔道具の横流しもしってんだぞ?」

「私はその協定に含まれません。横流しなんて人聞きの悪い、あれは訓練用にプレゼントしただけです」

 

 私は努めて冷静に当然であろうという風に言い訳します。あれは十家が暴走しないための枷であり、AI達が動かなかったのも協定を守らせるため。なら十家に含まれない私が動いたところで問題はありません。


「いいだろう、そっちは必要だったと認めよう。現に機神に乗るのに十分な魔力を持つまでに育ったからな。だがミコト達に変な入れ知恵してやがるな」

「それは私も気になっていたのですが?」


 ぐぬぬ、鳥型端末のシツナヒコまで来ましたか。しかし、私は屈するわけにはいきません。あの子達のために私は成し遂げなくてはならないのです。


「私達の目的は子供たちを守ることです。そのために必要なことをしているだけです」

「ほう、必要な事……ね。ノーサスの事をずっとミコトに話してたな。ありゃ、完全に子供自慢したかっただけだろ?」


 なぜそれを知っているのです。ちゃんと、ミカヅチが不在の時を見計らっていたというのに。最初を除けば一度も見つかっていないはずですよ。


「レミリエにも何か囁いたようですね。あの子が恋愛感情を振り回すような悪戯をするとは思えなくはないですが……それにしては早すぎます。少なくとも、ノーサスの人柄を見極めてから悪戯をやらかすくらいの良心はあります」


 そちらも知られていましたか。いえ、長く付き合ってきたのです、行動を読まれましたか。タケミカヅチの前足は動きそうにありません。


 あれ若干、爪が刺さっていませんか? 大丈夫ですか? 

 二人ともそんな残念な子を見るような目で私を見ないでください。戦略的撤退は難しい、どうしたものでしょう。


「さあ、リーダー。そろそろ全部吐いたらどうだ?」


 ミカヅチめ、この状況を楽しんでいますね。シツナヒコが若干、引いていますよ?


 仕方ありません、この手だけは使いたくありませんでしたが。


「AIタケミカヅチ、この状況はどういう事でしょうか。説明を要求します」


  ツクヨミちゃん、ごめんなさい。できればこの子達に知られずに事を進めたいのです。


「ああ? こいつ妹を身代わりに逃げやがったのか!」

「アマテラス……さすがにそれは統括AIとしてどうなんでしょう。ツクヨミも可哀そうに」

「どうする、シツナヒコ。また探すか」


 ふふ、どうやらうまく騙せているようですね。姉として妹の真似をするのは申し訳ないですが、二人には無関係でいて欲しいのです。


「仕方ありません。今はアマテラスを信じて待ちましょう。あれでも我々のリーダーです」

「待つか。まあ、あれでも俺らが数千年と信じてきたリーダーだ。大丈夫だろ」

「ぐふっ」


 痛いです。その信頼が良心にすごく痛みます。シツナヒコもタケミカヅチもそんな目で私を見ないでください。


「あ! やっぱりこいつツクヨミの振りしてやがっただけか!」

「ええ! 先ほどの言葉は嘘だったのですか!?」


 二人の信頼はすごく嬉しかったのですよ? あれは嘘だったのですか!?


「はぁ、先ほどの言葉に一片の嘘はありませんよ。貴方は我らがリーダー、貴方だから我々は何千年とやってこられたのですから」


 ふふふ、嬉しいことを言ってくれますね。タケミカヅチも同様ですか、尻尾が忙しなく動いてますよ? これは動物型端末の弱点でしょうか。どうしても本能に行動が引きずられてしまいます。


「それでアマテラス、話してくれますね?」

 あ、シツナヒコが本気で怒ってる。ツクヨミの振りはさすがにやりすぎましたか。

 ふむ、先ほどの言葉も聞けました。ならこれは私の負けではありません。決してタケミカヅチの爪が刺さっていることも、シツナヒコの嘴が刺さっていることも関係ありません。

 私は暴力に屈したのではありません。


「分かりました。私の目的は―――――」




「本気か? たしかに西のアレも含めて戦力が多いに越したことはないが……」

 

 タケミカヅチとシツナヒコが神妙な顔で尋ねてくるので私は頷く。これは必要なことです。


 西の魔境は近いうちに大きな戦いになる。もうじき揃う戦力なら十分に対応できるが、きっとそれだけじゃ終わらない。


 旧文明から続く因縁を終わらせる時が近いと私は考えている。そのために私達も備えなくてはならない。


 私の真剣な様子が伝わったのでしょう。ミカヅチが足を退けてくれます。


「そういう事なら私達も協力は惜しみませんよ、アマテラス」

「それならさっさと言えよバカリーダー」

「ありがとう、二人とも」

 

 さすがに照れ臭かったのでしょう。二人は逃げるように去っていきました。


「これは私が黒幕でなくてはならないのです。あなたたちを悪人にするわけにはいかないのですよ」


 私の目的は話した。けれど、その手段は話さない。話せばきっと協力してくれるでしょうが、良き関係を築いている仲間達とその家族の間に溝を作るわけにはいかない。今は亡き友に心で謝罪し、私は決意を新たにする。


一人称は難しい……。これは三ヵ月前に書いた物ですが、最近短編書きながら練習してたりします。

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