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TransSexual  作者: 風花
8/22

00.前進


俺は花も恥じらう16歳になった。


そして俺がこの時代に目覚めてから9年の月日が流れた。


その9年の間に友人たちが帰ってきたのはほんの僅かな回数だった。


「……どうしているかな」


キールは1度だけ国に帰ってきたが、その時は酷かった。

あの美しかった白い髪は艶を失い、美しい尊顔が陰っていた。


あまりにも忙しく、しかし限界だとか言って帰ってきたらしい。


けれどあまりにも酷いので帰国してすぐにぶっ倒れた。

休暇を身体を休める為に費やし、俺はお見舞いに通ったものだ。

そのとき俺は言ったのだ。無理して帰ってこなくてもいいって。


俺は怒っていたし、悲しくもあった。

だから何もかも終えてからじゃないと帰ってくるなと言った。


それからキールが帰国することはなかった。


次にジークフリードだ。


彼もまたここ4年、帰国することはない。

始めはジークが言った通り、半年に一度帰ってきていた。

その度に会いに行ったし、会いに来てくれていたが帰ってくる頻度がだんだん減った。


その代わりのように手紙は頻繁に来たがそれも途絶えた。

まぁ俺は筆不精だ。うまく文章を書けないから3通に一度くらいしか返事は書かなかった。


今思えば、俺は拗ねていたんだろうな。


幼稚な嫌がらせだったと思う。

しかし会えない寂しさと、楽しそうな隣国での様子に素直に嫉妬していた。


そして手紙が来なくなり、俺は後悔してもしきれない想いを抱くこととなった。


長く歯痒い想いは続き、待ち続ける日々も疲れた。


帰ってこない友人達を座して待ち続けるにはあまりにも長かった。


俺の天使シンシアはちゃ~んと毎年帰ってきてるからな。

だから彼女だけには俺の今後を話していた。

サプライズって言うわけではないが、それに近いものであったらいいなと思う。


さぁ、新たな旅立ちだ。


「ようやく、ここまで来たのね」


ここは我が国クロノ王国と隣国マングマール国の間にある聖域。


「違うわね。ただいま、かしら」


そしてかつて魔法大国があった土地。

300年前に更地になり地形が変形し不毛な地になりて再び芽吹いた奇跡の地。


「ただいま。我が祖国マギカマジック魔法国。


 現、中立聖域ユグドラシル」


大樹見下ろす大地、中立聖域ユグドラシル。

そこにクロノ王国とマングマール国が連名で建てられた新しい大学がある。


その名を聖ソロモント魔導大学。

数年前に新しく出来たばかりの魔法・錬金術・呪術・妖術などを学べる大学だ。


出来たばかりというのに並大抵の学力や才能では入れない。

秀才の中の秀才。天才の中の天才。そんな連中ばかりだ。

そんなとんでもない奴らが年齢や性別を超えて集まってくるのが特徴だ。


若かろうが老いていようが抜きんでた才能があれば入学できる。


そんな大学に俺は16歳になった年に入学することになった。

もちろん実力ではない。当たり前だ俺はただの花屋の店長だぞ。


家の力を最大限に使ったと言っても過言だ。

時の12階位の中でもこの大学の設立に多額の援助をしたエディフィールド家。

そして第1階位フィッシャー家の推薦状。

在学生であるシンシアの強い推薦などなど、色々と貰ったわけだ。


そして俺の微妙ながらある魔法の知識と技の技術。


……は入学できた理由の1割ぐらいだろうか。


とくかく取れる手段を全て用い、やっと俺はここにいる。


真新しい制服は妙に気恥しい。

実力もないのに家の権力と金と豪運で入学したのだから。


しかし制服を着用したからには俺もここの学生である。

そして念願だった学生ライフが出来るのだ。


世界の全てが屋敷の中であった俺にとって初めての外の世界。そして故郷。

浮かれずにいられるだろうか?いいや無理だね。


俺は大学の豪華絢爛の白い校門を通った。

同じく本日入学する新入生が歩いていたし、その親族もいた。

ただ俺は一人だ。一人で大学に来たし、なんなら一人暮らしだぞ。


シンシアにだって合格したことを言っていないのだ。

楽しみにしていてくれと言って、合否の連絡はしなかったしな。


驚いてくれると嬉しいが、正しい手続きで入学してないから気まずい。


……大学だし、学科も違うから会わないでおこうかな。


気弱な自分がひょっこり俺を覗いてくる。

3人に合わす顔があるのかと今更に自問自答していた。


きょ、今日は会いに行くのは止めよう。

俺も引っ越してきたばかりで、まだ部屋の整理整頓が出来てないんだ。

今日は入学式と学科の教室を覗くのと大学内を散策するだけだし。


うん。今日は、ね。忙しいし?


後ろめたい気持ちを抱え、俺は講堂へと向かった。

新入生がごった返す講堂の中で決められた場所で式が始まるのを待つ。

そうすると方々で視線が突き刺さった。


「あの子……隣国のクロノ王国から来たみたい」

「えぇ?あら本当。……あ、ねぇネームプレート見て」


俺たち新入生は必ず初日はネームプレートの着用を義務付けられていた。

金のプレートは制服の胸に付けられている。

制服は個人で形が違うからネームプレートを付ける位置は様々だが……。


「エディフィールド?もしかして……」

「シンシア様と同じ家名?」


この大学でもシンシアの知名度は高い。

超人完璧少女のシンシアの成績はトップクラスである。

トップ中のトップなシンシアは将来は魔法少女として活躍することだろう。

しかし次期エディフィールド家の当主でもあるのでそれも難しいか?

いやいや甘い両親のことだ、別の道を進みたいと言えば許してくれるだろう。


「シンシア様の妹さんかなぁ~?」


……。……、あえて言おう。姉であると。


麗しい天使シンシアは15歳にして完成していた。

いいやアレはまだ成長するに決まっている。俺の姉としての感がそう言ってる。


亜麻色の髪は少しウィーブしていて豊かな長い髪を背中に流している。

濃い紫の瞳が相まって、その愛らしい顔を引き立たせてくれる。


長い睫毛が瞬きをするたびに星が散らばる。

薄いピンク色の唇はぷるんと滑らかで、声は鈴のように清らかだ。


何よりも愛らしい風貌でありながら身体は我がままボディ。

ボンっと出た胸と、キュッと締まったウエスト。丸いお尻は安産型である。


毎年その変わりゆく様を見て俺は涙を流すのだ。

感動ものである。俺の可愛い天使は可愛さの頂点にいながらまだ突き抜けてくる。


俺自身を花も恥じらう16歳とのたまったが謝罪しよう。

彼女こそ花も恥じ入って枯らす程の愛らしいさ満開の少女である。


「シンシア様に妹さんがいたのねぇ」

「姉妹がいるって聞いたことあるし、優秀なのね」

「あら?でも……この前母から聞いたのだけど知ってる?」

「なになに?」

「その妹さんってこの大学に通えるほどの才能ってないらしいわ」


ヒソヒソと声は小さくなり聞こえなくなった。

前からの知り合い通しなのか、それともコミュ力が高いゆえの初対面同士なのか……。


まぁ俺を妹だって勘違いするもの仕方がないだろう。


「……ふぅ」


ため息を一つ吐いた。

視線を断崖絶壁の己の胸を見下ろすのだ。

つるーんぺたーん……いや、これでも大きくなった方だぜ?


トリプルAカップだが、一応はちょっとは膨らんでいるんだ。


俺の成長した姿を一言で表すならピッタリな言葉がある。


スレンダー。


胸も腰も尻も薄い。

とっておきが身長が低い。平均身長よりも低い。悲しい。

せめて身長さえあれば見栄えもするが……ちっこい。ちんちくりんだ。


しかし俺が姉だ。シンシアは俺の可愛い天使の妹いいね?


それにまだ身長は伸びている。将来的には平均身長くらいになるだろう。


さて己の胸を凝視する作業をやめ、壇上を見ることにしよう。

そろそろ式も始まりそうだ。俺は静かにその時を待つ。


ざわついていた講堂の中はしんっと静まり返った。

壇上に若い男性講師が登り、その存在感を醸し出していたからだろう。


白く七色に色を変える髪。その髪は三つ編みに編まれて背中で揺れていた。


「……っ」


妖精のような、いやそれ以上の美しい横顔。

金の煌びやかな両眼は詰まらなさそうに瞬いていた。

新入生の誰もが絶句していた。息も吐けぬほど息が詰まる。

続く教師の姿なんて誰も見ていない。


ただ俺が絶句したのはその風貌ではない。


その高すぎる身長にメラメラと嫉妬したからである。

ヤツめ……何をメキメキ成長してんだ。その身長ちょっと分けろや。


中身34歳になった男の悲しい嫉妬心である。

心は今でも25歳だから若いから。若者だから!


いいか!?20歳過ぎたらなっいくら年食っても人間の中身が成長することはない!


無駄な抵抗を試み、精神の安定を図ってみる。

お、落ち着くんだ俺。どーどー……。


すっかり取り乱した俺は校長のありがたい演説を聞くことはなかった。

壇上に並んだ教師の紹介になったときに、ハッと正気に戻った。

というのも周りが尋常じゃないくらい静かだったからだ。

一字一句聞き逃すまいという集中力が垣間見える。


「魔導系研究科・工学部 マテリアル工学臨時講師。

 キール・フィッシャー。

 本来は魔導系研究科・工学部 ポーション工学講師だ」


久々に聞いたキールの声はぐっと大人になっていた。

懐かしいようで全く知らない男の声で、本当に長く会っていなかったんだなと実感した。


キールはぶっきらぼうに自己紹介をして、にこりともせず黙った。

もう少し声を聞いていたかったのにと俺以外の女の子も思ったことだろう。


再びザワザワとしながら式は進んで行く。

そして在校生からのお言葉ですと壇上に上がる人物を見た。


ふんわりと甘い匂いが立ち込めるようだった。


「シンシア……!」


半年ぶりの彼女は、前よりもずっと綺麗で愛らしく凛々しかった。

新入生の男性陣はソワソワと落ち着かなさそうに壇上を見上げていた。


短いスカートを翻し、整えた髪が揺れる。

壇上の中心にきたシンシアは周りを見回してにっこりと笑った。


天使の笑みである。死にそう俺。


ズキューンっと男たちの心に矢が刺さる光景を幻視した。


「ご入学おめでとうございます。

 私は魔導系総合研究科・魔法学部 基礎魔法研究専攻。

 シンシア・エディーフィールドです」


愛らしい声が講堂中に響き渡る。

湧き立つ学生達にシンシアはほほ笑みかけている。


俺の姿は見えていないと思うが(身長的に)


隠れたい衝動に身体が疼く。

だ、だいじょうぶ。見えない見えない……。


まだ顔を合わす勇気がないのだ……視線を外しておこう。

耳だけを立てて俺は必死に顔を背けたのだ。

しかし俺をエディーフィールド家だと知る周りがチラチラと見てくる。


やめろバレるっばーれーるぅううう。


早く挨拶が終わらないかなと身を潜めていた。

愛らしい声のシンシアの挨拶がやっと終わりほっと胸を撫でおろした。


ふぅっと壇上を去るシンシアを目で追っていると。


「……ふぁっ」


目が、合ったような気がした。

気がしただけで本当は違う誰かを見ていたのかもしれない。

ドキドキしながら俺は見つかってませんようにと願う。


次にメインイベントというか、あの有名な彼女からの挨拶。

壇上に登場するな否や、新入生のテンションが一気に爆発した。


うおおおおっと。


講堂は歓喜に包まれた。

壇上の上で背筋を伸ばした美女は美しい笑みを浮かべた。


見事な輝くブロンドの髪。晴天のような澄んだ青い瞳。


シンシアにも負けぬプロポーションで男達の視線を攫う。

露出度が高い服でありながら、下品にならないのは彼女の知性がそうさせるのか。


「みなさん。ようこそ聖ソロモント魔導大学へ。

 私は魔導系総合研究科・魔法学部 高位魔法研究専攻。


 アンジュリーゼ・レッドストーンと申します」


そう世界を震撼させた聖女アンジュリーゼ。

現在の魔法の概念を覆し、魔法を誰もが扱える世界に変えた張本人。


この大学は彼女の為に作られたと言っても過言ではない。

現在、19歳の未成年でありながら世界最高峰にいる。


誰もが憧れる超人の一人だ。


俺は胸の高まりと羨ましさで心が曇っていく。

あぁ俺もそこまでの力があればと……思って思い知る。


そんなのは無理だと。


彼女から立ち込める膨大な量の魔力。

普通の人間が到達することはないだろうとされていた魔力量を持つ。


さて叶わない願望は捨てて、俺は俺がやりたいことをするのだ。


性転換するすべを探るべく不正してまで入学したのだから。


麗しのアンジュリーゼ女史の挨拶も終わり恙なく式は終えるのだった。


俺ことフリージア・エディフィールド。


聖ソロモント魔導大学に入学。

魔導系薬学研究科・錬金術学部 植物育種学を専攻。


本日入学と相成りました。

今日からこの中立聖域ユグドラシルの聖域首都ナイツで生活していきます。


ここは魔導と錬金術師が集まる世界の中心。


俺は緊張と物理的な疲れを蓄積し自宅へ帰宅。

聖域首都ナイツにある1階に工房が設けられている一軒家に帰ってきた。

もちろん工房を使う予定はない。

気を使わせすぎた両親が付けてくれたが……俺の頭を舐めてもらっては困る。


二階の居住区を有難く使わせてもらいます。

無駄に可愛らしい外装の家であるがセキュリティは万全です。

一人暮らしを強行したら要塞のような家が出来ました。


最新鋭のセキュリティが敷かれています。

死人が出るレベルでしたので、セキュリティは下げさせて貰いました。

親には内緒です。大学に通えなくなります。


「ただいま~我が家」

『オ帰リナサイ。フリージア』


ふわふわでかわいい黒いウサギ型マリオネットがお出迎えした。

動力は魔力の宝珠。魔法の力で動き、この家のセキュリティを一任する。


自我はないです。俺の命令に絶対服従の可愛い奴です。


とてとて二足歩行で俺の後ろを付いてくるぜ。

ふと散らかっていた荷物も、綺麗に片付いているのを見て驚く。


「片付けてくれたの?」

『ゴ命令。完遂シマシタ』


あ~そう言えば?朝、言ったような?

うわっ気を付けないとマジで無意識でやらかしそう。

うっかり命令は命を落とす。肝に銘じておこう。


さて夕食を作る前に。


「良い子ねレイズ」

『……』


黒ウサギを俺は『レイズ』と名付けた。

俺の名前からアを抜いた手抜きの命名だが愛着が湧くだろ?

ふわふわのレイズの頭を撫でて、俺は買ってきた食材を台所に持っていく。


その後ろをやはり、とてとてとレイズは付いてくる。

見上げる可愛い紫の瞳が俺を凝視していた。


「ねぇ手伝ってくれる?」

『ハイ。フリージア』


俺は見た目に反して力持ちなレイズと共に夕食を作り始めた。

料理スキルは前世からの知識もあり苦労はない。


さてさてこれからどうなるのやら。


非常に楽しみである。



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