4.魔法とは
やっとこの日がやってきたぞ!
本日の俺はウキウキわくわくな上機嫌マックスである。
あの忌々しい妖精野郎のせいで伸びてしまった先生とのご対面である。
再びフィッシャー家を訪れて、そのまま直接離れにある先生のお宅を訪問した。
ちなみに俺一人で来てます。
メイドはフィッシャー家本宅で待機中。
変わり者のおじいちゃんは人がゾロゾロ家に来るのは嫌なんだって。
まぁ俺も人が多いと落ち着かないから似た者同士かもね。
「御免ください」
カンカンとドアの呼び鈴を叩く。
少しして中からドアは開かれて若い使用人が顔を出した。
「お待ちしておりましたエディフィールド様」
若い使用人はにっこりと笑うと俺を家の中に案内してくれた。
新しく建てられた離れの別宅は綺麗でそれが珍しくついよそ見をしてしまう。
そうこうしていると使用人は立ち止まり中にいる先生に声をかけていた。
「ウィリアム様起こしになりました」
「あぁ入りなさい」
しわがれた声はしかし優しくもあった。
緊張しつつも俺は中へと入り、最上級のごあいさつを披露したのであったが……。
「「……」」
なぜ、なぜ妖精外道野郎がここに!?
ゆったりと腰掛けるウィリアム様のすぐ近くのソファで座る野郎をチラ見する。
「あぁこの子は私の孫でね」
ままま、孫!?
「妖精さんじゃないの?」
あぁッ俺様うっかり!うっかり口を滑らせた!!
あっと口を塞ぐがもう遅い。
ウィリアム様と妖精もどきは俺をめっちゃ見てきたのだ。
静かに探るような視線を向けたままウィリアム様から着席を促される。
俺はそろ~そろ~っと遠慮しつつもウィリアム様の前のソファに座る。
「孫が妖精とはフリージア嬢は何故そう思ったのかな?」
あぁ~やっぱり聞いてくるよねぇー!
魔法の技術が後退したのだから妖精の存在だって極少数の人間しか知らないよねっ
「……綺麗だったから」
「ほう?」
何か見透かす目をお持ちですか?
めっちゃ今ので納得してないじゃないですか。
「えっと妖精さんが戯れていたので」
「なんと妖精が見えると?」
「いえ見えません」
魔眼を使用してない時は見えないし嘘は言ってない。
「今、妖精が戯れていたと言っていたが?」
「……本当に普段は見えないの」
これは嘘じゃない。真実でもないが。
ちらりとウィリアム様を見てみるが半分納得?半分疑いの目をしてた。
やべぇヤツだと怪しまれてないか俺。
ここはちょっと話した方がいいのでは。
「私に魔法の才能はありません。でも簡単な技なら使えます」
「技?」
「その技を使うことで不完全ながらも妖精を見たりできます」
ウィリアム様は黙り込んだ。
考え込んだ後は小さく頷いて俺を見た。
「魔眼?」
え?知ってるじゃん。なんだ隠す必要なかったか?
「そうです」
俺は力強く頷いた。そしてほっと胸を撫でおろした。
やはり赤子ですら出来る技である。知らない方が珍しいのだろう。
「……君が使うその技は今や禁術になっておる」
静かにウィリアム様を苦言を申すように俺に言った。
へ?
ドキドキと俺は心臓がきゅぅっと縮んだ。
あ、やらかしたくさい。
「生体エネルギーを消費するその技は危険極まりない。
今すぐに使用するのを止めなさい」
は、はぁ?
「何を言っているの。そんなことで死にはしないわ」
思わず俺は言ってしまった。
言ってしまった後でウィリアム様と妖精さんが俺を睨んでいた。
あぁもういい!こうなったら全部話してやる。
「その考えは間違ってる。
生命の維持に必要なエネルギーを消費してまで技は発動しないわ」
当然だろう。誰が自死を無意識に行うんだ。
赤子だって無意識で使える技だぞ?んなあぶねぇ力なわけないだろ。
まぁ中には?そんな命を削るようなことするヤツはいないとも限らないが。
それだって無意識の制御が掛かるってもんよ。
「禁術?そんなはずないわ。
魔法が碌に使えない只人が長い時間をかけて得た知恵の結晶なのよ!」
奇跡の力には叶わない。
それでも憧れは止まらず、もがいた先人たちが作った道。
「誰がなんと言おうとも私は使うのをやめないわ」
それに数少ない俺が俺だという証明にもなる。
この力が禁術だとすれば、やっぱり俺は俺として今ここに存在している。
フリージアという少女ではなく俺というアレイズ・ニアリィとして。
記憶は少女と俺のが混ざり合って融合してはいるが……。
胸を張って言い切った俺はここにもう用事はないと思った。
きっとこれで魔法の勉強なんて受けれないだろう。
俺はソファから立ち上がるとウィリアム様が止めた。
「待ちなさいフリージア嬢」
「……もうお話することはありません」
「待ちなさいと言っている。
誰が魔法の勉強をさせんっと言ったかね」
いや言ってはいないけどさぁ……。
とりあえず俺はソファに座りなおした。
「一つ確かめたいことがあるのだが、答えてくれるかな?」
「なんでしょう」
「君はどこでその知識を得た?」
しんと静まり返る室内。ま、聞いてくるよな。
だったら俺はもうその答えを用意していた。
「禁則事項です」
俺はにっこりと笑い悪戯を成功させた女の子のように振舞った。
当然、ウィリアム様は茫然とし妖精さんは逆に笑っていた。
「くくっ……おじい様が形無しですね」
「キール」
「はいすみません。ふふ……外にはこんな子もいるんだな」
妖精さんはキールというのか。
と言うかこの人あれか、そうかなんで気づかなかったんだろう。
「愛し子なのねあなた」
「……へぇ?」
「ごめんなさい。あまりにも綺麗だったから妖精さんだと思ったの」
稀に妖精と人間との間に子供が出来るらしい。
その子供は普通の人間の子供なんだけど、隔世遺伝するらしく孫は妖精の気質が高くなるらしい。
そういう子供は妖精たちから愛し子と呼ばれる。
妖精が愛してやまない、可愛い子。って意味らしいよ。
綺麗な見た目は妖精さんの血が入っていたからか。
妖精がじゃれていたのもそーいうわけね。
じっとその美貌を見ていると、キールさんは立ち上がり俺の目の前に立った。
何だ?っと見上げていると、そのまま俺の目の高さまで屈む。
「フリージア・エディフィールド。先日はすまなかった」
先日?あぁ俺が泣いた、こと。
むむむ蒸し返すなや……心なしか俺の顔が熱い。
「許してくれるか?」
さらっと白い髪が流れる。
その美貌を少し陰らせるキールさんはマジでこの世のものとは思えない。
しかし許してくれだと?
「いや」
ぷくーっと俺は頬を膨らませた。
俺は忘れたいのに、泣き顔を見られたし嫌なのだ。
「……本当は会いたくなかった」
俺だってもしかしたらまた会うんじゃ?とか思ったよ。
でも本館の方へお邪魔しなければ鉢合わせすることも無いと思ったし、だから来たのに。
怖くて泣いたなど男のプライドが許せん。それを目撃したヤツも嫌い。
なによりイケメン死ね。イケメンは滅びろ。
沈黙し俯く俺にキールさんが手を握ってきた。
「怖がらせて悪かった。だからそんな事言わないでほしい」
ちゅっと形のいい唇が俺の小さな指先に当たった。
……は?
ビックリしすぎて目の前のイケメン殴ろうかと思ったぞ。
「どうしたら許してくれる」
真剣な金の目が俺を射抜く。
その言葉には嘘はないように思えた……。
しかしどうしたら許してくれるってなぁ?
「わからない」
「何かして欲しいことは?」
「……ないわ」
考えてみたけどして欲しいことなんてない。
しかし諦めの悪い美人さんは俺の手を放してくれない。
えー?えぇ?もうなんか面倒なんだけど。
怒っているのもバカバカしくなったぞ。
なんかもう適当にお願い聞いてもらおうか。
あー何がいいかなぁ~あー……はぁ~……。
「じゃぁ……呼び捨てにしていい?」
なんかさ、自分でもさなんでこんなお願いしたのかわからん。
「そんなのでいいの?」
「いいわ。それに屈辱的でしょう?年下から呼び捨てにされるのって!」
はい。ということで許します。
「キール。もうあんな風に女の子睨んじゃダメよ」
ぺちんっと俺は無防備なキールのおでこを叩いた。
痛くはないだろうがキールは叩かれたおどこを撫でていた。
その様子を見守っていたウィリアム様は大爆笑。
「ハハハッこれはククッ!」
なんか楽しそう。
腹抱えて笑った後、未だ手を握り合っていた俺たちを眺める。
「二人とも仲が良くて何より!」
いや仲はよくないだろ。耄碌したかじじぃ。
「手を放して」
「……フリージアって呼んでも?」
聞いてないんだけどこの美人さん。
「もう何でもいいから放して!」
恥ずかしいったらないわっ
俺は叫ぶように言うとやっとキールは手を離した。
しかし何故か俺の隣に座り出したぞ。
「どうして私の隣に座るの」
「私も一緒に勉強するから」
え、え~?いやどう考えてもお前年上じゃん。
俺が教えてもらうような内容は把握済みだろ。
なんだこいつ……っとキールを見るが、気にもしないのか無視された。
俺は呆れかえってどうなってるのこれっとウィリアム様を見た。
「ふふ……なんと、ほほ」
笑ってるよこのおじいちゃん。
「いいだろう。二人一緒に教えようじゃないか」
何故かやる気のおじいちゃんに俺、ついていけん。
しかし色々と教えてくれるっていうんだ教えてもらおう。
とりあえずこの時代の魔法ってどうなん?
ってところからだよ。
さぁ俺が生きていた時代からどこまで後退してんだ?
その後、俺は週1でウィリアム様の元へ通うこととなった。
ついでに何故か15歳のキール君も一緒です。
たまにいないけど。
大抵は俺と一緒にお勉強をしているわ。寝てる時もあるけど。
こいつマジで何しに来てんの。暇なの??
てな感じであったが、俺は漸くこの時代の魔法を習うこととなった。
……あのさぁ神様。
この時代の魔法、死ぬほど遅れてんだけどなして?
つーか魔法って廃れたのってレベルなんだけど??
生まれながら才能のあるヤツとかゴロゴロといると思うよ。
なのにこんなに技術が遅れてたら宝の持ち腐れじゃん。
俺の男に戻る夢はいつ可能の?
いや無理だからね?
俺は魔法の才能ないし、フリージアもないから。
魔力なんてもーカスカスよ。
出来て指先からロウソクの炎くらいしか出せんわ。
魔法に精通しているウィリアム様ですら生産系に特化したモノだったし。
ポーションの技術はすごいけど、肝心の魔法はそうでもないんだよなぁ。
俺の植物元気にする魔法の方がいくらか魔法らしいよ。
あ~これど~したもんかねぇ。
基礎知識すら今、俺が持ってる知識の方が上だぜ。
披露する気は全くないけど。
う~ん。う~ん……。
なんか都合よく一気に文明進まないかな?
っと俺は密かに願っていた。
そんな日々のこと……隣国でなにやら凄いことが起きたらしい。
魔法の復活!?
秀才現る。彼女の出現で一般人でも魔法使いになれる?
みたいな記事が載っていた。
世界中を震撼させ、あれよあれよと研究者が隣国へゴー。
調査団も結成。
彼女が発表した論文はそりゃもう今までの常識を覆すものだった。
「……神様は俺を見捨てなかった」
なんか知らんが魔法は身近なものになるらしいよ?
便利でコスパのいい物ってすぐ取り込まれて研究されるよね。
「女神さまじゃんこの人……いや少女」
10歳の女の子らしいよ世紀の大発見したの。
素晴らしいその調子でジャンジャン魔法使いを生み出したまえ。
我が国も例外なく隣国の魔法の技術を取り込むらしい。
素敵すぎ。いいぞーもっとやれ!俺は座して待とうじゃないか。
はぁ~楽だわぁ俺が持つ知識が普通のものになるんだな。
さぁ来たれ魔法ブーム!!!




