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TransSexual  作者: 風花
19/22

おまけ「結婚初夜」


結婚式は終了しました。

正直、一生の思い出になるだろう出来事だった。


人前での口づけは死ぬほど恥ずかしく、目の前の男はイケメンすぎた。


正気度が下がりそうです。


ともかく、結婚式を無事に済ませたが……俺は逃げようとしている。

純白のウエディングドレスを脱ぎ、いつものワンピース姿になっていた。


あ、いやいや。気持ち明るめのちょっと浮かれた色のおしゃれな奴です。


違うよ?浮かれてなんかないよ?


だって逃げるだぜ。いつもの俺の服装じゃバレるじゃないか。


ここは一応、俺たち夫婦の屋敷になっております。

ちょっと急にね結婚したから新居は間に合わなかったんだけど。


だからジョバーナー家の別宅にいます。

一応、中の壁紙とか家具は新調してジーク好みになってるそうです。

俺はそーいうの興味ないんでお任せしました!


さっすがイケメンっ全部やってくれるよっ

そうけっして考えるの面倒だから「お願い(懇願)」なんてしてないんだ。


そんときジークが「自発的キス一回」とか言って迫られたなんてことはない。


あぁないとも。


……し、してないよキスなんて。

だって俺は淑女だもの。そんなお願いを聞いてもらう為だけにキスとかしない。


愛おしく思ったらキスってするものじゃん?

そんなお願いを聞いてもらう為になんて、なんて不誠実か。


だから堂々と「好きって思ったら自然とするものでしょ?」って言ったのだ。


そしたら思いっきり、ほっぺを伸ばされました。


痛かったです。俺のほっぺは餅みたいに伸びません。


でもジークの顔がちょっと赤かったので可愛かったです。


ん?男に可愛いってなんだろうな。変な感覚。


てな訳で、素晴らしい屋敷になってくれたし素敵さ。


だが俺、男に身体をひらく準備が出来てねぇ。


脅されたこともあって、めっちゃ怖い。


知ってる?俺ってな今年で34歳の童貞なのです。

ジークのような社交性や女性遍歴は俺にはないんだぜ?


え?わからん。どうしたらいいのか。


俺は確認する為に、自身の身体を見下ろした。

まず胸。わずかな膨らみがありますが、殿方を楽しませられるものではありません。

まだ成長する見込みはあるのだが、やっぱり小さいのだ。


そして腹。まぁ細身であるからして大丈夫だろう。油断は禁物だが。


さらに尻。おう……ふぅ薄っぺらいぜ。

横から見てもお尻がぷっくりと膨らんではいません。


足。色気のないただ細いだけの棒です。


「……色気ってなに」


総評。幼児に毛が生えた体形。

ロリ一歩手前?いやロリよりは背は伸びてるんで。

将来は平均身長に成長する可能性を秘めた、普通の女子になるはず。


ふぅ。大柄なジークと並ぶとたまに親子かな?って思う。

そうアイツデカいの。背が体格が、そんで筋肉もすごいの。


だって俺を簡単に抱き上げるんですもの。死ね。


男としてなんて屈辱。

そしてきっとあっちの方も大きいんだ。

そうに違いない。


ぞわっと俺は寒気が走った。

引き裂かれる痛みを想像してしまいブルブルと震えた。


む、むりだ。怖い。

そして恥ずかしいっす。嫌です。無理です。


なので俺っ


逃げようと思います☆いえーい!


避難♪避難♪


流石に実家に避難できないし。

結婚したばかりの娘がその日のうちに逃げ出したとか噂になったら大変。


だから俺は街でホテルをとり、一泊しようと思います。


もちろんジークには見つからないようにしないと。


ささ、ジークが身支度を整えている間に颯爽と屋敷を出ようじゃないか。


俺は財布を手に慎重に自室を出るのだ。

この屋敷にも使用人はいるが、初夜であるので夫婦の寝室付近に誰もいない。


夜に差し掛かる時刻でもあるので人も少ない。

逃げるのなら、今この瞬間である。

任せろよ。今まで何度勝手に屋敷から脱出したかわからん。


心配性の両親の目を盗み、街に繰り出したことは昨日の事のよう。


ふふ、ふっ。

お転婆な貴族の娘をやってきた俺にとって動作もない。


すすすっと自室を出た俺は壁に張り付きながら一階へと下る。


気配を消すサイレントをこまめに使いながらも廊下を進む。

玄関から出るなんてとんでもない。

人の気配がしないところで、窓から出るのが正解だ。


周囲を確認し俺はさっと窓から屋敷を脱出。


庭に人の気配はなし。

よしよし。順調だ。今のところ俺に落ち度はない。


念のために自室には書き置きを用意してある。

心配させることもないだろう。完璧だ。


中腰のまま俺は人に見つからないように庭の茂みへと入る。


よしっよぉし!


あとは最難関である塀越えである。

高い塀をよじ登る芸当のない俺は、裏口から出るしかないのだ。


普段は使用人しか使われない出入口。

もちろん鍵がかかっていて、安易に敷地に入ることはできない。


しかしこの屋敷は俺たち夫婦のもの。

当然全てのカギを所持している。


懐にあるカギを取り出し、俺は気配を消して裏口にたどり着く。


「……」


だ、れもいないよね?


周りを見ても気配もない。人の影もない。


「大丈夫……」


ふぅっと息を吐き、裏口の鍵穴にカギを差し込みまわす。

カシャンとカギが開いた音が少し響いた。


「……いないいない」


音が鳴ったのでちょっとビックリした。

でも大丈夫。誰もいない。うんいない。


キィっとゆっくりとなるべく音が鳴らないように裏口を開く。


ほっと胸を撫でおろした、その時である。


ガシッと手首を掴まれた……え?


なん、だろ。後ろを振り向けないぞ?は、はは。


……。


……あ、あぁ……。


恐ろしすぎて、息を断続的に吐き出す。

意を決して振り返ってみると、真っ暗な闇の中で赤と銀色の目が浮かんでいた。


「ひぇっ」


短い悲鳴を上げた俺に、手首を掴んでいた腕が動く。

どんっと塀の壁に追い込まれ、片手は壁に縫い付けられるように拘束された。


「うぅ」


見下ろし何も言わずにいるのだ、この男。


こ、怖いの。助けて誰か。


しかし助けるものはいない。

プルプル震え、恐る恐る怒っているだろ男を見上げた。


「……」


めっちゃ怒ってました。

顔から感情ていうものが全て落ちてしまった無機質な顔でした。


ただ瞳だけが強く訴えかけてくる。


「……ご、ごめんなさいぃい」


ぎゅうっと目を瞑りながら俺は何でも頭を下げた。


「こわ、怖かっただけなんです。

 だって誰にも身体見せたことないしっ俺こんな色気のない身体だしっ」


びぇ~っと泣く寸での潤んだ瞳で俺は無表情のジークに訴える。


「やっぱ違うわ。なんて言われた立ち直れないんだもん!!」


俺は拘束されていた片手を乱暴に振り払い、思いっきり抱き着いた。


「おっぱいだって小さいし、お尻も大きくないし!!

 身体も小さいから、ジークに楽しんでもらう要素がな、」


っと抱き着きながら喚いていたら、大きな手で口を覆われました。


話も聞いてくれないのかと体を離してみると、ジークが渋い顔をして横を向いていた。

気のせいかもしれないが、耳が赤いような……?うーん暗くてわかんない。


「フリージア。一つ聞きたいんだが」


俺の口を開放し、困り顔のまま問いかけられる。


「俺と結婚したことを後悔して逃げようとしたんじゃないのか」


え?なんで?


「結婚したことを後悔するわけないわ」


まだ初めてもいないのに、どうしたら初日で後悔できんだよ。


「私はただ……その、えっちなことから逃げたくて」


あ、のその。すんません。

いらぬ不安を煽ったのでしょうか。俺。


「ジークのことは大好き、です」


まだ言いなれない言葉に俺はめっちゃ恥ずかしかった。


もじもじしていると、ジークが疲れたようにしゃがみこんだ。


「……はぁ」

「えっと、ごめんなさい」


俺も一緒になってしゃがむと、ジークの手が伸びる。


ふわっと抱き上げられて、屋敷の方へ歩き出してしまった。


「ジーク?」

「わかっていたが、本当に突拍子もない行動をとる」


あ、はい。反省はちょっと今、しました。

でも男なら、男に抱かれる恐怖をちょっとはわかってほしいです。


「だが俺が悪かった。焦ってフリージアの気持ちを無視していた」

「それじゃぁ」


ジークは立ち止まり、抱えていた俺を見つめる。


「気持ちの整理がつくまで、抱くことはしない」


おでこにちゅっとキスをしてジークはほほ笑んだ。


俺、それにはめっちゃんこ心臓が高鳴る。


あ、あぁその顔、すごい、やばい。


イケメン怖い。


「うん……ありがとう」


やばい。俺の旦那さん、超イケメン。ムカつく。


「その代り」


ん?


あの、なんでしょうその目。

不安になって見つめ返していると、ぐっと瞳が細くギラついた。


「抱く以外のことはする」


再び、ジークは屋敷を目指し歩き出した。


硬直すること数秒。


見る見るうちに赤くなる俺にジークが噴き出した。


「えっえっえっ??」

「初夜の代わりに一緒に風呂でも入ろうか」


え?あの??え、え、だってさっき……。


「気持ちの整理がつくまでって……」

「あぁ抱かない」

「だったら、お風呂とか一緒には」


言いかけて、俺は言葉を詰まらせた。

あ、言ってないコイツ。えっちなことしないとは言ってない。


や、やだ。にげ、逃げないと。


「は、放してぇええええ」

「ははは、ん?」

「聞こえてるでしょっいやー!!」


暴れ出す俺。しかし男の腕には仔猫が暴れるくらいの力しか感じてない。


いやー!!っと絶叫する俺の声。


その声も屋敷に着くころには、枯れ果てた。

ぐったりする俺を連れて、ジークはそのまま寝室に入った。


再び、騒ぎ出す俺。


そして仲良く二人で浴室へと向かう姿を使用人は目撃したのだ。


お風呂場で何があったのか。


それは夫婦にしかわからぬこと。


「もうやだ、ジークと一緒にお風呂入らないわ絶対」


「時間が合えばまた入るから」


「いやー!けだものぉおっ!」


初夜にて、フリージア・ジョバーナー・エディフィールド。


純潔は死守。


しかし男としてのプライド。崩壊。



まだまだ男と女としての道のりは遠いい。



END


完結記念小説。まだまた可愛い関係の二人。


風花

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