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TransSexual  作者: 風花
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05.黒ずくめの男


「おぬし最近付き合いが悪いのう」

「また来てたんですか」


工房が騒がしいと思って見に来たら当たり前のようにいるぜ。


不満そうな顔を隠しもせず俺を睨むビィシャ先輩。


「好きに使っていいと言ったのは誰じゃ?」

「私ですね」


仕方ない人だなぁと思いつつ興味が出て先輩の作業を覗き込んだ。

何をやっているかはわからないが、見ている分には楽しいな。


「それで?何をしているんじゃ最近」

「ん?まぁ頼まれごとがありまして。それを処理してる所です」


例のエメからの時折くる依頼を達成する作業をしていた。


何に必要なのかわからない素材の依頼がほとんどだが。


時には素材を入手するために深い森の中へと探索にも出かけていた。

ビィシャ先輩から見れば俺は不可解な行動をしているように見えただろう。


「なんじゃそれは?」

「乗り掛かった舟と言いますか……」

「大丈夫なのか?おぬし意外とお人よしじゃからなぁ」

「私だって誰構わず親切にしているわけじゃありません」


手伝うメリットだってもちろんあったし。

ダガードなるヤツの行動やら目的やら知ることになったし。


なんでもダガードはある薬の売人であるらしい。

最近、この街で起こっている麻薬事件と深く関わっているようだ。


エメは大切な人を麻薬によって奪われた過去を持つ。


なんとしてもダガードを捉え、麻薬の生産ルートを探るつもりらしい。

一般人であるエメは警察の特殊捜査班員らしく色々と暗躍しているそうだ。


そして錬金術師である彼女の為に俺は素材を集めているのだ。

捜査に色々使うんだと。まぁそれくらいなら俺にもできたしな。


「心配は無用です」

「じゃがな最近物騒なことが起きてるからのぅ」


心配そうなビィシャ先輩は作業を止めて俺を見た。


「本当に変な事に巻き込まれておらんのじゃな?」

「えぇ。大丈夫ですって」


俺は軽快に笑い、その話はぷつりと切れた。

いつものような日常を過ごしていたが……。


そんなあの日のこと、俺はエメに呼び出されたのだ。




それはいつもと変わらない日だった。

夕方に構内を歩いていた俺にエメが声を掛けてきた。


「アレイズ」


彼女は笑顔を浮かべていた。

しかし周りを警戒する素振りだったので俺は小さく頷いた。


適当な世間話をしながら俺とエメはだんだんと人気のない所へ。


人がいないことを確認しエメは話し出した。


「ついにダガードを捕らえたわ」

「……!やっと」


今まで尻尾を掴めそうで掴めなかったがついにお縄についたか。


「えぇ長かったわ。けれど困ったことにね。

 どうも食事をとらなくて……どうにかならないかしら」


ほとほと困り果てたように言う彼女は疲れ切っているようだった。


俺は少し考えてみたが、解決方法が思いつかなかった。

死ぬ気なのかと俺は疑いつつ、とりあえず会って話さないと思った。


「一度、会わせてくれないかしら」

「……まだ生きていてくれなくちゃ困る」

「変な事はしないわ」


なんで俺そんなに疑われてんの??

人殺しなんてしないよ??つか人殺しそうな顔でもしてんの俺?


力強く頷いていると、信用したのかエメは安心したような顔をした。


「わかった信用する。とりあえずこの件は貴女に任せるわ」

「ありがとう」

「いい?今はまだ生かしておいてね。頼んだわよ」

「えぇ」

「あ、そうだ。念のために顔を隠して彼と会ってね。それじゃ」


ぽんっと俺の肩を叩き、エメは静かに去って行った。

エメの後姿を見送りいつの間にか手の中にあった紙を発見した。


紙には地図が掛かれており、数秒すると燃えて灰になった。


何時もの事だが手品師か何かかな彼女。


俺は忘れないうちにと思い直ぐに大学を出た。

エメから託された地図を思い出しながら俺は陽が沈む前にある屋敷にたどり着いた。


廃墟と言うには綺麗すぎる外装だが、古いのには間違いない。


恐る恐る敷地内へと足を運び、玄関の扉を開いた。

カギは掛かってないように見えるが、微妙に魔法の気配がした。


もしかしたら許可のない者が侵入したら魔法が発動するのかもしれない。


慎重に中に入り玄関の扉も締めた。

中も古びて痛みが激しいが、住めないことも無い?感じだろうか。


広そうな屋敷の中をぼんやりと見つめて、ふとほこりがない道があることに気づく。

何人かが出入りしているようでそこだけほこりが積もっていない。


それを確認し、俺はエメに言われたように仮面つけた。

そして俺はほこりのない道を辿るように屋敷の中を歩くことにした。


夕方の緋色がどことなくフィッシャー家の屋敷を思い出していた。

あそこもお化け屋敷みたいな感じだったなと懐かしくも思った。


そして少し歩くと、地下に続く階段を発見した。

行くのを躊躇する暗さだったが、近くに懐中電灯が置いてあった。

それを手にして、俺は慎重に地下へと下った。


屋敷とは打って変わって、石づくりで冷たく身体が冷える。

まるで牢屋だと思いながら地下を見ていると、部屋の中に鉄格子が嵌められた部屋があった。


ま、まじで牢屋なん?


俺はちょっとビックリしながら牢屋に近づいた。

そこにあったのは黒い塊だった。俺は驚いてひっと悲鳴を上げた。


「……誰だ?」


黒い塊が俺に訪ねていた。

よくよく見ると赤い目と銀の目が俺の方を向いていた。


懐中電灯を黒い塊に向けると、男は眩しそうに目を細めた。


「貴方がダガード?」


男は答えなかったが、俺を睨んでいた。

しかし仮面を被る俺にその睨みは通用しない。


「もう一度、聞くわ。貴方がダガード?」


俺は座り込む男と目線を合わせるようにしゃがんだ。


男は妙なものを見たような顔をしていた。


あら、頬がちょっとこけているぞ。マジで何も食べてないのか??


「……俺のことを知らないのか?」

「え?」


逆に聞かれてしまった。

いやダガードだとは思うけど、確認は必要じゃん??


「知っているわ。でも顔は知らなかったから確認よ」

「くだらない質問だ」


それ以上話す気のないようで、静かにダガードは目を閉じた。


少しでも体力や気力を保ちたいのか微動だにしない。

そんなことするくらいなら、意地を張らずに食事をとればいいのに。


「はぁちょっと待ててね」

「……」


まっ待つと言ってもこの男はここから出られないけどな。

それでも気持ち待ててねと言いたくなるくらい、男は今にも朽ちてしまいそうだった。


俺は急いで立ち上がり、地下の階段を駆け上がった。


「さて厨房は?」


屋敷の中を探索する以外ないようで、俺は急ぎ厨房を探した。

なんとか厨房を発見すると以外にも調理器具は揃っており、食材もあった。


俺は食材や調理器具を一通り確認して腕をまくった。


「よし。作るか」


長い間、何も食べてないみたいだしお腹にいいものだな。


俺はおかゆを作るの決めて、栄養価の高い野菜を細切れにした。

ざくざくと野菜や肉を切る音が厨房に響いていた。


人の家でごはんを作るとか妙な気分だなと思いながら。


一時間しない内に料理は完成した。

木の器に盛りつけて、コップに水を注ぎお盆に並べた。

木のスプーンも付けて、慎重に運び出した。


地下を降りる時が一番緊張したかも。


絶対に足を踏み外すなよと念を押しながら俺は下った。

地下は相変わらず少し肌寒い。

暖かいおかゆの湯気が一層、温かく感じた。


俺は再び牢屋に行くと男は疲れたように俺を見た。


「……なんだ」

「食事よ」


鬱陶しそうな顔をして、また目を閉じた。

だがそこで俺が諦めるわけもなく、牢屋にある食事を入れる所からお盆ごとおかゆを入れた。


ダガードはちらりとも見ないので、ちょっとイラっとした。


「食べなさいよ」

「……」

「何考えてるの?死にたいの??」


そこで、あぁそうだ。なんて言われても困るが。

ダガードは目を開けると俺を真っすぐに見てきた。


「俺に死んでほしいのだろう」

「……は?そんなわけないじゃない」


何を言い出すんだこいつ。 

死んでほしかったら食事だって運ばないし、そもそもエメだって殺すつもりはないだろ。


なんで普通の女の子が誰かを殺そう目論んでるって思うんだ?


俺は顔は仮面で隠しているが、大学の制服を着ているんだぞ?


あんまりな言い草に俺はつい笑ってしまった。

笑い声が響くとダガードは妙な顔をしていた。


「何が可笑しい」

「え?だって馬鹿な事を聞くからよ」

「……なんなんだお前は」


今度は純粋な疑問からくる投げかけだった。


「何と言われても……貴方がご飯食べないからどうにかしてくれと頼まれただけ」


そう。なんでそんなことしてるから分らんけど。

死にたいわけでもないなら、断食するのは止めて欲しいぜ。


「変なものなんて入ってないわよ?」


まったく食べる素振りがないので俺は木のスプーンを持ちおかゆを食べた。


ダガードは俺の行動をじっと見ていた。


「ほら。食べなさいって。

 貴方が食べてくれないと私帰れないの」


とりあえず元気になるまで食事係になりそうだし。

まずはおかゆくらい食べてくれないとミッションクリアできないだろ。


まだ疑われているのかダガードは動かない。

しかたないので俺は水も少し飲んで、後はダガードの方へおぼんを押した。


「はい。これで大丈夫でしょ?」

「……」


しばらく無言が続いたが、俺が動かないのを見てダガードがため息を付いた。

乱暴におぼんを寄せておかゆをかッ食らっていた。


俺は冷たい地下室の中でほっと胸を撫でおろした。


「喉詰まらせないでよ……」


食べづらいだろうから俺は視線を外し、ぼんやりと地下を眺めていた。


「寒いな」


日も落ちて外は暗いだろうなと考えていた。

ふと食べ終わったかなと様子を見れば、ちょうど水を飲み干していた。

空になった容器をダガードは取り出し口に乱暴に戻した。


行儀悪いなぁ……。


食器を回収し少しは顔色が良くなったような気がした。


「それじゃぁ明日も来るから……あ、そうだ」


おぼんを回収しながら俺はダガードを見て思い付いた。

ダガードは俺を見たが興味なさそうに横になり背を向けた。


俺は気にもせず、おぼんを持って地下を出た。

厨房に戻り食器を洗って片付けると、先ほど見つけていた毛布を取りに行った。


意外と綺麗だった毛布を持って再び地下へと下った。

何も言わずに俺はドカドカ牢屋に近づくと鉄格子の隙間から毛布を突っ込んだ。


「……は?」


ダガードが初めて間抜けな声を出した。

無表情だった顔が驚きと困惑に満ちていて俺を見ていた。


「寒いじゃないここ。夜はもっと冷えるし無いよりましでしょ?」


そしてダガードの言いたそうな表情を無視して俺はじゃっと手を上げた。


「もう帰らなきゃ」

「お、まえ……」


何か言いたそうだが俺はすぐに帰らなければならん!


レイズが最近、外出の多い俺の行動を制限しようとするのだ。

また今度夜中に帰ることになれば、俺はレイズにより家から出れなくなる!


セキュリティが厳しいぜ。

未婚の貴族の娘だからな一応。俺も。


俺は急ぎ地下室を出て、暗くなった外へと飛び出した。


ひんひん言いながら俺は自宅へと急いで帰るのだった。

可愛いはずのレイズの目がつり上がっているような気がしたが見なかったことにした。


しかしその視線を受け流し俺はお風呂へ直行しごはんを食べてその日を終えた。


次の日。俺は朝早く起きた。

ベッドの近くでレイズが俺を監視するように見ているのを発見した。


いや、こえぇよ。


「お、おはよレイズ」

「フリージア早起キ」

「えぇちょっと出かけるの……」

「学校ニハ早イ時間」

「うん。ちょっと先輩に用事があるの」


誤魔化すように俺は言うと、急ぎ身支度を整えた。

レイズがずっと傍を離れず付いてきたが無視して家を出た。


例の屋敷を目指し俺は再び厨房に立った。

昨日の晩のままのようで特に食材の補充はされていなかった。


「さて朝だし軽めで温まるモノがいいわね」


さっそく俺は調理に取り掛かった。

暖かいスープを作りながら自分もおなかが空いたなと思った。


ついでだし俺も食べちゃお。


二人分のスープを作り焼き立てのパンを持って地下に向かった。


相変わらず怖い階段を下り、寝てるかもしれないダガードの元へ行く。


「おはよう?」


黒い塊が毛布をかぶっていた。

声を掛けるとのっそりと起き上がり変な顔をして俺を見ていた。


「朝ごはん。食べられる?」


そんなダガードを無視して俺はおぼんから自分用のスープとパンを除いて牢屋に入れた。

ダガードを無視して自分用のパンとスープを仮面の隙間から放り込んだ。


仮面あると食べづら……。


俺の食事音だけが地下で鳴り響き渡るのがちょっと変な感じだった。

朝食を食べ終わり俺はダガードの方へ視線を向けた。


「食べないの?」

「……、……食べると思うのか」

「昨日は食べたじゃない」


また黙ったので俺は昨日と同じようにパンを一かじり、スープを飲んでみた。

仮面を浮かしながらの食事はやっぱり面倒だった。


「はい食べて。片付かないじゃない」


もごもごしつつ俺は食器を戻す。

ほらほらと眺めていると、またもやため息をついてダガードは食べだした。


いちいち毒見しないと食べないのかいこの野郎。


毎回これの下りしないと食べてくれないとか本当に面倒。


しかし青白かった顔は少し赤みが増したような気がする。


「体調よくなった?」

「……」


全然話してくれないんだけど。

まぁ毛布もあったしごはん食べたし少しは体調は良くなっただろう。


あ、回復ポーション持ってきたらよかったなぁ。

いやでもポーションとか知らない人間に貰っても飲まないか普通。


……知らない人からポーション飲んだけどな俺は。


あの時はほら、ちょっと自暴自棄だったというか、ね?


ダガードの食事風景を俺はぼんやりと見ていた。

朝の早い時間だったし、ごはん食べたら眠くなってきたなぁ。


「お前」

「……うん?」


眠いなぁと思っていた所に食べ終わったダガードが俺を見ていた。


「なんですか」

「俺のことを知らないのか」


なんじゃその質問。

ふぁあ~……眠。えぇっとなんだっけこいつ何したんだっけ?


そうそう麻薬の売人で……うんうん。


「そこそこ知ってるわ」

「何が目的だ」

「……?」


目的と聞いて俺は首を傾げた。

う~ん目的は一つなんだが、聞いて答えてくれるのか?


「貴方に聞きたいことがあるだけ」

「なんだ。話せ」


いやどうして乗り気なのこの男?

何時になくやる気のようで、赤と銀の色の目が俺を捉えていた。


そこまで言うのなら聞こうじゃないか。


「……ジークフリードって名前に覚えはない?」


ダガードの目が見開いた気がした。

俺は思わず前のめりになって牢屋に近づいていた。


「その顔知ってるのね」

「なんのことだ」

「嘘。聞き覚えがあるから驚いたんだわ」


やっぱりジークのこと知ってるんだ。

どういう関係かなんてわからないし、全然話してくれないけど。


「生きているの?」


ダガードはそれはもう怪訝そうな顔だった。


「それだけでもいいの教えて」


必死な俺の様子に考えるような素振りをしてから、小さく頷いた。

俺は曇っていた心が晴れ渡る感覚を覚えた。


「そう……!そう。よかった」

「その男がお前の聞きたかったことか」


不思議そうな様子であったが俺は力強く頷いた。

するとまた思案顔でダガードは俺を観察していた。


「知り合いか」

「……そう、だったらいいわね」


何も言わずに姿を消したのだ。

俺の事を友達と思っていてくれているかはわからない。


「知り合いではないのか」

「さぁ、ね。貴方には関係ない事よ」

「……お前はどうしてここにいる」


あら?昨日と同じ質問をされてたな。

そんなに俺がここいるのが変なのかな??


「言ったじゃない。知り合いから頼まれたって」

「組織の者じゃないってことか」

「えっと組織ってなに?」


俺は変なことを言っただろうか。

ダガードは絶句したように黙ってしまった。


う、ううん?


「私、変なこと言った?」

「……無関係だと言うのか」

「なんのことだがさっぱりなんだけど……」


お互いに沈黙し、妙な空気が流れた。

ダガードの無表情でありながら困惑を極めているようだ。


「ジークフリードを探して、お前は何がしたい」

「何をって……話がしたいのかしら」


多分きっと色々と文句を言いたいのだ俺は。

どうして何も言わずに姿を消し、俺に何も言ってくれなかったのかと。


シンシアは知っているのにどうして俺だけ?と。


少しでも俺のこと……待ち人である俺のことは考えなかったのかと。


「ただそれだけ、その為だけにココにいるんだわ」


ぶっちゃけ手を貸す義理はないのだエメに。

俺はダガードに恨みも復讐?もする気持ちもないし。

それらはきっと俺にあの紙を託した名もなき女性がしたかったことだ。


俺には関係ないこと。

それでも今ここににるのは少しでもジークの話を聞きたかったから。


「さてと私の話なんていいじゃない。

 流石に昼もここには来れないからごはん作って置いておくわね」


おぼんを持って俺は立ち上がった。

そろそろここを出ないと講義に遅れてしまう。

強い視線が背中に突き刺さったが俺は地下室を出た。


厨房に戻り後片付けしながら昼食の準備をする。

出来上がったサンドイッチを持ち再び地下室へと向かった。


相変わらずダガードは人をその目線だけで殺せそうな目つきだった。


「これお昼にでも食べてね。お水も多めに置いておくから」


おぼんを牢屋に差し込みながら俺はちらりとダガードを見た。


さっきまでおしゃべりだったくせに今はだんまりらしい。


「じゃぁね。夜にまたくるから」


そう言って立ち上がり、俺は背を向けて歩き出した。


「もう来るな」


地下室に響き渡る無駄に美声な男の声。

ゆっくりと振り返り俺は首を傾げた。


「ここには来るな」

「……なぜ?」


ダガードは一度口を閉ざしたが再び口を開く。


「巻き込まれるぞ」


ただその言葉だけを言うと背を向けてしまった。

それ以上は語るつもりはないらしいが……俺はダガードの背に言葉をかけた。


「ごめんなさい」


何と言われても一度始めたことは辞めない。

まだジークのこと全部聞いたわけじゃないし、君しかいないんだ。


ジークのこと話してくれそうなの。


俺は地下室を出て屋敷を後にした。

少しだけ後ろ髪を引かれたが、夜もくるのだしと大学に向かった。


指輪のこと聞いたら教えてくれるかな。

どうして貴方がその指輪を持っているのか、ジークはどこにいるのか。


今頃どこで何をしているんだろうな。


遠き友人を思って少しだけ胸が締め付けられた。


この痛みはなんだろう。



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[一言] どんなシーンを見ても、主人公は劣等感とセットで描かれていて、せめてそれを気にしないような境遇(前世の花屋、のような身の丈にあった地位)なら傷つかないだろうなって胸がジクジクする 別に自分のこ…
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