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TransSexual  作者: 風花
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0.目覚め

注意事項をお読みいただき閲覧をお願い致します。

何の因果なのか俺は、俺という人格を持ちながら現在に目覚めたらしい。


その事実に気が付いたのは何と生死の境を彷徨っていた時だ。

走馬燈と言うのが記憶が次々とさかのぼり、ふと生まれる前の記憶すら蘇っていた。


そして峠を越えて気が付くと俺は俺になっていた。


何を言っているのかわからないだろうが俺にもわからん。


いや今までの記憶だってあったさ。

だが俺じゃなかった人格は何処へと消えてしまった。


フリージア・エディフィールドは男だった前世を思い出した。


……思い出さなくても良かったんじゃね?

別に俺は英雄だったとか賢者だったとかじゃないからね。


普通の何処にでもいる男だった。

しいて言えば不慮の事故で天に召されたということぐらいか。その記憶だってあやふやだったりするし、だからな……。


どうして俺、女の子の身体で目覚めたんですかねぇ?





『TransSexual』





俺はとても身体が弱かったらしい。

直ぐに熱を出して虚弱で、性格も暗い子供だったようだ。


その弱い体は一度生死の境を彷徨い俺が目覚めたと。

はぁ?はぁ??意味がわからんよ。

改めて考えてもわからんし、わかりたくもない。


「フリージア?どうかしたのですか?」


母であるマーガレットが美しいご尊顔を曇らせて問いかけてきた。

生死の境を彷徨った娘を案じているのはその視線や態度で分かっている。


が、それどころではないのだ。母よ。


なぜ男だった俺が、女の子の身体で目覚めてしまったのか。


違和感しかないんだけど?えぇ神様???

何してくれてんの神様?ふざけてんのかちくしょー!!!!!


「……いえ、何でもありません」

「そう?何処か遠くを見つめているようだったから……」


しかし無駄に25歳独身庶民童貞の俺は大人だった。

少女の7年間の記憶もある状態で取り乱しはしなかった。

ベッドの住人と化している現状も相まって頭の整理はつけてある。


「お母さま。一人にさせて疲れたの」

「えぇわかったわ。何かあれば必ず呼ぶのよ」


麗しの母は娘の額に口づけると、何度も振り返りつつも部屋を後にした。

しんと静まり返った部屋はフリージアの少し荒い呼吸音しか聞こえなかった。


「……~~~う」


嘘じゃボケー!!!


フリージアはビダンビタンとベッドの上で転がり悶絶した。


頭の整理なんてつくかーボケナス!!


なんじゃお母さまってうおおおおお気持わりぃぃいいいいいい!!!!!


びだんっびたん転がり高価なベッドのスプリングは軋む。

ぎやあああっと悲鳴を上げなかったのは大人だった男の秩序からだ。


「ハァーひゅぅ……ひゅぅ」


肺から変な音がする。やべぇちょっとハッスルしすぎた。


呼吸が定まらなく息苦しさで正気に戻ることができた。


落ち着くんだ俺。俺ことアレイズ・ニアリィ。

貴様は立派な男だったはずだ。まぁただの花屋の店長だったけど。


別に花が好きで花屋に就職したわけじゃねぇ。

実家が花屋だったからなんとなぁく手伝いの延長で就職ちゃっただけさ。


そうそう、濡れた地面で滑って後頭部を強打して……。


やめよう思い出すのは。気分が悪くなってきた。


「うぇ……」


うんべぇっと舌を出し、ハァハァと息を整える。

変な音がしていた肺は落ち着てくれたようで良かった。


俺はとりあえずベッドに横になってみた。

小さい手を眼前に掲げてじっくりと観察する。


「ちっさ。白っ……ぷにぷに」


自分の手をぷにぷにする行為は果たして変人の所業だろうか。


いや断じて俺はロリコンじゃない。

おっぱい大きい女性が好きです。綺麗なお姉さんが好きです。


よし俺正常!


さて……うん、まぁわかっていたが、俺ってばちんちくりんだなぁ。


ぺたぺたと体を触りながら俺は思う。

いや少女だった記憶もあるから自分の体に違和感はない。


ないっちゃないが、俺という男には違和感だらけだ。


あぁ如何なものかこの喪失感。

まぁ前世で使い物にならなかった息子はこの際諦め……め。


「……ハッ!」


神様ありがとう。きっと俺にチャンスをくれたんだな。


俺、天啓を得る。


なるほど。神様あなたは哀れにも童貞だった俺を救済して頂けるのですね!


そうかそうか。この世は剣と魔法の世界。

奇跡をも生み出す神羅万象があれば俺を男に性転換させる方法もあろう。


なるほど神様あなたは俺を見捨ててはいなかった。


すみませんでした神様。今までの暴言を撤回させてください。


「おっし、おっし」


ぐぐっと拳を突き上げた。

そうと決まれば体を丈夫にし自由を手にしなければなっ。


こうしてフリージア・エディフィールドは劇的に健康を取り戻した。


奇跡だと周囲は涙を滲ませて喜んだ。

若干、挙動不審な娘を訝しげに眺めながら両親は咽び泣いた。


この一か月で彼女の身体は驚くほど生命力に満ちていた。

医者も驚くばかりでまさに奇跡であった。


「はぁ早く学校いきてぇ」


しかし奇跡を起こした張本人は暇そうにベッドから窓を眺めていた。

次の日には自由に庭を走る回る彼女を両親や使用人は涙を流し喜んだ。


「え?ど、どうしたのみんな(うげっなんだこいつらキモ)」


フリージアは困惑を滲ませながらその光景をただ眺めるしかなかった。



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