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どこにでもあるそんなお話  作者: まっひー
33/33

7 襲来

「王国もなんか久しぶりだな」


俺達はペルンから歩いて王国の裏門まで来ていた


「そうだねシロ君」


なぜ王国に来たのか、理由は簡単、王国を攻める為だ


「それじゃ、やりますか…」


俺はそう言ってナイフで美桜を切る、腕、脚、背中の順に


「んっ、…」


勿論、そういうプレイではない


「大丈夫か?美桜」


「うん、大丈夫だよっ」


美桜は明るく笑う、しかし彼女の腕や脚は赤い傷痕がたくさんついている


次に俺と美桜は俺の嘘の能力で空に浮遊する


「それじゃ、王様の下まで行くか」


そして俺と俺に抱えられている美桜は王国の空を飛んだのだった


――――――――――――――――――――――――


「おお、なんかどんよりしてるな」


街の上空を飛んでいるとよく分かる、王国の街には前のような賑わいは無く言葉通りどんよりとしている


「フフっ、シロ君がたくさん人を殺したからだよ」


美桜が言い返す、


まあ、確かに理由は俺しかないだろうが


「謁見の間に着いたぞ」


今、俺達がいる場所は謁見の間、この国ジュリアート王国の国王が居座る場所だ


いると言っても謁見の間の窓の外に浮いているのだが


「ここからは手筈通りで行くぞ美桜」


「うん、私頑張るね」


そして二人は窓から城内に入ったのだった

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「はぁ…くそっ!オワリシロトめ!」


謁見の間の玉座に座り、怒鳴り声を張り上げるのはこの国の王、ジュリアートだった


普段はここまで怒鳴る性格ではないのだが状況が状況であった為、ジュリアートはここまで苛立っていたのだ


今回の勇者召喚は三ヶ国共同で行った、複数召喚の研究がオズワルド魔法学園の役割、召喚魔法の基礎の提示がインクルシュ帝国の役割、そして世界崩壊を防ぐ為の生贄の勇者の処罰と残った勇者の育成が王国の役割であった、


それぞれの役割を果たす事で三ヶ国の共同関係は成立する、しかし王国はあろう事か生贄の勇者を取り逃がしてしまう


さらには一人の勇者を死なせしまい、強力な固有スキルを持った勇者も手放してしまったのだ


王国は自国の失態をいまだに帝国と学園に伝えてはいなかった


それも当然だ、こんな失態を伝えられる訳がなかったからだ


「くそっ!くそっ!くそがぁ!」


「お、王よ世界各地に勇者を派遣しました、もう少しで生贄が見つかる筈です」


「分かっておる…しかし、いつまでも隠す事はできんぞ…」


ジュリアートに冷静さを取り戻させたのはこの国の騎士団長、アイシャ・リメルダだった


「それに我が国にも勇者の中でもかなりの腕前の者を残しています、もし王国にシロトが攻めてきても必ず捕まえる事ができます」


そう言うアイシャの後ろには、神木、早風、天野、河上、そして最後に吉瑞がいた


「ヨシミズ、まだ見つからないのか?」


「は、はいアイシャさん、今はペルンという街を見ているのですが建物の中まで一つ一つとなると…」


吉瑞は白兎達を捜す為に各地に派遣されずに王国に残っていた


「そうか…」


「すみません、俺が見つけられなくて…」


「おいおい、何もお前が気に病む事はねぇよ吉瑞」


早風が落ち込む吉瑞を励ます


といっても吉瑞が落ち込んでいて、必死に白兎達を捜そうとしているのは、捜す者の中に望月がいるからなのだが…


謁見の間は街よりも暗い雰囲気が漂っていた


「陰気臭いなぁここは」


しかしそんな時、静寂を破るかのように声が聞こえた


「お前は!?」


「ああ、アイシャさん久しぶりですね」


「シロト…!貴様!まんまと戻ってきたか!」


「怖いなぁ、ていうか各地に勇者を派遣したとか聞いたけど、面倒な奴は殆ど全員残ってるじゃん…」


アイシャさんの後ろには神木先輩、早風先輩、詩織先輩、河上、吉瑞がいた


「おお?吉瑞か?お前も残ってたんだな」


「白兎…!お前……望月を返せ!」


「え?ああ、こいつか?」


そう言って俺は隣に立っている美桜を呼び指す


「望月…!身体中が傷だらけ… この野郎!」


吉瑞は今にも殺しそうな目つきで俺を睨む


「おっと怖い怖い、でも吉瑞、お前の能力じゃ俺は殺せないだろ?」


「くそが!」


吉瑞は背中に背負っていた弓を即座に構え、俺に向けて矢を放った


「!……」


しかし美桜がその矢を剣で叩き切る


「望月!なんでそんな奴を!?」


「だから望月は操られてんの、前に言わなかったけ?」


「シロト!やっぱりお前は最低の屑だな…!」


早風先輩が俺の方を睨んだ


「全く…どっちが屑なんだか…先に汚い手を使って俺を嵌めたのはそっちでしょ?」


「何を言ってるんだ!瑞葉は泣いていたんだぞ!」


俺の言葉に耳を貸さずに神木先輩はすかさず言い返す、そんな神木先輩の手を河上が握っている


「白兎君…この際、アイシャさん達が嘘をついている以前に貴方の行為は許されることではないわ なんの関係もない民を一方的に虐殺して…」


詩織先輩が俺を悲しい人を見るような目で見てくる


「詩織先輩なら信じてくれると思ったんですけどね…まぁどうでもいいんだけど」


「貴方は…! それとは話が別よ!」


詩織先輩は珍しく大声をあげて反論する


「アイシャさん!こいつは俺が倒します!」


早風先輩がそう言って俺を睨む


アイシャさんに活躍している所でも見せたいのだろう


はぁ……そんなゴミみたいな理由で俺が殺されるなんてたまったもんじゃない


「サトル…分かったシロトはお前に任せた…!」


「待って下さい!俺もシロトと戦わせて下さい!シロトに…奴に望月をさらった罰をくださなければいけない!」


「ヨシミズ…!分かった、作戦を伝える!私は国王様を護る、アマノとカワカミとカミキはモチヅキを抑えてくれ、そしてサトルとヨシミズはあいつを捕らえてくれ!」


「「「「「はい!」」」」」


合図とともに俺へと早風先輩が向かってきた、吉瑞は先輩の後ろで弓を構えて援護でもするつもりだろうか?


「シロト!!」


速いっ!早風先輩は炎を纏わせた剣を俺に向かって振ってきた


さすがは身体能力が大幅に上がっているだけはある


「これが精霊の力か…」


俺は早風先輩の攻撃を後ろに下がり避ける


「おっと、危ない」


すると俺が後ろに下がった瞬間、矢が飛んできた 俺はそれを剣で払って防ぐ


……厄介だな、この二人組


――――――――――――――――――――――――

「目を覚まして!望月さん!」


「美桜ちゃん!帰ってきてよぉ…!」


こっちでは河上と天野が望月と戦っていた


「ぐっ、」


天野は氷刀を使って望月と応戦しているが


望月は剣を氷刀に触れさせずに躱すだけで応戦している


河上の幻覚を見せる能力は意識がある者にしか効かないとの事で河上は後ろで望月に呼びかけていた


本当は望月は操られているだけなので意識はあるのだが…


「くっ、なんて身体能力…刀を躱しながら戦うなんて…!」


「………」


望月は無表情で天野の刀を躱し、自分の剣を振るう


そんな時、


「美桜ちゃん……私が鳴瀬先輩と付き合いたいって言った時応援してくれたよね…私、その時とっても嬉しかったの!その恩返しまだできてないよっ!だからお願い、目を覚まして!」

 

泣きそうになりながらも河上が望月に呼びかけた


いくら呼びかけたところで元々操られていない望月には意味はないのだが


「!……」


驚く事に望月は必死な河上の言葉に反応し、戦いの手を止めたのだ


すかさず天野も言葉をかける


「望月さん!私は貴女の事はあまり知らないわ…でも私の事を知らない貴女は私の傷を治してくれたわ!あの時の恩も私も忘れてはいないわ だからここで返すのよ…!」

   

「!!………うう、」


次に神木が続けた


「僕も望月さんに感謝してる、なんたって僕と瑞葉の仲を取り持ってくれたんだからね、それに君のような優しい人がいつまでもあのような男に従わされているのは許されない事だ!」


「う、あああ!」


「望月さん!?」


「美桜ちゃん!?」


「み、皆?ここは…」 


望月が正気に戻る、操られていない望月が正気に戻ったとはおかしな話だが


「美桜ちゃん!」


河上は望月に抱き着く


「わわっ、瑞葉ちゃんどうしたの?」


「ふぅ、望月さん、白兎君の能力が解けたのね…!悪いけど事情は後から話すわ今はそれどころじゃないの」


「は、はい、わかりました」


そうして望月は正気に戻ったフリをして王国に入ったのだった



「へっ!向こうはやってくれたみたいだな」


「なに!?俺の能力が!?なぜっ!?」


俺は大袈裟にリアクションをする


「望月!よかった…これで心おきなくお前をぶちのめせるぜ!」


「仕方ない…ここは撤退するか」


作戦通り俺はスキルで自分の姿を消す


後は逃げるだけだ


「何!?消えた!?」


「シロトのスキルは魔法壁と人を操る能力だけたったはず!」


二人は驚愕の声を漏らしている


「違うのよ、彼は自己紹介の時に自分の能力を偽っていたのよ」


詩織先輩が、俺の能力の事情を説明すると


「でも甘いわね、白兎君」


そう言って詩織先輩はこの部屋の地面を瞬時に凍らせた


「よくやった!天野!」


氷は透明化している俺の足首まで覆って身動きが取れない


俺は舌打ちをして透明化を解く


「はぁ…MPが無駄になっちゃった」


この氷は生半可な炎じゃ溶けないだろう、それこそやってみなければわからないのだが、もし溶けなかった場合、無駄にMPを消費する事になる


なによりこれは予想外の出来事だ、ここまで詩織先輩が成長しているとは思わなかった


「さて、どうしたものか」


でも俺は余裕の顔を崩さない


「えらく余裕だなシロト」


アイシャさんも余裕の表情で俺に話しかける


実を言うと俺には全く余裕はない、かなりまずい状況だ 


「ははっ、まあ、何かしらの状況で俺が逃げられない事は想定済みですからね」


当然これは嘘でこの状況は想定外だ、はっきり言ってさっきまで透明化すれば余裕で逃げきれると思っていたからな


「なんだと!?どういうことだ?」


俺はニヤリと不敵な笑みをこぼす


「俺がなんの用意もなしにおめおめと王国に攻め入るとでも思ったのか?」


「まさか…白兎てめぇ!」


「アッハハハハハハ!!そうだよ!この王国の国民は俺の命令一つで全員自殺するぞ?」


かなりの嘘をついた、勿論そんな事は不可能だ


「白兎君…君って奴は…!!」


神木先輩は今にも俺を殺しそうな目つきで睨んでくる


「神木先輩…いいんですか?なんの罪もない人達が死んでいっても」


「くそっ!このゲスがっ!」


「詩織先輩…あなたの行動しだいで国民は無事に生きる事ができるんですよ?あなたが国民を助けたいという心があるなら俺を解放してください」


「でも解放したら…貴方は…!」


「だ、駄目だ!そいつを解放してはならぬ!」


急に王様が大声をあげる


「しかし、王よ国民の命が…」


そんな王様にアイシャさんが反論している


「うむぅ…しかし、チャンスが…」


まずい傾向だ、長考は人を冷静にさせるからな


「早くしろ、俺の気分次第で今すぐ殺してもいいんだぞ?」


俺はタイムリミットをかける


「この外道が!」


俺は最後の追い討ちをかける


「詩織先輩なんども言いますがあなた次第ですよ」


「くっ、貴方がそんな人だったなんて…!貴方は唯一私が心を許せた相手なのに…残念だわ」


そう言って詩織先輩は氷を解除する


俺はすかさず透明化して今度は空中に浮いた 


そして俺は逃亡間際にこんな事を言い放つ


「最後に言っておくけど、俺に全国民を殺す力なんてないからな」


「なに!?」


「くそ!騙したのか!」


アイシャさんは怒りを表にしている


「どこまでもゲスね、白兎君…」


「アッハハハ!騙される方が悪いってよく言うだろ?それじゃあな」


俺は嘲笑ういそのまま謁見の間から出て行った


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ふぅ、間一髪だったな」


俺は緊張が解け声を漏らす  


王国から少し離れた場所で俺は能力を解き休んでいた


「ま、作戦は成功したな」


初め、この作戦をザラさんの家で話した時、美桜には大反対されたが、なんとか押しきって作戦を実行したわけだ


しかし美桜を王国に潜入させる事で、王国を攻めやすくなったわけだ、別に復讐で王国を攻め落とすとかじゃない、王国はムカついたから攻める、それだけだの理由だ


「さてさて、俺もそろそろ行きますか」


俺はそう言って立ち上がると目的地に向かって歩き始める


俺が今から向かう場所、それはオズワルド魔法学園だった



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