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どこにでもあるそんなお話  作者: まっひー
27/33

1 旅立ちはちょっぴり過激

俺は美桜を人質に取ったまま自分の後ろにあった食堂の窓へとゆっくり下がっていく 


確か、この窓から出ると街の裏門の方面に出るんだっけ?


アイシャさん達はこちらを見る事しか出来ない


「よしよし手は出すなよー」


ついに窓までたどりつく


そして俺は美桜を抱える 美桜は少し驚いた顔をしたがすぐに手を俺の首に絡め体を支える


最後に食堂へ 嘘つきパラドクス の能力で閃光を放った


辺りは光で真っ白になる 当然、予備動作もなしに来るものだから防ぎ用がない


いきなり視界に大量の光が入り、皆目を押さえている


()()な」


閉じていた目を開いた俺は美桜を抱えたまま窓から飛び降りる

―――――――――――――――――

俺が飛び降りたのは城の二階からだった


この城が二階から飛び降りても大丈夫な事は既に確認済みだ



着地した俺は美桜を離す


「とりあえず裏の街道を通って裏門から出るとするか 演技はそろそろ解いていいぞ」


「やっと記憶が戻ったんだね!」


美桜が俺に抱き着いてきた


「もうすぐであいつらの視界も回復し始める 何より厄介なのは吉瑞の千里眼だ 吉瑞に一度見つかればどこにいても目線で追跡される事になる」


「それじゃあ裏門まで走る?」


「まぁそうなるかな」


――――――――――――――――――――――


「うぐぁぁぁっ!!ゴフッ」


平和な街を歩いていた一人の男性が突然斬られてしまいました 


犯人は一体……!?


「ん?何でシロ君、一般人を斬りまくってるの?」


「んー、何だろ?何となく?」


犯人は俺でした


俺と美桜は今、王国の裏門へと走っている


「私もやろうか?」


「いや、それは念のため止めておいて」


「そう?シロ君が言うなら止めとくけど…」


他愛もない会話をしながらどんどん人を斬っていく


「お、にいちゃん 果物買って行くか?」


「すみません今日はいいです」


そう言って俺は顔面に剣を突き刺す


6人目。


「やめてぇぇ!!息子だけはやめ」


はい、7人目。


「うええぇぇん!!う」


「うるさい」


はい、8人目。


「シロ君、門が見えてきたよ!」


「あれが裏門か」


30人殺した辺りで美桜が口を開いた


俺達が走ってきた道はそこから下り坂になっていて坂を下りきった先に大きな門が見える


門の付近にまで騒ぎが伝わっていないみたいでまだその辺りは活気溢れる町並みが広がっていた


「はぁ…結構距離あるな」


「もう少しだから頑張ろう?」


「そうだな早く出ないとドブ水に見つかるし…」


「それ、私が考えたやつ…」


「そうだっけ?」


「別にいいよ…もうっ、」


美桜は怒って頬を膨らませている


そんなにこの持ちネタが気に入ってたのか…


「機嫌直せよ ほら果物やるから」


俺はさっき殺したオッチャンの店で一番高かった果物を渡す


「その果物、血まみれじゃん…」


「え?あ、ほんとだ」


確かに、俺の手だけじゃなく顔にも返り血を浴びている


通りで鉄臭かった訳だ


「そんなことより早く街から出ようよ、私まで返り血浴びちゃってるんだから」


「それもそうだな」


人を殺す事について何も感じない血まみれの二人組は坂を下っていく


そして、この事件はいずれ歴史に残る大虐殺事件となるのであった


勿論、そんな事この二人は知るよしもない

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


ゴトゴトゴト


「平和だなぁ」


「そうだね、シロ君」


俺達は数時間前に裏門を出て、ジュリアート王国から隣のペルンという都市へと向かう商人の馬車に乗せて貰っていた


「本当にすみません、こんな血生臭い俺達なんかを乗せてくれて…」


「気にすんなよ、あんたら冒険者は商人の商売ルートから魔物を追い払ってくれるんだからお互い様よ!」


「フフっ、そう言ってくれると私達も嬉しいです」


「へへへ、嬢ちゃんみたいなべっぴんさんなら冒険者じゃなくても大歓迎よ!」


「もうっ、お世辞がお得意なんですね」


「ガッハハハ!」


俺達はこの人が良さそうな商人のオッサンの馬車に冒険者だと嘘をついて乗せて貰っていたのだった


「それにしても…そんなに返り血浴びた冒険者は初めて見るよ 実はあんたら…相当な腕前なんじゃねぇか?」


「ははは、そんな事ありませんって」


「本当にか?というか今時はあんたらみたいな若いのでも冒険者になれるんだなあ ランクは何なんだ?」


え?ランク? AとかBとかか?どれが高くて低いのかもさっぱり分からん…


「はっははは………で、美桜はどうなんだ?」


「ふぇ!?私!?」


なんて返答したらいいのか分からなかった俺は美桜に全て放り投げる


「えーと、秘密ですっ☆」ニコッ


困ったら笑顔、一体誰に教わったんだか…


「えー?別に教えてくれてもいいじゃないか?減るもんじゃあるまいし」


このオッサンしつこいなぁ あんまりこっちの事は詮索しないで欲しいのだが


俺は美桜に目配せする


美桜は頷き、口を開く


「ちなみに、後どれくらいでペルンには着くんですか?教えてくれたらこっちのランクも教えますよ」 


「んん?ペルンはもう目と鼻の先だぞ? ほらさっさと教えてくれよ、そんなに焦らさせたら気になって仕方がねぇ」


「そうですか…じゃあもう必要ないですねっ と、」


言い終わると同時に美桜は馬車を運転しているオッサンの背中を逆手に持った剣で思い切り突き刺す


「な、に…すんだ…よ! グハッ」


「あれ?まだ生きてる」


「ちょっと左過ぎなんじゃないか?心臓って若干、真ん中よりだぞ?」


心臓の位置ならさっき王国で確かめたしな 見た感じ剣が刺さった位置は心臓からズレてる


まあ、すぐに死ぬだろうけど


「なん…で」


「おお…このオッサン結構、金持ってるぞ」


俺は絶命するオッサンを見もせずに懐に手を突っ込み、持っていた袋の中を見る


「やってる事が盗賊のそれだよ…」


そんな感じで俺達は金を盗り、馬車を道に放置したまま ペルンまで歩いていった


ペルンまでの道中、こんな話をした


「ていうかさ冒険者って結構、優遇されるんだな」


「この世界にとって天敵の魔物を排除する仕事だからかな?」


「でさ、移動する時に冒険者だったら便利だと俺は考えたんだけど… ペルンで冒険者になれると思う?」


「ええ…それを私に聞く?」


「そうか、知ってる訳ないか」


役立たずめ…


「今、役立たずって思ったでしょ?」


「なんだ?美桜は固有スキルを三つも持っていたのか」


「心を読むスキルなんて持ってないよっ! 今のシロ君、アイシャさん並に分かり易かったよ!?」

 

え?そんなに分かり易かった?


「まじか、また表情を作る練習し直さなきゃないけないな」


「フフっ、それじゃあ今度は私が教えてあげるっ」


「悔しい…なんで俺、記憶なくなってたんだよ…お陰で2年間、人生無駄にしちゃったんだけど…」


「シロ君が横断歩道渡る時に左右を確認しなかったからでしょ?」


「いや、そうなんだけど…」


本当に正論過ぎて言い返せない


ずっと孤児院にいた俺は横断歩道というものはよく知っていたが 渡った事は殆どなかったのだ 


孤児院に入る前の子供の時も殆ど家から出なかったから無理もない


謎の組織の陰謀とかでもなんでもなく俺の不注意で記憶をなくしただけ…


あれ?目から汗が出てきたぞ


泣いてなんかいないんだからねっ!


そうこうしてる内にペルンの目の前までやってきた


「ねえねえ、あそこにある門から入るのかな?」


「それ俺に聞くか?」


俺はさっき言われた事をそのまま返す


そういいながらも入れそうな所はここしかないのでここから入るしかないのだろう


そうして俺達はペルンに入る行列に加わったのだった

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


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