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どこにでもあるそんなお話  作者: まっひー
26/33

26 プロローグは終わる

「はああああ!」


「はああ!」


二つの剣が交わり、火花が散る


「詩織先輩、また腕を上げましたね!」


そう言って詩織先輩の腕を斬り付ける


「そうっ…ね、でも何でまだ貴方を越せないのかしら!」


俺の攻撃を躱し、そのまましゃがみ足払いをしてくる


「っと、俺も毎日成長してるって事ですよ!」


先輩の足払いを跳んで躱す すぐさま魔法壁を限界まで展開する


「っ!」  


10mも瞬時に展開したので当然10m内にいた先輩は弾かれる


だが先輩も弾かれると同時に俺の真上にかなり大きい氷塊を落とす


「え?氷の生成速度速くないっ!?」


避け切れずに魔法壁に脆に衝突、魔法壁に一発でヒビが入る


「私も成長してるって事!」


詩織先輩が拳程の大きさの氷塊を魔法壁にぶつける ガラスの割れるような音と共に魔法壁は割れる


「やばっ…い!」


この拳氷塊の速さにもかなり慣れてきた今の俺は余裕を持って氷塊を避けれる程、動体視力が上がっている 毎日、バドミントンのシャトル並に速い氷塊を躱していれば嫌でも慣れて来る


詩織先輩との実戦訓練は今日が20日目だ、お互いのルールとして俺は 嘘つきパラドクス を使わない、詩織先輩は氷山を落とさないという決まりを作る事でそれをしない限り、即死じゃないならどこを狙ってもいいというデスマッチ化していた


「やっぱり、この氷塊はもう見切れるみたいね」


私は考える、となるとさらに遅い氷槍なんて避けられるに決まっている、と ならば


「それじゃあ、こんなのはどう?」


私が毎日の白兎君との戦いで磨き上げた氷生成の自由度、それを駆使してさらに複雑な氷を私は作りだす事に成功していた


「ん?なんだ…?」


詩織先輩が持っていた鉄製の剣を放り投げそのまま手を前に出す、すると冷気がそこに漂っていき突然、氷で出来た刀が生成された さらにもう片方の手に短刀を氷で生成し短刀の方を逆手に持った


「氷の刀…ていうか冷たくないんですか?」


「あら、私の能力で作った氷よ私が冷たく感じる訳ないじゃない」


「そうです…かっ!」


こちら側から先に仕掛ける


先輩は短刀で俺の初撃を受け止め右に持っていた刀で俺を貫こうとしてくる 急いで魔法壁を展開する


先輩はまた吹き飛ばされる


「これが汚い戦法ってやつですよ」


「本当ね、でもこっちも汚い手を使わせて貰ったわ」


ん?貰った?何で過去形…あ。


俺はある事に気付く そう、先輩の短刀に鉄製の剣がくっついている事に…


勿論、俺の手に剣はなかった


「え、嘘でしょ?」


「本当よ!」


詩織先輩はダッシュで間合いを詰めてくる


焦るな俺、俺にはまだ魔法壁が…


「くらいなさいっ!」


先輩が氷刀で俺の魔法壁を斬る、当然その程度では傷も付かないのだが


…凍り付いてはいた その流れのまま先輩は逆手に持った短刀を凍り付いている部分に突き刺す すると魔法壁は一瞬で砕け散った


「そんな方法が!?」


「これで終わりよ!」


マズイ、避けきれ……


ザシュッ


俺は身体を斜めに思い切り斬られた 血が出る事はなく斬られた場所から凍り付いている


「くっ、かはっ!」


「今日は降参しなさい、凍傷で傷口が壊死して治せなくなるわよ」


「そうします…あー!悔しい!」


詩織先輩め…今日という日の為に切り札をいくつも隠し持ってやがった


「初めて私の圧勝ね…フフフっ、歩ける?」


「何とか歩けます」


「それじゃあ帰りましょう」


俺達は転送魔法陣を通って共同訓練場へと戻る


俺の傷を見た皆の反応は様々だった 相変わらず「ざまぁみろ」とか言うやつ「え?傷口にクリスタルがくっついてる…」とか「うわぁ…」とかこの傷にドン引きする者、様々だった


「ア、アイシャさん!早く傷口を手当てしないと!」


望月が口を開く


「え?ああ、治すのか?まあ、治してもいいなら治してやってくれ相変わらずモチヅキは優しいな」


多分、アイシャさんは望月が傷を治さないと思ったんだろう


こんなクズに治す価値はないと


周囲からは「流石は望月!」「美桜ちゃんこんなやつの傷治す必要ないよ…」「望月は天使…」「好きだ。」「美桜ちゃんに治して欲しいからわざと怪我したんじゃないの」

などの声があがっている、一つ、二つ、よくわからないのが混ざっているがどちらにせよ俺への批判はまだ残っているようだった 


そろそろなくなってもいい筈なんだが…


今だにこの噂は結構根強く残っている 


早風先輩達や雄二らは気にしてないが食堂に行くと少し目線を感じたり、ボソッと悪口を言われたりする


この前なんて村田に避けられた


今では詩織先輩を脅迫して勝負に勝ったとか、望月を無理矢理襲ったとか、神木先輩から河上を寝取ろうとしているなんて根も葉も無い噂が飛び交っている


イジメのような問題は起きていないがいつか起こりそうで怖い


こんな噂、早くなくなれば良いんだけどな…


――――――――――――――――――――――――――――――――――――

深夜、俺は窓から部屋を抜け出す


今日の夕食の時に望月に今日の深夜会おうと言われたのだ


望月とは吉瑞の頭を破裂した件 から距離を縮めていき、夜になるとちょくちょく会うようになっていた


「今日はどういった理由で俺を読んだんだ?」


「あのね、ここ最近白兎君の悪い噂が絶えないでしょ?河上瑞葉を寝取るとか、私を無理矢理襲った…とか」


望月は顔を赤くしている


自分で言ってて恥ずかしいなら言うなよ…


「だから私、少し調べてみたんだ」


「わざわざか?そこまでしなくてもいいだろ…」


「それでその件で分かった事があるんだけど私の話…信じてくれる?」


「内容によるな」


「そこはお前を信じる って言って欲しかったのに…」


「まぁいいや、その件についてなんだけど…どうやらその噂、相模が広めてるらしいよ」


相模が!?信じられない…


でもこの頃、確かに相模の様子がおかしかったしな…


「分かった、信じるかどうかは置いといて相模には一応気をつけておく」


「相模を問いただそうか?」


「いや、まだ決まった訳じゃないしいいよ それにこれは望月のする事じゃない なんかそれは違う気がする」


「なんか悪いな俺の為にそこまでしてくれて」


「全然いいよ」


「それじゃあ帰るか」


「もう帰るの?」


「だって眠いし…」


「そうだよね…ごめん」


なんかこの頃の望月は謝ってばかりだな 本当に俺が望月を脅してるみたいだ


――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次の朝、今日の訓練は無しとの事だった珍しいなと思っているとどうやら午前中の外出も今日は禁止らしい


そして食堂に招集がかかった


「今日は皆に大事な話がある」


アイシャさんはいつになく真剣な顔をしていた


さらにアイシャさんの後ろには騎士が数名控えていた


「まずはこの世界に君達を呼ぶ魔法には代償があった事をまず知って欲しい」


辺りがザワザワし始める


「君達を召喚した際、この世界に空けた穴があるのだが…その穴を防がないとそこから世界を守る壁が崩壊してこの世界は次元の渦に飲まれてしまうのだ」


アイシャさんは続ける


「その穴を塞ぐ方法は主に二つある一つは魂を100万人分集める事、つまり100万人の命をこの世界に捧げるという事だ」


は?状況に付いていけない どういう事だ?


勇者を召喚した代償だと?


「…二つ目は召喚された勇者の中から、マークを付けた一人に罰を与えた後、処刑し、魂をこの世界に捧げなければならないのだ」


「つまり、一人の勇者か100万人の一般人、どちらかの命をこの世界に捧げねばならんのだ」


誰かが言い出す


「ふざけんな!俺達の中から一人だと!?」


怒りの声は連鎖していく


「そうだそうだ!」


「俺は嫌だぞ!」


「私も嫌よ!」


「じゃあ100万人の命を捧げれば…」


「お前何言ってんだよ!?」


醜い争いが食堂の至る所で起こる


「静かにしてくれ!」


皆は一斉に黙り、アイシャさんの方を向く


「済まないが生贄にする勇者は決まってるんだ…」


また辺りがザワザワする 


「生贄にするのは…」


「シロト……貴様だ」


は?待ってくれ何で?何で俺なんだ?


「なんで俺なんだ!?」


「理由はちゃんとあるぞ 一つはこの中で一番固有スキルが弱いという事、二つはお前に関しての噂だこれについては元は取れている そうだろ?サガミ」


「はい」


相模!?なんでお前が!?


「この男は神木先輩の彼女である河上さんを脅し、弱みに付け込んで河上さんと神木先輩を別れようとさせました」


「本当か?カワカミ」


「はい…尾張先輩に別れないと殴ると脅されました…」


そういって河上は顔を手で隠し神木先輩の影に隠れる


____その口元は笑っていた


「それは本当か!?白兎君! 君には失望したよ… いい後輩だと思っていたのに、そんな最低な事をするなんて…!」


「違う!俺はやってない!!」


「黙れ、既に被害者の証言が出てるんだ 言い逃れは出来ないぞ?」


「ふざけんな!俺は…」


「白兎、例えお前が俺の後輩だろうと俺の親友に手ぇ出したら許さねぇぞ? ああ!?」


早風先輩はキレている


……いや、これも演技なのか


大方、アイシャさんに協力でもお願いされたのだろう


「待ってくれ!直樹!お前なら信じてくれるよな!?」


でも俺にも親友はいるんだ、どんなに俺が辛い時も記憶がなくなって一人の時もお前が、お前が俺を…


「お前がそんなやつだっとは思わなかったよ白兎…ずっと親友だと思ってたのに…」


「は?嘘…だろ?」


直樹、嘘だろ?


「待って下さい!白兎君はそんな事しません!」


「モチヅキ…君は優し過ぎる…彼は罪を犯したんだ 生贄に相応しい人間は彼なんだ」


「望月さんの言う通りです、私も彼と接した時間は短かった…でも、彼はそんな事する人ではないと断言できるわ!」


「天野先輩…こいつに脅されてたんですよね?もう大丈夫ですよ俺が天野先輩を護りますから」


相模がそう言った


「相模ぃぃ!」



周りの者達も自分が死にたくないから必死で俺を生贄にしようとしてくる


「最低だな…」


「死んじゃえ!」


「お前が生贄になれよ!」


「しね!しね!」


結局皆、自分の為なら他はどうなってもいいんだ


自分の為なら他の命なんてどうでもいい 


______バリンッ!


俺の中で何かが壊れた


いや、違うな ()()()()()()()|何

《・》()()()()()()()()()()()


俺は元から壊れていたんだ


「アッハハハハハハハ!!!」


笑いが止まらない、そうだ、そうだった、この世界はそういう世界なんだった、


思い出した、全部、思い出した


「アッハハハハハハハハハハハハハッ!!」


「ついに壊れたか」


アイシャさんがボソッと呟く


笑うのを止めた俺は口を開く


「ふー、おかげさまで全部思い出したよ」


「!?」


()()が俺の言葉に反応した


今ので美桜には伝わったかな


「何をしようとも無駄だ、お前の首には既に生贄になる為の紋様が浮かび上がっている それが付いた者が生贄の勇者の証だ それと同時にその紋様は世界を敵に回す意味も持っている 世界の穴を塞ぐ為に世界中がお前を殺しにかかるぞ」


「へーえ、それいいね、俺以外の勇者殺しても既に意味ないって事でしょ?つまり俺を殺せなかったらこの世界は終わるわけだ」


俺は親指で首を切る仕草をする


「確かにその紋様は一度の召喚に一度しか使えないが、今から死ぬお前には意味が分かった所で関係ないだろう?」


アイシャさんの話を聞きながら俺は固有スキルを変化させる


様々な武器を生成するという固有スキルに


消費MP30のいたって普通の固有スキルだ


準備は整った


「でも俺、死にたくなんで」


そういって俺は素早く動き、俺から離れていた生徒の中で一番近かった女子生徒を捕まえ、能力で生成したアサルトナイフを女子生徒の首元に当てる


「キャアアアア!」


近くに居た生徒はその場から即座に離れる

おいおい、この女子生徒見殺しかよ


「おっ、誰かと思えば村田じゃん」


俺は人質に取った女子生徒が村田ということに気付く


「た、助けて…お願いします…助けて…下さい…」


その声はとても震えている


「なっ!?」


アイシャさんは人質を取られ驚いている


「俺に手を出したらこいつを殺す。村田ってあれだろ?俺以外の勇者の中で唯一の魔法壁使いだろ?しかも俺と違って性能が良い魔法壁だ こいつがいなくなったら魔王との戦い、結構キツいんじゃない?」


「姑息な真似をっ!」


「汚い?狡い?姑息? あほか、こっちは自分の命掛かってるんだよ そら人質くらい取るよ」


ん?なんか生徒側から雄二が弓で俺を狙ってるな


チッ、空気読めよなぁ… しかしこれはマズイな


仕方ない


「美桜こっちに来て俺を守れ」


俺がそういうと生徒達が集まっている所から美桜がこちら側に来た


「どういう事だ!?モチヅキ!?」


「アイシャさん、これが俺の二つ目の固有スキルですよ 簡単に言えば人を操る能力です」


と言いつつ美桜に小声で話を合わせろと言う


すると美桜は無表情になる


そこまで演技するなんて意識高いなぁ…


「これでも食らえっ!白兎ぉ!」


雄二が空気を読まずに俺目掛けて矢を放つ


矢は俺の脳天目掛けて飛んでくる


しかし矢が俺に到達する事はなく美桜の剣によって弾かれた


ちなみにこの剣はさっき俺が美桜に渡した剣だ


「あーあ、やっちゃったぁ…俺に手を出すなって言ったのに…」


俺はそういって躊躇いなく村田の首を斬る


ブチっゴリゴリ ザシュッ と心地好い感覚が俺の手に伝わった


周りから女子の悲鳴が聞こえる


「キャアアアア!」


「あいつ…本当に村田を殺しやがった」


「ウッ、オエぇ」


うんうん、これで俺に手を出す生徒は減ったかな


「次は皆のアイドル望月ちゃんでーす」


そう言い、俺は美桜を抱き寄せナイフを首元に当てる


「いっとくけど普通に殺すよ?俺は」


「くそっ!」


「お前らも大好きな望月を殺されたくないだろう?アイシャさんも貴重な戦力を失いたくないんだろう?」 


「それじゃあ俺の事逃がしてくれないかな?」


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