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宰相の気苦労ライフ  作者: 寝太郎
1/8

起きない

コウモリが一羽、森の泉に向かった。

そこには、紫の台座が泉の中央で浮いていた。そして、その台座に髪の長い何かがスヤスヤと寝息をたてていた。

コウモリはその何かにタックルする。

「起きろ!魔王様の一大事に寝るな!」

コウモリは、人間と同じ言葉で何かを一生懸命殴っている。

「Zzz 」

それでも、その何かは目覚める気配すら無い。

コウモリは、近くから小石を持ってきて、何かにぶつけた。

「本当に起きない。化け物か?!って、化け物か。」

コウモリは、傷だらけであった。

羽もぼろぼろでここまで飛べた事が不思議なほどである。

そんな中、小石を何度もこの何かにぶつけて、更にヘトヘトでふらふら状態。

そんなコウモリは、襲いくる睡魔に負けてしまった。




コウモリは飛び起きた。

気づけば、深緑の夏から小雪舞い降る冬に突入していたからだ。

「Zzz」

ベッドにしていた何かから寝息が聞こえる。

「まだこいつ寝ていたのか?!」

そう怒鳴りながら、コウモリは一旦、泉から離れた。

コウモリは、自分の状態を確認した。

「『鑑定』」


名前:エルドルド

種族:吸血鬼(特殊個体)

HP:8899/9899

MP:12589/23000

状態:正常


(泉の力か‼かなり回復している。これなら!)

コウモリは、何かに向かって、呪文を唱え始めた。

「ファイアーボール!」

コウモリの前方に火の玉が現れて、あの何かに向かって放たれた。


バーン

と水しぶきがおき、何かをしたたかに濡らす。

「Zzz」

でも、起きる気配すら無い。

「起きろ!バカ者起きぬか!」

コウモリは、初めは、低級魔法を繰り出し、ぶつけたが、ちっとも起きない何かにイラつき、魔法をレベルアップしていく。

「『インフェルノ』」


ボカーーーン

ぶつかっては、周りの環境が変わるほど、破壊され、そして、驚くべき速さで森と泉がもとに戻る。


そして、当の何か(本人)には、何の変化なし。あえて言うなれば、寝返りはうった。


「くぅううう!このバカ者!寝坊助!」

そう言いながら、コウモリは魔力切れを起こすまで、魔法をぶつけ続けた。


「こ、この、バカ者、め。Zzz」

コウモリはそのまま地面に落ちていった。



次に目を覚ますと穴ぐらの中。たくさんの枯れ草のベッドの上にいた。

辺りを見回すと一匹の穴ぐら鷲。

この世界の鷲にしては、臆病で小さい鷲がコウモリの世話をしていた。

「す、すまない。助かった。」

コウモリがそう言うと穴ぐら鷲は、壁際に置いてある紫の石に向かって、

「くぅがぅっつーくっくが」

と鳴いた。すると石から、

「気にするな、紫の台座の主に会いに来たんだろう?大変だな。まぁ、無理すんな。」

と声が発せられた。同時に鷲はコウモリに角ウサギの死体を渡した。

もう一度、グガァッと鳴くと石から

「まぁ、喰いなさい。」

と声が発せられた。

「あ、ありがとう。いたみいる。」

コウモリは、渡されたウサギの血液をすすり上げた。

コウモリの体力が少し回復した。

「これは、死にたて。ありがとう、本当に感謝する。」


(鷲)「いや、気にするなって、そうそう、泉の中央よりここくらい離れた方が回復するの、はえーから、ここらに滞在した方が良いぞ。」


「え?」


(鷲)「実は、お前だけじゃないんだ。

ここに来るやつ。まぁ、あんたほど熱心に起こそうとしているのは、初めてだけど。」


「そうなんですか?」


(鷲)「ああ、もう、今日は来ないと思うけどな。」


「どんな方が来られているんですか?」


(鷲)「色々だな。村人や冒険者、貴族も来たな。大抵、3日で諦めて帰るが。」


「そ、そうか。」


鷲はもう一匹角ウサギを持ってきた。

(鷲)「もっと喰え。腹減っただろ?」


「お、これは、すまない。有り難くいただく。」


(鷲)「いい、いいー。俺みたいなのに丁寧にしなくていい。」


コウモリはまた、一気に吸血する。

そして、一言


「『鑑定』」

と言った。


名前:エルドルド

種族:吸血鬼(特殊個体)

HP:10100/10100

MP:25000/25000

状態:満腹(微量HP自然回復)


「ああ、全快になっている。それに少しレベルアップした様だ。」


(鷲)「そりゃ、あんだけ鍛練したら、レベルも上がりましょうよ。ハハハ。」

鷲は面白そうに笑う。


(た、鍛練!?くぅ、確かに、そうだが、アイツめ。)


「アイツはいつから寝ているんだ?」


(鷲)「俺が産まれたときには、既に寝ていたし。

一度来た、貴族っぽいのは、150年の眠りから覚めろって呪文みたいなの言ってたが、それすらも微妙な感じだな。」


(150年?魔王様とこいつが一緒に酒を飲んで、どんちゃん騒ぎしたのが、180年前だが、まさかな。)


「そうか。ありがとう、鷲さん。」


(鷲)「いいってことよ。コウモリさん。」



コウモリは、一旦、外に出た。

ちょっと奥に泉が見える。


(一度、戻るか。)

コウモリは、ボムッと音をたてて、正装姿の青白い青年に変化した。


(鷲)「あんた、貴族かい。スゲーなーコウモリになれる人間っているんだな。」


「いや、人間じゃないんだ。吸血鬼だ。」


鷲は首をかしげた。

(鷲)「ふーん。」


(鷲は別に人間でも吸血鬼でも、どうでも良いようだな。)


「では、行ってくる。鷲さんには、後で礼をしたい。」


(鷲)「おう、行ってらっしゃい!礼なんか気にすんな!いらんよ。」


「いえ、そのうちに!是非。」


(鷲)「じゃ、お前さんの気がすむようにしたらいいさ。」

紫石をくわえたまま、鷲はそう言うと穴ぐらに戻っていった。


(ずっと思っていたが、あの石なんだろう?誰が作ったんだろう?)


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