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第八話 村人の救助

本日二話目。



 レイク達は今、岩場の側で百以上の群れで屯っているオーク達がいる場所から、離れた所である物を持って待機していた。空は月が上がっており、岩場から少し離れた森の中では、真っ暗でオーク達はこっちに気付く様子を見せない。


「よし、いい場所だ」

「え、ええと、これでオークを……?」

「そうだ、ノエル。策は聞いたな?」

「は、はい」


 レイクが呼んだノエルと言う者は、村で助けた少女のことだ。少女も少しは弓を使えるようで、一緒に連れてきた。ネルにはある役目を与えており、別行動になっている。


「あの子、一人で大丈夫なの……?」

「大丈夫だから、頼んだ。ネルなら、オークには遅れを取らない。それよりも、早めに準備を終わらせるぞ」


 ここは森の中だが、目の前には入り口が一つしかない岩場の囲みがある。それを使って、オークの数を減らしていくのだ。その岩場の囲みへオークを引き寄せる役は、別行動をしているネルがやっている。幼い少女のネルなら、オークは警戒をせずに追い詰めようとするのだろう。今は夜なので、月夜魔法を使える時間帯であり、敏捷も200はあるので、オークには遅れを取らないだろう。


「来た!」


 先にネルの姿が見え、岩場の囲みへ入っていく。それに続いて、十数体のオークも一緒に入っていく。


「よし、仰げ!」

「う、うん」


 既に魔獣魔法で竜人モードになっており、雷で火を興して持ってきた花に火を付けた。ノエルは木の板で煙が岩場の囲みへ行くように力一杯に仰いでいく。

 レイクが村で見つけたのは、燃やせば痺れの効果を持つ煙が出る花だった。前に狩りで便利な物はないか、村人に聞いた知識であり、ここで役に立つとは思わなかったが、数の利で負けているこちら側は何でも使わなければ、村人を助けられる確率を高められない。


「充分か」


 数分間、煙を送り続けて――――オークの気配が弱まった所に、レイクが岩場の囲いへ入っていく。もちろん、煙が晴れてからだ。




「よしよし、よく効いているな。ネル、こっちに来てもいいぞ!」

「うん!」


 ネルは岩場の上にいた。オークが入ってくる前に、岩場を登って上へ向かっていた。煙を吸い込まないように、風向きに気を付けていたので、ネルまで巻き込まれることはなかった。レイクの所まで降りていき、レイクに擦り寄っていく。これは褒めてのサインだろう。


「いいぞ。作戦通りに動いてくれたな」

「うん!」


 足元には痺れて動けなくなっているオーク達がいた。それをレイクはトドメを刺していく。抵抗が無いので、あっさりと数分で終わった。


「また呼び寄せるのだぞ」

「任せて!」


 作戦は成功していることに、機嫌よくノエルがいる所へ戻っていく。まだ使ってない痺れ花は沢山あるので、この調子でオークを減らすのは問題ないだろう。ジェネラルオークにこの花が効くかわからないので、呼び寄せないようにと言ってある。


「レイク君は、あの子の代わりにやらないの?」

「やれるならやりたいが、俺が向かったらジェネラルオークまで来てしまう可能性があるからな」

「その竜人モード? を解けば……」

「無理だ。解いたら、凡人の子供になってしまう。敏捷は素の俺よりもネルの方が高いからな」


 ネルがか弱い少女に見えるから、ジェネラルオークへ伝達することもなく、自分で捕まえようとするから、この作戦が成り立つ。竜人モードのレイクは、迫力があり過ぎて、オークがこっちを見るとジェネラルオークを呼び寄せそうで、出られない。竜人モードを解くと、凡人の子供と変わらない身体能力なので、追いつかれる心配が出てくる。


「よし、次が来るぞ」

「は、はい」


 この調子で、オークの数を減らしていく。このまま、ジェネラルオークを残してオークを全滅させることが出来ると思えば――――


「チ、気付いたか」

「え、何が?」

「ジェネラルオークが動いた」


 レイクの『気配察知』には、ジェネラルオークが動き出す気配を読み取っていた。一体だけのようだが、周りには十体ぐらいのオークが固まっていた。統率が出来ているので、見え見えの罠に掛かる事はないだろう。


「ここからは正面から片付ける。お前は何処かで援護をしていればいい」

「わ、わかった」


 数を減らしつつ、レイクのレベルを上げていたので、減ったオークとジェネラルオークを片付けるには充分過ぎた。


「ネル! こっちだ!!」

「はーい!!」


 岩場の囲いに入ろうとしていた所で、向きを変えてレイクがいる場所へ向かうネル。同時に、十体のオークとジェネラルオークがこっちに気付いて、咆えてくる。


「『雷纏強化』を試させてもらおう!」

「ブヒ――!!」


 レイクは『雷纏強化』で雷を纏わせて、身体強化と同様の効果と爪の切れ味を上げた。正面から向かい、先に周りで護衛をするオークを切り裂いていく。鉄の棒で防御をするオークもいたが、爪の切れ味には無為のことだった。鋼鉄の盾もあっさりと斬った爪に、切れ味を上げた強化もされているので、鉄の棒ごと身体を真っ二つにしていた。


「ネルもやる―!」


 ネルもレイクに続いて、オークを殴って首の骨を折っていく。ネルもオーク狩りでレベルを上げていたので、腕力は300を超えていた。柔らかい身体も衝撃を受け切れず、骨を粉々に砕かれるまで殴り続けられていた。


「やるじゃないか。俺も負けていられないなっ!」


 鋭い爪でどんどんとオークを減らしていると、ジェネラルオークが前に出て、太い棍棒を振り上げてレイクを潰そうとしていた。それをまともに受けずに、横から殴りつけて逸らしていた。逸らした棍棒は大きな音を立てて、小さなクレーターを作り出していた。


「凄いパワーだが――――当たらなければ意味は無い!」

「ブゴッ!?」


 村人の剣や斧を欠けさせていた鎧も竜の爪には無力だった。爪の突きがジェネラルオークの魔石がある場所を貫き、鎧も意味をなしていなかった。魔石を潰されたジェネラルオークは何も出来ず、倒れた。


「終わった―!」

「よし、後は数体のジェネラルオークだけだな」


 気配を探ってみたが、オークはここに来たのが最後の部隊で、人間を閉じ込めている洞窟の近くには、ジェネラルオークが数体だけがいる状況になっていた。これなら、このまま殲滅しに行っても勝てると確信していた。





 が、レイクの『気配察知』に異常なことが起きていた。


「何、人間が減っていく? ッ! まさか、食べているか殺しているのか!? ノエル! 聞こえるなら、すぐ向かうぞ!! ネルも行くぞ!!」

「うん!!」


 一人ずつ数が減っていくのを感じ取り、急がないと助ける村人がいなくなる。離れた場所にいるノエルに大きな声で呼びかけてから、すぐジェネラルオークがいる場所に向かった。









「くっ、やはり、食っていたか!!」


 着いた時は、人間の数が半分を切った所だった。男女関係無く、ジェネラルオークに食われていた。何故、急に食い始めたのかは――――

 自分が進化する為だった。さっきまで、ジェネラルオークは五体程残っていたが、今はもう三体はキングオークへ進化し終わっていたのだ。


「ネル! 二体のジェネラルオークを殺せ!」

「うん!!」


 ネルにジェネラルオークを任せ、自分は三体のキングオークを相手にする。キングオークは単体でCランクになり、長く生きたキングオークはBランクに届く実力を持つ。キングオークになったばかりなら、勝ち目はある。後から来た、ノエルはキングオーク達の足元に転がる死体に口を押さえたが、失神をしなかったのは褒めてやりたい。


「ノエル! まだ生きている村人を外に出せ!」

「っ、は、はい」


 ここは洞窟の中で、竹で作られた簡易な檻から村人を出してから、外へ引き付けたいと考えていた。ここでは、『雷竜の息吹』を使えないからだ。


「はぁっ!」


 敏捷はこっちが勝っているようで、最初の一撃はこっちが先に当たった。だが、分厚い肉はジェネラルオークの鎧以上になっており、深く切り裂くだけで、真っ二つにはならなかった。


「ブオオオオオッ!!」

「っ!? なんてパワーだ!?」


 キングオークの殴り攻撃を避けたが、当たった壁は大きくひび割れて、破片を沢山飛ばしていた。腕力だけなら、自分より高いと判断できた。おそらく、500ぐらいはあると――――。


「余裕を持っている場合じゃねぇ! まだか!?」

「もう少し!!」


 村人はあと老人を外へ連れて行くだけで、足手纏いがいなくなって思う増分に戦えるようになる。それまでは、後ろを気にしつつ戦わなければならない。ネルもそのようで、あまり攻め切れていなかった。


「豚が、邪魔をしてんじゃねぇよ!!」

「ブゴゴゴッ!?」


 突きで魔石がある所を破壊することが出来、一体のキングオークを倒せたが、貫いた腕を死ぬ寸前に掴まれた。


「ッ、しまっ――――」


 身動きを止められたレイクは、横からキングオークの膨れた腕で殴られた。咄嗟に貫いたキングオークを盾にて、直撃を防いだが――――キングオークごとレイクも吹き飛ばされていた。壁に当たり、血を吐いてしまう。


「レイクお兄さん!?」

「く、来るな!」

「っ!」

「大丈夫だ、ホゴッ、いいから、戦いに集中していろ」

「う、うん!」


 こっちに向かってこようとしていたネルを押し留め、キングオークを退かした。背中に翼があったので、衝撃を少しだけ和らげることが出来たのは僥倖だった。キングオークがトドメを刺そうと、こっちに向かっていたが――――


「ブゴッ!?」

「大丈夫!?」


 村人を外へ避難させていたノエルが戻ってきていた。レイクへ襲い掛かっていたキングオークの眼に矢が刺さっており、ノエルがやってくれたのがわかる。


「助かった!」

「わ、私も歳下に守られてばかりじゃないから!」

「ブオオオオオ!!」

「キャァッ」


 突然に、キングオークが方針を変えて、ノエルへ襲い掛かるのだが、それをレイクは止めていた。後ろから魔石を貫いていた。


「よし、ネル! 洞窟から出るぞ!」

「でも、まだ――――」

「後は任せろ! 来い!」

「うん!」


 レイクは腰を抜かすノエルを抱えて、ネルと一緒に洞窟を出る。入り口へ着くと、レイクは振り返った。


「離れていろ!!」


 逃がさないというように、鬼の表情でこっちに向かってくるジェネラルオークとキングオーク。


「ようやく、終わらせるな。ゴォォォォォ――――!!」


 口元に、全力で魔力を溜めていく。その威力はCランクのキングオークであっても、強くなった自分なら消し飛ばせると確信していた。



「ガアァァァッ!!」



 今のレイクが放てる最強の攻撃、『雷竜の息吹』が洞窟全てを埋め尽くした。

中にいた二体のジェネラルオークとキングオークは眩しい光に包み込まれ、轟音と一緒に消え去ったのだった――――










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