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第六話 生きる為の狩り

本日二話目です。




 レイクとネルは研究所がある場所から離れるように、川を沿って歩いていく。ネルはまだ上手く歩けないので、レイクがおんぶをしている。


「腹減った~」

「少しここから離れてからだ。火を使うと煙で場所がばれるからな」


 と言っても、レイクも限界だった。もう村が襲われてから何も食べていなかったのだから。易々と使うには大げさだが、魔獣魔法で素早く距離を取りつつ、獲物を捕まえることに決めた。


「竜の力を使うから、一度は降りてくれ」

「うん」


 魔獣魔法を使い、竜人のような姿になった。翼があるのを思い出し、飛んでみることにした。


「……うん、どうやって飛べるんだ?」

「翼を動かしてみれば?」

「ふっ、ふっ! わからん!!」


飛ぶどころか、翼を動かすことが出来なかった。飛ぶのは諦め、再びネルを背中に乗せて走り出した。敏捷が上がっているレイクはあっという間に距離を稼いでいく。


「早い~!」

「まだスピードを上げられるけど、俺も腹が減っているからな……」


 一時間ほど走り続けた後、滝の近くになったところでネルを降ろした。これから狩りをして食料を集めに行くのだ。


「ネルも何か手伝うことはない?」

「いや、まだ上手く歩けないだろ? ここで待っていな。すぐに捕まえてくるから」

「はい……」


 ネルも何かレイクの役に立ちたかったが、まだ上手く歩けないのでここでお留守番することに。ネルに何があった時のことを考えて、近くで獲物を探していく。お馴染みの『気配察知』で動物は何処にいるか探し出せる。


「見つけた!」


 魔力が増えているので、『気配察知』の範囲が半径50メートル程に広がっていた。大きな気配、人間より大きい動物のようだが――――今のレイクには問題はなかった。

 見つけてすぐ、そこへ走り出すとクマの姿が見えた。


「グギャー」

「遅いぞ」


 こっちに気付いて、咆えようとしたクマだったがすでに終わっていた。レイクは鋭い爪を構えて、走り抜けただけでクマの首は斜めにずり落ちていた。

 竜相手にクマ程度では相手にはならないという証明が出来た瞬間だった。狩りの時間は一分も掛かっては無かった。クマをそのまま持って帰ったら、お留守番していたネルに驚かれた。


「えっ、もう!? まだ五分も経ってないよ!?」

「この力が凄過ぎるだけだ」


 クマを解体しようと思ったら、道具がないことを思い出した。汚れるが、自分の爪を使ってバラバラにしていく。レイクとネルは村住まいで解体現場は見慣れており、血生臭い場面でもケロッとしていた。それどころか、ネルは涎を垂らしていたほどだ。


「ナイフだけでもあれば、ネルも手伝いが出来たのに……」

「解体の経験はあるのか?」

「一杯あるよ。スキルの『解体術』があるから、上手くできるよ」

「へぇ、いつかやって貰おうか。そういえば、ステータスを見せて貰うことは出来るか?」

「うん、レイクお兄さんならいいよ」


 ステータスは個人情報が詰まっている。それを簡単に見せるのは危険だが、ネルはあっさりと見せてくれた。



ステータス

名称 ネル 8歳

称号、加護:銀狼の加護

レベル4

HP:112/112

MP:26/26

腕力:41

耐久:36

敏捷:68

魔力:19

魔耐:21

魔法

月夜魔法ルナティックLv1

スキル

体術Lv1、身体強化Lv1、気配察知Lv1、聴覚察知Lv2、解体術Lv1



 まだ八歳なのに、加護と魔法を持っていたことに驚いた。獣人族だからか、身体能力が素のレイクよりも高かった。


「成人の儀式はやったの?」

「ううん、加護と魔法は生まれた時からあったよ~」

「ほう、そういうこともあるか。銀狼の加護か、銀色の髪はそのせいじゃないのかな」

「多分……」


 自分からしたら、生まれ持った加護と魔法があるのは凄いと思うが、ネルにしたらそうでもなかったようだ。この凄さを知らない月狼族は異端だと思われ、嫌われていたから仕方が無いのだろう。


「この月夜魔法、どんな魔法なんだ?」

「この魔法は、夜にしか使えないの……」


 ネルから魔法の能力を教えて貰った。


月夜魔法ルナティックLv1

 夜に発揮する能力。

 元のステータスが五倍も上昇する。


 今の魔法レベルではこれしかないが、レベルが上がるごとに能力が増えて強化されると。レイクの魔獣魔法もレベルが上がれば、今の能力よりも強くなるらしいので、復讐するなら早めにレベルを上げて行きたい所だ。因みに、魔法とスキルのレベルは最大で5まで上がる。


「夜限定といえ、ステータスの五倍も上がるのは凄いじゃないか!」

「凄いの?」

「当たり前じゃないか。あ、獣人族は元から身体能力が高かったから、注目されなかったのか」


 周りはネルが魔法を使っても、大人よりはステータスが高くなかったから、目立つことは無かったのかもしれない。それでも、この月夜魔法は強力なのは間違いない。


「レベルを上げて、鍛えていけば強くなれるぞ。ネルは」

「う、うん。ネルも一緒にいてもいい?」


 小さい子を戦わせることに躊躇してしまうが、思い出してみればマリーも八歳から小動物を狩り始めていた。


「一応、聞くが――――相手が人間や同じ月狼族でも、敵になったら躊躇はしないか?」

「しない!!」

「少しは悩めよ……」


 あっさりと答えられて、反対にこっちが動揺してしまった。


「だ、駄目だった……?」


 耳をしおれてこっちを上目遣いで見てくる。その反応を見たレイクは溜息を吐き、しばらくは一緒にいることを認めた。口でそう言っても、戦い自体になったらやれるかわからないから、一緒に共和国へ行くのは保留にした。


「そろそろ焼けるぞ」


 話している間にクマの肉は焼けた。雷で火をつけるには川がなければ森の中では危険だったが、上手く調整は出来るようになってきた。魔法を解除し、焼けた肉へかぶり付く。


「うん、美味い!」

「おいしい!」


 贅沢に言えば、調理味が欲しいところだが、ないので仕方が無い。生煮えに気を付けつつ、次々と肉を焼いていく。食べ続ける時、驚くことがあった。自分より小さいネルはレイクの数倍は食べていた。


「まだ食べたいか?」

「うん、いいの?」

「構わない。好きのだけ食べろ」

「うん!」


 笑顔で食べる所が、マリーと重なって見えてしまい、レイクもつい頬が緩んでしまう。










「お腹一杯~」

「こんな量、何処に入っているのだよ……」


 明らかに胃の許容範囲を超えているように見え、呆れていた。これが異次元胃袋かと納得しつつ、次の目標を決めておく。


「まず、人がいる村を見つける。獣人族やエルフでもいいから、人の気配を見つけて、ここが何処か聞く」

「うん!」


 沢山食べて、休んだからネルも元気になった。既に走ることが出来るまで回復しており、獣人族の回復力に感心していた。


「あ、でも、同じ月狼族の村は嫌かな……」

「あぁ、その時は村外れで待って、俺だけが聞き込みに行けばいい。すぐに戻るからよ」

「うん……ごめんね」

「構わないさ」


 同じ種族の村はまだ怖いらしく、見つけたのが月狼族の村だった場合は、レイクだけが村に入って聞き込みをしてくるだけに留める。

 二人は川を沿って歩き出した。さっきもそうだが、川の近くに村があることは多いので、川を沿っていけばいつかは村を見つけることが出来ると信じている。











「まだ見つからないね……」

「そうだな。ここで野宿にするか」


 数時間、歩き続けたが村を一つも見つけることは無かった。一日目だから、こういうものだろうと納得しつつ、広く展開されている川原を見つけて、ここで野宿をすることに決めた。


「そろそろ夜になりそうだが、武器なしでも狩りは出来るか?」

「うん! 夜なら素手で倒せるよ!」


 夜になれば、月夜魔法ルナティックを使えるようになる。五倍も上昇すれば、腕力と敏捷は200を超え、武器なしでも弱い魔物や動物ぐらいなら簡単に倒せる。

 陽が完全に落ち、夜になって来た頃、ネルは月夜魔法ルナティックを発動した。ネルに薄暗いオーラが包まれて、ステータスも上昇した。


「へぇ、これが月夜魔法を発動した状態か」

「でも、レイクお兄さんの方がカッコいい」

「字面は化物だけどな」


 魔獣魔法キメラ、人間が使うような魔法には見えない。でも、カッコいいと言われるのは悪い気はしない。

 レイクも魔獣魔法を使い、気配察知で獲物を探していく。


「お、向こうに何体か集まっているな」


 群れで行動する動物なのか、数体が寄り添って歩いているのを見つける。直ぐ向かい、見つけたのは親子のキツネだった。大人が二体、子供が四体。可愛らしい動物に子供がいることで攻撃するのに躊躇してしまうレイクだった。


「……ここは見逃し――――」

「ご飯!」


 見逃そうと思っていたレイクだったが、ネルは容赦なかった。しかも、先に子供を殴り飛ばして首の骨を折り、怒る両親のキツネも逃げる子供達も一体残らず、殴って殺していた。


「やったー! 沢山取れたよ!」

「あ、あぁ……」


 容赦無さに頬が引きつってしまうレイクだったが、ここは獲物を捕まえられたので褒めるしか出来なかった。撫でてやると嬉しそうに眼を細めているネル。


「……今度からは子供がいたら、見逃そうな?」

「えー、なんで?」

「えっと……」


 ネルには倫理的な教育もされてはいなかったので、レイクの願いが通じなかった。仕方が無いので、子供の内に食べても量は少ないだろ? と言い換えて説明をしつつ、子供がいたら見逃すと納得して貰った。

 この調子で、二人は夜ご飯になる動物を次々と狩っていくのだった――――









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