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第十二話 レベルアップ




 メアが進む先を追っていき、『深きの閨』と言う場所に着いた。『深きの閨』は陽が指さない森で夜のと変わらない暗さだった。


「……駄目。月夜魔法は使えない」

「今はまだ昼だからな。暗くなっただけじゃ、魔法を騙せないみたいだな」

「え、月夜魔法って、ネルちゃんもオリジナル魔法を持っているの?」

「うん、そうだよ―」


 ネルもオリジナル魔法を持っていたことを知らなかったようで、メアは驚いていた。道中に移動する時、ネルは村人の警護をしていただけで戦ってはいなかったのを思い出し、メアが知らなかったのも仕方がないだろう。


「オリジナル魔法を持っている人が二人……まさか、ノエルも持っていると言わないよね?」

「い、いえ、持っていませんよ。弱い火魔法しか使えません」

「そうか――、貴方までオリジナル魔法を持っていたら、私だけが仲間外れみたいだったし……」

「いやいや、なんで、急に卑屈になっているのですか!?」


 何故か、メアが落ち込み始めた。詳しく話を聞いてみたら、メアはオリジナル魔法を使いたかったようだが、残念ながらそれには恵まれなかったのだ。

 メアは風魔法と土魔法を使える二重魔法ダブルと言う存在の希少な魔法使い手だが、それよりもオリジナル魔法の方が良かったと。


「なんで、オリジナル魔法の方がいいの?」

「そりゃぁ、夢があるじゃない! 世界で一つだけの使い手!! ロマンが欲しかったわよ!!」

「あ、さいですか」


 呆れたレイクは卑屈になったメアを放って、先へ進んでいく。それに続くネルとノエル。それに気付いたメアは慌てて、レイクが進む前へ行こうとする。


「待って! 『深きの閨』はただ暗いだけの森じゃないから、これを飲んでから進むのよ」

「なんだこれ?」

「この森は、幻惑の花が咲いていて、近くを通るだけで幻覚を見る事になってしまうの。だから、最初にこの薬を飲んで、幻覚の耐性を付けておくのよ」

「面倒な森なんだ……。魔物は幻覚に掛からないのか?」

「えぇ、長く生息していれば、耐性も付くでしょうね」


 初めて入る人には、幻覚の耐性を高めておかないと入るだけでも厳しい森なのだ。メアから薬を貰い、飲んでみると……


「意外に甘いな…」

「薬でも、苦いのだけじゃないわよ。たまにだけど、甘いのもあるのよ」

「まぁ、楽に飲めるのは助かるな」


 ようやく準備も終え、皆は森の奥へ進んでいく。そして、すぐ魔物に出会った。




「こいつは?」

「ヒドラ」

「へぇー、いきなりボスとはいきなり常識を破ってくれるな」

「いや、雑魚よ」

「え?」


 目の前には二つの頭を持った竜、ヒドラと言う魔物らしいが……これが雑魚? 五メートルの大きさがあり、強そうな威圧を放っている存在が雑魚と言うのか?


「うえええっ!? これで雑魚なんですか!?」

「あぁ、雑魚だ」

「有り得んだろ!? どう見ても、この森のボスみてぇな奴が!?」

「これでもCランクの魔物、レベルは大体150程度だろう。レイクなら楽に倒せるじゃないのか?」

「ぎりぎりじゃないか!?」


 魔獣魔法を使った場合のレベルは、150を超えるが、竜との身体能力の差が違うので、楽に勝てるとは言えない。ボスだと思ったヒドラが実は、雑魚だと言うのは想像出来ない。ここはレイクが思っていたより、化物の巣窟のようだった。


「レイクお兄さん! 来るよ!!」

「おっと、話している場合じゃないな! 魔獣魔法!」


 竜人モードになり、ヒドラが何かを吐き出してくる同時に、『雷竜の息吹』で迎撃をした。ヒドラが吐き出したのは、氷の息吹だったようで、雷と衝突して相殺した。


「ネルとノエルは待っていろ! 少し弱ってから介入しろ!」

「わ、わかった!」

「わかった―」


 この魔物は二人には荷が重いので、最低でもHPを半分以上も減らして置かないと駄目だ。雷を纏い、ヒドラの側面から攻めていく。


「私も手伝った方がいい?」

「そ、そうですよ、メアさんはこの中で一番レベルが高いのですよね?」

「いらない!! メアは二人を余波から守っていてくれ!」

「わかったわ」

「ええっ!? 一人で戦うの!? それは無茶じゃない!?」


 レイクはレベルを上げたいだけではなく、自分自身が鍛えられる為に戦うのだから、メアのような強者に介入されてしまえば、ここで得られる経験が減ってしまう。無茶でも、レイクはある程度でも格上の敵にも戦えるようにしなければならない。帝国にいる大将は目の前にいるヒドラとは比較にならないぐらいに強いのだから。


「素早いのは首だけで、他は鈍い!」


 レイクは距離を確認しながら、敵の動きを見極めていく。動きが素早いのは二本の首だけで、足元は鈍いように感じられた。なら、レイクが狙うのは足元ということになる。

 ヒットアンドウェイの要領で攻撃を避けながら、脚へ攻撃をしていく。鈍ったら、首へ狙うのも忘れない。氷の息吹は大きく距離を取られなければ、怖くはない。他に噛み付きや踏み付けなどの攻撃もあったが、それ程に俊敏は高くないようで、素早く動き回るレイクを捕らえられないように感じられた。


「これは想像以上だったわね。成長が早いわ」

「ええと、早過ぎて……光があちこちと動いているようにしか見えない……」

「かっこいい――!」


 雷と同化しているように俊敏の高さを生かして、攻撃を続けるレイクは新しいスキルを手に入れていた。『雷瞬激動』というスキル、雷のように直線的な動きが出来るようになり、直線であるほどにスピードがどんどんと上がっていく。方向転換すれば、スピードが少し落ちてしまうが、今のように動き続ければ、本物の雷と見間違う程になる。ただ、感覚に捉えられるスピードの限界はあるようで、限界を超える前に一度は離れた場所で止まって、スピードをリセットしていた。


「うっ、これは慣れないと吐きそうだ……」

「グギャァァァァァァ」


 止まった事に、チャンスだと思ったのか今以上のスピードで突撃してきた。自分の重さを利用した体当たり、当たればレイクといえ、致命傷なダメージを受けるだろう。だが、レイクは一人で戦っている訳でもない。


「グギャッ!?」

「私もやるわよ!!」

「殴るの!!」


 ヒドラの目には矢が刺さっており、ネルも側面から力一杯殴っていた。その攻撃はあまりダメージにはなっていないが、予想してなかった場所から攻撃されて、動きを止めていた。その隙がレイクにとってはチャンスだった。更に距離を取り、『雷瞬激動』で一直線に向かい、スピードを上げた突進と鋭い爪――――




雷の槍ライトニングスピアってとこか」




 そのまま、ヒドラの胴体を身体ごと押し込むように貫いた。その時に魔石を破壊出来たのか、ヒドラは呻き声を上げてすぐ倒れた。




「倒せたが……血臭い!!」


 身体ごと胴体を貫いたのだから、レイクは血塗れになっていた。強力な一撃だったが、この技はもう封印しようと思うぐらいに、血臭かった。


「レイクお兄さん――! 凄かったよ!!」

「うわぁっ、ネルちゃんは度胸があるわね」

「早く川を見つけて、洗ったほうがいいわね……」


 ネルはレイクが血塗れであっても、構わないと言うように腰へ抱きついていた。洋服が血で濡れても気にしてはいなかったようだ。敬遠されなかったのは、嬉しいが、年頃の少女がこんな感性でいいのか悩む所だ。

 すぐメアの案内で、川はすぐ見つかったので臭い匂いが弱まったのは助かった。ヒドラを倒し、どれくらい強くなったか、ステータスを確認していたら、なんと一体だけで10も上がったのだ。そして、魔法とスキルのレベルも上がっていた。

 魔獣魔法のレベル2は効果が増えておらず、ストックが一つ増えただけだったが、これだけでも充分強いので、気にしては無かった。




「ストックが一つ増えたか……、メア。ここの森で一番強い魔物は?」

「SSランクの魔物がいるけど、今のレイクには無理でしょうね。Bランクの竜なら、そこの山に向かえばいるわよ」


 『深きの閨』で一番強い魔物はSSランクのようで、レベル500を超えているメアでも勝てないぐらいに強いらしい。レイクはそこまで望まないので、雷竜と同等の力を持つ竜のことを教えてもらった。


「レベルは200~250程度だと思うわ。その竜は、氷竜で他の竜よりも賢いわ」

「ほう、氷竜か。まず、ここら辺で、レベルを上げた後にそいつを狙うのもアリだな」


 次の目標が決まった。今はまだレベルが足りないので、ここでヒドラなどの魔物と戦って、強くなってから挑もうと考えている。レイクだけではなく、ネルやノエルもヒドラより弱い魔物を倒して、レベルを上げていくのだった――――










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