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第十話 道中




 レイク達はメアの案内元に、森の中を歩いていた。エルフの森は共和国の東西辺りにあり、歩いて五日間は掛かる。老人もいるので、一週間は見ている。歩いている間、レイクはエルフの森についての質問を繰り出していた。


「エルフの森はあっさりと入れるの?」

「普段なら、商人とかも来ているわ。だけど、今は戦争中だから結界魔法リアクターを使って、外からの進入を遮断しているわ。同族のエルフ以外はね」

結界魔法リアクターね、使い手が外部に出る事も無く、エルフの森にずっと住んでいるってこと?」

「使い手と言うのは少し違うわね。私達は聖樹と呼んでいて、結界魔法リアクターの紋章が刻まれた大樹があって、大量のエルフが魔力を注ぎこむことで、エルフの森を覆い尽くす結界を生み出せるのよ」

「へぇ、魔法は生き物じゃなくても、宿ることがあるんだ……」


 魔物や魔族も魔法を使ってくることがあると聞いたことがあるが、大樹が魔法を宿して、他者が魔力を込めることで、発動できるのは初めて聞いた。


「レイク君、本当に12歳? 大人みたいにすぐ理解するよね」

「あははっ……」


 レイクは実は、精神年齢が47歳なのだと言えず、笑っているだけしか出来なかった。隣で一緒に聞いていたネルは難しい話についていけず、欠伸を繰り返していた。


「私達、エルフは外に出る時は必ず、これを持って行くのよ」


 メアはそういい、耳に付けられた枝が付いたピアスを見せてくれた。見た目はただの枝が付いたピアスにしか見えないが、この枝は聖樹の枝であり、結界を抜ける為に必要な物である。


「これを持っているエルフが一人でもいれば、村全ての人間を結界の中に入れることが出来るの」

「でも、悪用されてしまえば、結界の意味を成さないよね」

「そう。だから、この枝だけは無くさないし、他人には絶対に渡さないわ」


 エルフの仲間が死んだら、必ずこの枝のピアスを回収する必要がある。もし、近くに仲間がいなければ、死ぬ前に燃やすか塵にしろと指示を出される程だ。


「ふーん、でも、それを俺に話しちゃ、意味が無いだろ?」

「ふふっ、レイク君なら悪用はしないでしょ?」

「まぁ、しないが……」


 もし、エルフが復讐の対象だったら、メアから殺してでも奪っていた可能性はあっただろう。でも、エルフは今回の戦争には関わりを絶つと決めており、傍観すると言っていた。


「ねぇ、帝国はどうして戦争をしようと思ったのかしら?」

「……わからないな」


 捕まっていた時でも、帝国が共和国を攻めて、何をしたいのかは聞いていない。あの気狂い双子は研究をしたいだけのように思えたが、帝国の上層部で考える目的とは違うだろう。共和国には、帝国が欲する物があったか、考えてみるが……


「共和国の宝は何があるか知っている?」

「共和国の宝?」


 レイクは共和国に一度も行ったことはないので、何があるかイメージが沸かなかった。ただ金が欲しいだけで戦争を起こすにはメリットが少ないだろう。戦争を仕掛ける程のメリットとは、なんなのか。


「……そういえば、ある魔法を持つ人がいるわね。先人で英雄的な存在だった人が持っていた魔法を」

「共和国だったのか。本で読んだことがあるな。その英雄的な存在が持っていた魔法を宿した人は国に保護されていると」

「でも、戦争をしてでも欲しいものかな?」


 保護されていると言っても、外に出させない等の不自由にさせている訳でもない。帝国の人がその魔法を持つ人と会う機会もいくつかあるだろう。その時に、誘いを掛ければいいだけだから。


「……他には思いつかないわね」

「そうか」


 帝国の目的は不明だが、あの研究所があるぐらいだから、碌でもないことを目的にしているのだろう。しばらく、話をしていたら――――


「あら、こっちに向かってくる魔物がいるわね」

「結構広い範囲だな。こっちはまだ察知してないぞ」

「ふふっ、伊達に歳を重ねていないわよ。二体だけみたいけど、どうする?」

「俺がやろう」

「ネルは――?」

「二体程度なら、俺一人で充分だ」


 こっちに向かってくる魔物が二体いるということで、村人にはしばらく足を止めて貰って、迎撃を始める。魔獣魔法を発動すると、初めて見る村人とメアは驚き、感心する人もいた。


「本当に、あっさりと発動出来るのね」

「ん、ゴブリンか?」

「惜しい、コボルトよ」


 人型の気配を感じたので、ゴブリンだと思ったが違うようだ。コボルトは、ゴブリンと変わらない大きさで、犬の顔をした人型の化物だ。メアは離れた場所でも、種族を見分けられるようだ。


「あれが、コボルトか」

「ワンワン!!」


 コボルトはゴブリンと変わらない強さなので、レイクはあっさりと二体の横を横切るように走り出すと、コボルトの首が落ちていた。レイクがやったことは簡単な事だ。走り出す同時に、両手の爪で切り裂いただけだった。


「わぁ、結構早いわね」

「流石、レイクお兄さん!!」

「キングオークと比べたらな」


 今のレイクはキングオークなどの強者とオークを大量に葬ってきたのだから、レベルが結構上がって、ステータスも上がっている。



ステータス

名称 レイク 12歳

称号、加護:復讐者

レベル64(100)

HP:293/293(750/750)

MP:264/264(600/600)

腕力:189(300)

耐久:151(350)

敏捷:234(300)

魔力:173(350)

魔耐:146(350)

魔法

魔獣魔法キメラLv1【雷竜】

スキル

剣術Lv2、身体強化Lv2、気配隠蔽Lv1、気配察知Lv2、【雷竜の息吹Lv1】、【雷纏強化Lv1】



 今のレイクは素でCランクの魔物なら、時間を掛ければ倒せるぐらいには強くなっていた。


――――これでも、あのクソ野郎を倒せるとは思えない。


 クソ野郎のことは、村を襲った大将のクロトだ。気配を察知させずに、後ろへ回った技術か能力。軽々に攻撃をいなす力を持った化物を倒すには、もっと強い魔物を取り込まないと駄目だと思えた。


「…………」

「何を考えているかわからないけど、急いでも充分な力が身に付かないわよ?」

「あぁ、そうだな。俺には技術と経験が拙い所があるしな」

「それだけじゃないわ。急ぐあまりに、周りを見なくなるわ」

「周りを?」


 メアはそう言い、ちらっとネルがいる場所へ視線を向ける。ネルは眼をキラキラしてこっちを見ていた。メアは仲間を頼れと言いたいか、守る者がいると教えたいのかわからなかったが、レイクには充分の励ましになった。ネルはこっちに視線を向けていることに気付いたのか、レイクの側へ走っていった。


「いつもネルも一緒だよ?」

「ふふっ、そうだよな。一緒に強くなろうな」

「みゅ~、うん!」


 銀色の耳を撫でてやると、嬉しそうに小さな鳴き声を上げていた。それを見ていた村人やメアは微笑ましい笑みを浮かべていた。


「さあ! 脚を動かすわよ!」


 ずっと脚を止めている場合じゃないので、すぐ行動を起こす。魔物に襲われても大丈夫ように、固まって動き出している。


「しばらくしたら、私達で食料を狩りに行くわ」

「私達?」

「あぁ、私、レイク君、大人の男性で行くよ」

「ネルは――?」

「ネルちゃんは皆を守っていてくれる? 魔物が出てくるかもしれないから」

「やだ! レイクお兄さんと一緒に狩る!」


 メアのお願いを断り、レイクの腰に抱きつく。やることはレイクと同じことをやりたいと言う心情が強かった。困惑するメアだったが、レイクは仕方が無いと言うように、首を振っていた。


「ネル、頼むよ。皆は弱いから、頼りになるお姉さんがいないと困るんだ」

「お姉さん?」

「そうだ。俺達がいない間、皆を守れる力を持っているのはネルしかいないだろう? だから、ネルがお姉さんのように、皆を守ってやるんだよ」

「ネルがお姉さん……うん! わかった! お姉さんに任せるの!!」

「あははっ……」


 守られる側のノエルは苦笑していたが、ネルがせっかく皆を守るために残る気になったので何も言わなかった。


「慣れているのね……」

「まぁ、一つ歳下の幼馴染がいたからな」

「そう……」


 メアは気付いていた。誘拐されて研究所に連れて行かれたのはレイクだけだと聞いたので、マリーはもう生きてはいないと。

 でも、レイクはここで立ち止まっている訳にはいかない。


「なぁ、エルフにナイフを上手く使える奴はいる?」

「ナイフを? そうね、ガープなら槍だけではなく、ナイフも上手く使えるわ」

「なら、ガープにナイフでの戦い方を頼んでもいいか?」

「大丈夫だと思うわよ。教えるのが好きな人だから」


 レイクはエルフの森にいる間に、技術と経験を少しでも積み重ねたいと考えていた。そのために、ナイフの扱いが上手い人を聞いていた。エルフの森に着いたら、忙しくなるなと思うレイクであった――――











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