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いち日本人のバイト事情  作者: 栗原 花楓
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03


 今日も今日とてバイトに行こうと身支度しながら、ふと浮かんだ疑問。そういえば、店主は誰から料理を習ったのだろう、と。


 今日は夜の営業時間は貸し切りで宴会をするという話だったので、昼の営業が終るなり猛然と仕込みを始めた店主を手伝いながら、綾斗は休む間もなく包丁を振るっていた。

 既に出す料理は決まっているので事前準備ができるのはありがたいが、その量が半端ではない。どれだけ大人数なのだと思わせる程のそれは、この店の中に入り切らないだろうことを容易に想像させる。はっきり言って、夜に来る常連客やその仲間達が店に来ない時に利用する食堂の方が、確実に人が集まるのに向いているだろうにと考えてしまう位には。

 だからその疑問をそのままぶつけてみれば、非常に苦み走った顔をしたので、どうやらこの事態が店主自身の望んだものではないことが知れる。


「しょうがねえんだよ、それが条件だからな」


 第一あっちで飯を作る訳にもいかないし、作る気もないのだ、と。口の中で文句を言いながら、店主の手は休むことなく動き続け。

 そんな店主の様子を横目に、同じように作業を続けながらふと、今朝の疑問が浮かんでくる。

 店主の料理に関する知識もそうだが、この店にしたってそうだ。店主のこだわりが随所に見え隠れするこの空間は、いわば彼の縄張りのようなもので。調理器具ひとつ取っても、恐らくダンジョンにある食堂の物とは違うのだろう。

 だってここは、客層さえ気にしなければ日本の飯屋とほとんど変わらない。対面カウンターは、バーや酒場と言うよりまるで日本の小料理屋のようだし、入口には暖簾まで下がっている。自分にとっては非常に馴染みのあるものだが、こちらの世界の住人にとってはそうとは言えないだろう。

 だからこそ、疑問を抱いてしまう。どちらかというと西洋寄りのこの世界で、どうしてここまで東洋、否日本風なのだろうと。

 そしてもう一つ最大の疑問は、


「おやっさんは何でこんな所で店をやってるんですか?」


 言っては悪いがこのダンジョン、魔王の城などという物騒な名前の付いた場所だけあって、相当の腕がないと生きてはいけない。

 短い付き合いの中で思ったことだが、この店主は特定の誰かに料理を供するのが目的ではなく、ただ純粋に料理が好きで、それを食べたいと思うなら誰であろうと関係なく腕を振るうことを善しとしているように見えた。だから、それが人間だろうと魔族だろうと関係なく、客に対してはいつだって平等だ。

 ただ一部、店主に対して敬うというか怯えるというか、いち飯屋の店主に対するには明らかに違う態度を示す者もいるが。店主がここで何かをしたのか、店を出す前に何かをしていたのか、それはまだ分からないが店主が積極的に彼らに対し何かをしたことはないから、それなりの事情があるのだろうと思っている。

 こちらの貨幣価値はまだ良く分からないが、多大にぼったくっているようでもないし、だからと言ってコストを削減する為、粗雑な材料を使っているようでもない。そして、店主の腕ならばもっと客が多く来る所に店を構えても十分に繁盛すると思うのだが、こうしてごく限られた者たちしか利用できない状況を甘受している。

 折角ならばもっと多くの者たちに料理を供したいとは、店を大きくしたいとは思わないのだろうか?それに見合うだけの腕を持ちながら、どうしてここで満足しているのだろうか。

 勿論、綾斗は己の置かれている現状に不満を抱いている訳ではないし、寧ろこぢんまりとした構えに満足すらしている。元々人を踏み台にしてまで上に行きたいとか、誰よりも目立ちたいとか、そう言った出世願望がある訳ではない。

 それに、もし店主の店がもっと賑やかな場所にあり大きく繁盛していたら、料理一つを取ってもまともにできない、しがないバイトの自分を雇ってくれる可能性は限りなく低かった。勿論雑用でも何でもする気ではあったが、役に立たない者を雇う方の身になって見れば、無理強いもできないというもの。

 完全に打算的な部分があるのは否めないが、この店だったから雇ってもらえたのだと綾斗は思っていた。そしてそれ以上に、今では店主の料理や客に対する構えに好感を覚え、そんな風になりたいと思うようになっていて。この歳になって漸く、自分の進みたい道を見付けたような気さえしている。

 最初こそ自分の身に降りかかった不運を嘆いていたものだが、非日常ながら日々を過ごし信頼できる者に出会えた幸運は何事にも代え難いのだと理解した。


『物に恵まれるより人に恵まれる方が、素晴らしい人生を歩めるのよ。私にとっての姉のように、貴方にもきっといつか素晴らしい出逢いがあるわ』


 それは、嘗て共に暮らしていた母方の祖母が言っていたことで。幼さゆえに聞き流していたそれを、身を以って体験することになるとは。人生とは何があるか分からないものだ。


「おいツム」


 訳知り顔で一人頷いていると、店主から訝しげに名を呼ばれる。別に隠すことでもないのだが正直に言うのはどことなく照れくさかったので、丁度切り終わった人参をバットに乗せながらそ知らぬ風を装い、何でもないと首を振った。

 店主はそれを受け、あからさまな誤魔化しに気付かない筈が無く納得がいかないのか眉間に皺を寄せていたが、暫くの後その口から諦めたような溜息が漏れる。


「後は湯を沸かせば取り敢えず一通りの準備は終わりだ。客が来はじめたら忙しくなる、今の内に賄い食っとけ」


 店主は大鍋に水を入れながら、親指で厨房内に設えられたテーブルを指し示す。そこにはいつものように店主お手製の料理が並んでいて、盛大に湯気を上げている。自分が物思いに耽っている内に準備されたらしいそれに、綾斗は慌てて礼を言う。

 厳密に取り決めていたわけではないが、賄いに関しては綾斗の練習を兼ねていることもあり、朝以外は綾斗も仕度を手伝っていた。だが今回は店主が全てやってくれていたようで、既に後は食べるのみとなっている。


「すみません」

「気にするな、と言いたいところだが。包丁を持っている時の考え事は止めろ。うっかり指を無くすぞ」


 思わず口をついて出た謝罪に返って来た厳しさを含んだ声音で告げられた忠告に、綾斗は神妙な顔をして頷く。そうだ、自分の身体も脳もまだ完全に料理という行為に慣れていないのに、意識を他に飛ばすなど失態もいいところだ。


「これからは気を付けます」


 けじめの意味も込めて店主に向かって頭を下げ、同時に気持ちを切り替える。今日はそうでなくても忙しくなるのだから、しっかりと仕事をこなさねば。それに、折角手本となる者が目の前にいるのだ。考え事をしてその技術を学ぶ時間を減らすなど勿体無い。

 綾斗は賄いが並べられたテーブルへと向かうと、いつも自分が座っている椅子を引き出し腰を下ろした。これから作る料理の試しだろうか、随分と豪勢な料理の数々に、お腹から音が鳴る。無意識に視線をさ迷わせながらそんなに減っていただろうかと考えていると、店主が鍋を火にかけ終わったのか綾斗の向かい側に腰を下ろし箸を取ったので、倣うように箸を取り手を合わせ「いただきます」と一言。綾斗が昔から当たり前のようにやっている食べる前のそれに、店主は何故かいつも懐かしそうに目を細めるのだった。

 そういえばその理由も聞いたことがなかったな。そんなことを考えながら、椀に手を伸ばす。今日のおみおつけの具は茗荷と玉ねぎと豆腐。久しぶりに食べる茗荷の味に、昔はこの独特の風味が苦手だったのにいつの間にか食べられるようになったんだなと、詮無いことを考えた。脳裏には、茗荷を使った料理の数々が思い浮かぶ。蕎麦の汁に入れたり冷奴に乗せたりと、ほとんどが薬味としてのものだったが、久しく食べていない祖母が毎年春になると作っていた茗荷の茜漬けなんて物もあったと思い出す。

 生憎と祖母の家に泊まりに行くのは長期休みと決まっていて。小中学生の時は茗荷に対して苦手意識を持っていたものだった。高校になってからはバイトや遊びに忙しく、祖母の家に泊まる機会も余りなくなっていた。

 大学に入るのを機に田舎を出て祖母と同居するようになってからは、再び祖母の手料理を口にする機会も増えたが、その祖母が亡くなってからは時折妙な懐かしさと共に思い出す程度で。

 だが、こちらに来てからというもの妙に思い出す機会が多い。それは、店主の料理が食べる側のことを考えて作られているものだからであり、食べる物それぞれに思い出が浮かぶのは、それだけ母親や祖母が愛情を持って育ててくれたからなのだろうと、最近特に感じるようになった。

 零れそうになるものを誤魔化すように掻き込んだ物を租借しながら、もう少し真面目に二人の手伝いをしておけば良かったなと、二度と会えない面影に思いを馳せる。今日は随分と感傷的になっているなと苦笑を洩らしながら、今だけはとそれを自分に許し綾斗は黙々と手と口を動かし続けた。

 一方そんな綾斗を見つめる店主の表情は、子供を見守る親のように穏やかで。だがそれを裏切るかのように、その瞳には痛みとも哀しみとも取れる影がちらついていた。




「俺にとってはどこでも良かったんだよ」


 此処でも、別の何処かでも。煙管を片手に、どこか遠い目をして店主は言う。

 綾斗は唐突に落とされた呟きに、手元の湯飲みへと落としていた視線を上げた。数秒の沈黙の後、それが先程の質問の件だと思い至る。そういえば、その後自分の世界に入り込んでしまって答えを聞きそびれていたな、と。


「おやっさんにとっては、料理が出来る場所さえあれば良かったってことですか?」

「そうだな……否、勿論それもあるが、何より俺が忘れたくなかった」


 何を、とは聞けなかった。何故なら、店主が何か痛みを抱えているように見えたからだ。自分でも整理しきれない感情を持て余しているような、痛みを無理矢理押さえ込んでいるような、そんな顔で。これ以上聞くべきではない、そんな風に思わせる雰囲気に、綾斗は自分が触れるべきではない部分に触れてしまったような気がした。


「……おやっさんだったら、もっと賑やかな場所に店出しても繁盛してたんでしょうね」


 だからこそそれに気付かぬ振りをして、殊更明るい声を出す。と、店主はその声で我に返り、気持ちを落ち着かせるかのように煙管を吸った後、殊更ゆっくりと息を吐き出し、綾斗の方へと顔を戻した。そこには数瞬前まであった痛ましさはなく、綾斗の口から安堵の息が漏れる。

 そんな綾斗の気遣いに気付いたのか、店主は苦笑を浮かべながら頭を掻いた。そして、綾斗の気遣いに乗るようにやれやれといった体で肩を竦め、


「俺は寧ろ知り合いのいないところに店を構えたかったんだが―――」

「私がお願いしたんです。『飯屋をやるのは許可しますが、目の届く範囲でお願いします。寧ろこの城から出るのであれば許可できません』と」


 渋い顔をする店主の台詞に被さるように聞こえた声に慌てて首を巡らせれば、カウンターに手を付いてこちらを見る人?の姿が。


「……まだ開店時間じゃないぞ」

「そんなつれないことを言わないでくださいよ」


 店主の素っ気無い一言に青年が困ったように眉を下げ小首を傾げると、癖の無い銀糸が肩口からさらりと零れる。秋の空のような蒼玉に浮かぶのは、悪戯が成功した子供のような無邪気な光。入口の引き戸を開ける音をさせることなく、ましてや声をかけるまで気配を感じさせることも無く。文字どおり唐突に現れた青年に、店主は不機嫌そうな顔を隠さない。

 綾斗は青年の意識がこちらに向いていないのを良いことに、まじまじとその姿を観察する。長い銀の髪をゆるく束ね、左耳には、青年の瞳の色より濃い藍色の石が散りばめられた銀のイヤーカフが。そして右耳には大きな赤い石だけのピアスが二つ並んでいる。その身を包むのは、黒を基調とした首元までかっちりと止められた詰襟。所々に金糸の縫い取りがある品の良いそれは、驚く程青年に似合っていた。

 年のころは綾斗と同じくらいだろうか。いや、彼が人間で無いとしたら見た目通りの年齢という訳ではないだろう。この時間に店に来られて、しかも店主の知り合いならば、彼は十中八九魔族ということになる。

 探るような綾斗の眼差しを何と取ったのか、青年は店主に向けていた視線を綾斗へと移し、目を眇めた。敵意は無いようだが、どこか歓迎されていないような雰囲気を敏感に察知した綾斗は、なんとも居心地の悪い思いをしながら、そういえば自己紹介をしていなかったと気が付き席を立つ。

 恐らく今夜来る予定の客の一人なのだろうが、わざわざ開店前に訪れたのならばただの客としてではない対応が必要なのだろうと思ったのと、何より先程の彼の一言から、この青年は店主に対しそれなりの強制力を持っているということになる。ならば、店主の下で働いている自分が挨拶するのは当然で。


「はじめまして、黄昏の雫でアルバイトとして雇っていただいている、紡車綾斗といいます」


 宜しくお願いします、と当たり前のように頭を下げる綾斗。青年の瞳が僅かに驚きをもって見開かれ、店主は飄々としていた青年が表情を変えたことが面白くて、その様子を黙って観察している。

 いっかな反応が返って来ず、何も言われないままこうしているのもどうかと思いそろそろと顔を上げた綾斗の目に映ったのは、見た目の歳相応の表情をした青年の顔。それを見て、やはりさほど歳を取ってはいないのかも知れないと思った。


「……ああ失礼、こちらこそはじめまして。私は……セイ、といいます」

「あ、どうも」


 宜しくと言いながら、貼り付けた笑顔で差し出される手。言いよどむ辺りあからさまに偽名なのだろうが、店主が何も言わないので何か事情があるのだろうと解釈し、カウンター越しにその手を握る。青年の手は男性らしく筋張っていて、でも細く長い指は傷などなく滑らかだ。

 どちらかというと、剣より魔術を行使するタイプなのだろうか。なんとなくそう思ったのは、青年の線の細さも勿論だが、苦労を知らなそうなその手のせいだ。もしかしたら、そんなものがあるかどうかは分からないが、魔王の城の事務要員といったところだろうか。などと考えながら自分より頭一つ分高い位置にある青年の顔を見上げた。

 何か言わなければと思うのだが、そこまでコミュニティ能力が高くない綾斗には咄嗟に出てくる言葉がない。ふと綾斗の脳内に、本日も言いお日柄で、と笑う近所の仲人好きなおばさんの顔が浮かんだが、どう考えても場違いなので却下する。

 かろうじて失礼ではない仕種で手を離すことはできたが、このあとが続かずどうしたものかと悩む綾斗に助け船を出したのは目の前の青年、ではなく店主だった。


「お前、会議を抜け出して来たな」


 店主の指摘に、セイと名乗った青年は何も言わず目を細めた。それは、ご名答とでも言いそうな顔。そして特に否定しないところを見ると当たっていたようで、店主は苦虫を噛み潰したような顔で舌打ちした。


「会議?」


 これ幸いと青年の前から退いた綾斗の脳裏に、かつてバイトをしていた会社で行われていた重役会議の様子が浮かぶ。会議室の準備とお茶出しの手伝いをした時の重苦しい空気は余り好ましくなかったと記憶している。店主曰くこの青年が―――あっちとこっちでは大分様子が違うのだろうが―――その会議に出席する要員だということなのだろう。もしかしたら、その会議後の打ち上げか何かをする関係でこの店を予約したのだろうか。では、この青年は幹事か何かなのかも知れない。ならば、セッティングの確認や事前打ち合わせの為に先に来ることもあるのだろう。だとしても、重要な会議を抜け出してまでというのは些か問題ではなかろうか。

 そんな綾斗の考えに気付いたのだろう、青年がおどけた様子で肩をすくめた。


「大丈夫、彼等はそれなりに優秀ですから、私の一人や二人いないところで滞りなく進んでいる筈ですよ。それにどうせ皆ここに来るのですから、報告も聞けますしね」

「お前が二人もいたら厄介で仕方ねえよ。というかいない時点でやる意味がないだろうが」


 いけしゃあしゃあと言ってのける青年の言を、店主は顔を顰めてばっさりと切って捨てる。

 尚も苦言を呈す店主とのらりくらりとかわす青年のやりとりを眺めながら、綾斗ははてと首を傾げる。やる意味がない、とはどういうことだろう。彼の役割は進行役?それとも案件を提示する側?己の記憶にある会議の様子に青年の立場を当てはめてみるが、さっぱり分からない。

 例えば体調不良でどこかが欠けてもそれをフォローする人員は用意されているものだろうに。それとも、魔王の城というのは万年人員不足だったりするのだろうか。

 どうもしっくりくる答えが見付からず、綾斗が眉間に皺を寄せながらそんなことを考えていると、何かを察した店主の大きな溜息が聞こえてくる。おや、と思って顔を上げると、渋面を作った店主がそこにいて。


「こいつがいなきゃ始まらないってのは、そもそもこの城の最高責任者が出ないのはあり得ないって意味だ。つまりはな、魔王なんだよ。この胡散臭い若造が」


 店主はとても冗談を言っているようには見えない。だが綾斗は直前まで思考を巡らせていたせいで、その言葉を飲み込むまでに少々の時間を要した。そして、店主の言葉と意味をはっきりと理解した瞬間、


「はえ!?」


 衝撃に、間の抜けた声が漏れる。限界まで目を見開き、店主と青年の間で視線を行ったり来たりさせながら、金魚のように口をパクパクさせている綾斗の様子が可笑しかったのか、青年が口元を歪める。そして、いっかな否定する様子がない、ということは―――


「っ!?っえええぇぇぇぇ~!!!」

「ふっ、くくく……」


 口をぱかりと開けて驚きを露にする綾斗を前に、堪えきれなくなった青年が俯いて肩を震わせる。笑いの発作は暫く止むことはなさそうだ。

 その顔は先程までの作ったようなものではない、心からの笑顔だった。



・+・+・+・+・



バイト□日目:

 今日、俺はとんでもない人に遭遇してしまった。最初は会社で言うところの総務のような、ダンジョンの施設管理でもしている人かと思った。明らかに戦闘向きではなさそうな姿を見たら誰だってそう思うと思う。でも、それは大きな間違いだった。何故なら、セイと名乗ったその人は、魔王の城の最高責任者、魔王様その人だったのだから。俺の驚きようも察してしかるべきだと思う。だって誰だって思わないだろう、あんなに気安く現れる見た目華奢な青年が魔王様なんて。そしてかつてない驚きに、それまで考えていたもやもやが一気に吹き飛んだのは良かったのか悪かったのか。とにかく、今度また来ると言っていたが、仕事だけはさぼらないようにお願いしたい。魔王という役職が具体的にどういうものかは分からないが、上司であるのは間違いないのだから、部下にしなくても良い苦労をさせるようなことはしないで欲しいものだ。完全に私情が入っているのは、上司に苦労した経験者故だと目をつぶって貰いたい。

 その魔王様、どうやらおやっさんとは浅からぬ縁らしいが、上司と部下というには親しそうで、友達というのもしっくり来ない。そう、言うなれば親子みたいだなと思った。そんなことを言ったら怒られるかも知れないので黙っておいたが、気安いやり取りは身内に対するような親しさを感じた。

 今夜は二人で二次会をするらしいので、今頃ゆっくり飲んでいる頃だろう。というか、魔王様っておやっさんのペースについていけるんだろうか。だとしたら流石は魔王様、伊達じゃないと称賛を贈らせていただきたい。



ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。

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