空の上の興奮
恥の多い人生を送ってきた。四年ぶりに、このモヤモヤを晴らせる時がきた。
といっても、あまりに長い時間が過ぎてしまったものだから、次見つけられるか分からない。でもやってみる価値はある。
私は荷物を敷き詰めたトランクとジャスティンを持ってエジプトへ飛び立った。もちろんANAだ。
エジプトに行くと決まった時から私は嬉しくて嬉しくてたまらなかった。いつもと違ってジャスティンの話も面白く感じた。
飛行機の中でもとても愉快な気分で、音楽を聴きながら雑誌を逆さまにして読んだ。それに、トイレでずっと踊っていた。
私の頭の中ではDJが「今夜フロアを支配するのは誰だ!?」と客を煽る。
私は「今夜このフロアを支配するのは私よ!」と叫び、ひたすら体をツイスト。
誰かが扉を叩いても無視していた。すると「あんた何してんのよ!何ゴソゴソしてんのよ!早く出てきなさいよ!ちょっとあんた聞いてんの!早く出てきなさいよね!何十分いるつもりよ!早く出てきなさい!」と荒んだ声のおばちゃんに言われてしまった。
苛ついた私は体をより一層体をひねらせた。するとケビンアテンダントを呼ばれて、トイレから這いずり出された。
それからというものケビンはずっと私を監視し続けた。
「まじ軟禁状態なんですけどーありえないんですけどー」とツイートすると二件リツイートがきた。オーストラリアと岐阜からだった。
踊り終わって汗ダクで自分の席に帰ると、ジャスティンが「何してたの?」と聞いてきた。こういう時だけ興味示さないでほしいと思い、「知らない」と言った。
私はケビンに毛布を頼んで、それを羽織った。プロである私は筋肉を冷やさないように細心の注意が必要なのである。
ジャスティンは一瞬、ヒューグランドが時々見せるような懐疑的な顔をして「薬やってんのか?」と私に言ってきた。
この時は流石の私も怒ったのだ。いわゆる"激おこpunpun Punch-and-Judy丸"。「それはお前だろ、娼婦の息子」とラッパーが使うようなはしたない言い回しで言ってしまった。この時だけはすぐ反省して謝ったのだけれど。
しばらくして機内食が届いた。私とジャスティンは遂に来た豪華な機内食に目を爛々とさせた。魚と野菜とお肉を食べた。
私が食べている間、横でジョロジョロと何かの音が鳴っている。不思議に思った私が横を見ると、ジャスティンが自分の水筒に機内で貰った水を入れていた。
「本当あり得ない、何してるの?」と私が言うと、彼は即答した。
「だってエジプトって暑いし」
アイボンの時もそうだが、彼は何故こんなにも水買いたがらないのだろう。
その謎はすぐに解明された。ジャスティンは利き水が出来るらしいのだが、そんな彼にとって水質はとても重要な問題であったのだ。
私には到底理解できないから、ジャスティンと私はまさに水と油。
そうは言っても、私もコーラが出してる変な味のついた水くらいなら見分けることができる。不味いから。
それからは特に面白いことも無く、座席の前にある袋でコックさんみたいにして二人で写真とったり、私はヘッドホンをつけた後、その袋を膨らましてジャスティンの耳の横で破裂させたり、特に何も起こらなかった。