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カシカ2 エジプトの朝  作者: 丸三角死角
17/20

闇の中で

気ががつくと、私は道に倒れこんでいた。全身が痛む。それでもゆっくりと体を起こす。


ここはどこだろう。目の前には女の子が着ていた真っ白の服と、私が持ってきたロータスの花が落ちている。私はそれらを拾い上げ、辺りを見渡した。


両端は木々が連なっている。正面は奥に行くほど空が暗くなっており、背面の空は奥に行くほど明るくなっている。


私はこの状況を理解するのに時間がかかった。しかし、恐らく、どちらかに歩いてここから脱出しろということなのだろう。


私は悩んだ。明るい方は現実世界に、暗い方は非現実世界に繋がっているのではないだろうか?


もしそうなら、振り返って明るい方に進むべきだろう。でも、何故か気が進まなかった。


怖くても、あの子のために、暗い方へ進まなくてはいけないと思った。あの子はもっと暗い世界に閉じ込められていたのだ、それに比べれば大したことはない。


私は暗闇の広がる方へつま先を向け、歩き出した。


歩いても歩いても、両端の景色は変わらなかった。ただ、歩けば歩くほどに空の色は変化していった。


真っ暗で空虚な空間に吸い込まれていく。恐れがないわけではない。


しかし、あの女の子のために、絵の前で待つ恋人のために歩き続けた。


休憩してる暇なんてない。空腹を感じている暇なんてない。何があろうと、立ち止まりたくはない。


何日歩き続けたのだろうか。見当もつかない。そしてロータスの花は、見る見る元気を無くしていった。彼女と私の精神を結ぶ束が、日増しに緩んでいく気がした。


日に日に暗くなる世界に自分を失いそうになる。自分の出す呼吸の音さえ、今では煩わしい。しかしそれを抑える術はない。


身体中からは血が滲み出る。肉体的にも、精神的にも追い込まれた。立ち止まって反対方向に進んだり、途中で死にたくなって殺してくれと乞うこともあった。


しかしそのたびにジャスティンの言葉を、レイラの言葉を、そして自分の赤ちゃんになるはずだった女の子の顔を思い出して、更なる暗闇へと歩みを進めた。

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