再会
どれくらい経っただろうか。この時の苦痛は数時間に感じた。しかし、しばらくするとその苦痛はすっと消えた。
私は強烈な眩しさを感じながらも瞼を緩めて目を開けた。そこは、まさに夢で見た場所であった。真っ白の部屋に目の前には小さな女の子。
でも、あの時よりもはるかに現実味が増している。私はこれが夢ではないことを確信した。多分、絵の中に入ったのだ。
女の子がすすり泣く声が聞こえる。私は心配そうに声をかけた。
「大丈夫?」
すると女の子は所々つまりながら言った。
「会いたかったよ。カシカ...っていうのね、お母さん」
私は一瞬驚いたが、この子は私の心に侵入したのだ、名前を知っていてもおかしくはない。
「そうよ、あなたの名前は何て言うの?」
「まだ無いの...」
すすり泣く声は大きくなり聞き取りにくくなったが、必死に耳をすました。
「...ねぇ、一緒にお家に帰ろう?」
私は胸が痛くなった。こんな純粋そうな子を突き放さなければいけないのだ。
「ごめんね、それはできないの。だって、だって...あなたはもう死んでるの」
「死んでる...?」
「そう、あなたはもうこの世にいてはいけないの!」
女の子は震え始めた。
「そんな...ひどい。ひどいよ!何でそういうこと言うの!」
そう言うと女の子は大粒の涙を流した。同時に、部屋の床から水が湧き出てきた。
「本当にごめんね、お願いだから泣かないで!」
それでも水は収まるどころか、どんどん満ちていく。
「お願い...!!」
私は混乱した。どうすればいいんだろう。でもこのまま何もしなかったら、二人とも溺れてしまう。
私は女の子の方へ向かって、膝の高さになった水の中を強引に進んだ。そして、女の子を抱きかかえた。
「ごめんね...あ、そうだ、この花。見て、この花、あなたのために持ってきたんだよ。綺麗でしょ?」
女の子が小さく頷いたのを確認してから、私は続けた。
「...苦しかったね。でももう大丈夫だよ。私がついてるから...もう大丈夫」
その時、女の子の口が動いた。声は聞こえなかったが、「ありがとう」って言ったのが私には分かった。
そして水位が一気にあがり、二人は水に包まれた。私は女の子を離さないようにしっかり抱きしめた。
すると、その子の感情がすごい勢いで断片的に伝わってきた。とても悲しい気持ち。でも今度は彼女の言葉がはっきりと、脳に直接的に聞こえた。
「大好きだよ」




