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賭け
実は、こうして海外旅行を満喫している間も私は苦しんでいた。
シャワーを浴びたあと、髪を乾かす時にドライヤーの音に混じって「欲しい...」という声が聞こえた。
鏡に映る自分の顔が頬骨の剥き出た状態で見えた。
寝ている時も夢であの子が出てきた。
その現象は場所を限らず、マクドナルドでハンバーガーのバンズだけを食べてる時も、あの子は私の脳に直接囁いてきた。
私は寝不足になるほどに苦しめられた。このことをジャスティンに言うと、君の美貌が羨ましいんじゃないか、とのこと。否定はしない。
そして滞在から八日経った頃、ついに博物館に行く時が訪れた。
不可解な現象はこれで収まるのか、それとも悪化するのか。それが分からない状態で博物館に再び足を踏み入れるのは、一種の賭けだった。




