ペンギンのペンペン
ペンギンむらの ペンペンは おさんぽが だいすきで、
きょうも トコトコ トコトコ かいがんを あるいています。
そこへ、ふらりと カモメが いちわ、とんできました。
「あ、カモメさん、こんにちは」
ペンペンの あいさつに カモメも ニッコリ こたえます。
「やあ、こんにちは、ペンギンくん」
でも、カモメは すまなさそうに、
「ゆっくり おはなし したいけど、
ごめん、ちょっと いそぎの ようじが あるんだ」
と いって とおくへ すばやく とんでいってしまいました。
それを みて ペンペンは おもいました。
(いいなあ。あんなふうに ぼくも そらを とべたらなあ)
そのひから ペンペンは そらを とぶ れんしゅうを はじめました。
いっしょうけんめい じょそうを して みさきの さきで とびはねますが、
なんど やっても うみに おちてしまいます。
まっかに はれた おなかを さすりながら、
ペンペンは おつきさまを みあげて ためいきを つきました。
(ああ、なんで ぼくは そらを とべないんだろう?)
「では、あなたの はねを りっぱな つばさに してあげましょう」
ペンペンが ふりむくと、
きれいな おんなのひとが うしろに たっていました。
「あなたは だれですか?」
ペンペンの しつもんに おんなのひとは にこやかに こたえます。
「わたしは つきの めがみ。
あなたの ひたむきさに こころ うたれたの」
めがみさまが ペンペンを やさしく だきしめると、
あたりは きいろい ひかりに つつまれ、
ペンペンの まるくて ほそながい はねは、
ワシのように りっぱな つばさに みるみるうちに かわってゆきました。
「さあ、つばさを はばたかせて ごらんなさい」
いわれたとおりに してみると、
ペンペンは かんたんに まいあがり、
おもいのままに とびまわれました。
「ありがとう、めがみさま。
ありがとう、めがみさま」
おおぞらを かけめぐりながら、
ペンペンは なんども なんども おれいを いいました。
めがみさまも うれしそうに ながめています。
ペンペンが かいがんの うえを よどおし きもちよく とんでいたら、
やがて、むらから ペンギンなかまが ゾロゾロ あるいてきました。
みんな、そらを みあげたり しないで、
うみに もぐって さかなを とりはじめました。
(そうだ、ゆうべから なにも たべてない。
ぼくも もぐって あさゴハンを たべなきゃ)
ペンペンは あわてて うみに とびこみ、
いつものように およごうと しましたが、
どんなに いっしょうけんめい およいでも、
りっぱな つばさが じゃまで まえのように すばやくは およげません。
くるひも くるひも ペンペンは うみに もぐりましたが、
さかなは いっぴきも とれませんでした。
せなかと くっつきそうな おなかを さすりながら、
ペンペンは おつきさまを あおいで ためいきを つきました。
(ああ、ぼくは このまま しんじゃうのかな?)
「どうしたの、ペンペン?」
ペンペンが こえのほうに ちからなく くびを かたむけると、
めがみさまが ちかくに しゃがみこんでいました。
「めがみさま、さかなが とれなくて おなかが ペコペコなんです」
ペンペンが よわよわしく こたえると、
めがみさまは きのどくそうに めを ふせました。
「それは かわいそうに。
では、クチバシと ツメを するどく して、
えものを とりやすく してあげましょうか?」
でも、ペンペンは くびを かすかに よこに ふって いいました。
「いいえ、めがみさま。
どうか、ぼくの からだを もとに もどしてください」
「わかったわ。でも、いいの?
もう にどと そらは とべなくなるのよ?」
めがみさまに きかれても、
ペンペンの こころは かわりませんでした。
「ええ、かまいません。
ほんの すこしの あいだでも、
そらが とべて うれしかったです。
ありがとうございました、めがみさま」
めがみさまは だまって うなずくと、
ふせっていた ペンペンの からだを だきあげ、
あたたかい ひかりで つつみこみました。
たべるものを たべ、
やすむときに やすんだ ペンペンは、
やがて げんきを とりもどし、
ペンギンむらの なかまたちと とおくまで およいでゆけるように なりました。
グングンと ちからづよく およぐ そのうえを、
カモメが かろやかに とび、
ありあけの おつきさまが やさしく ほほえんでいました。
〔おしまい〕




