表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かつて花だった乙女たちは願いのために華麗に舞う  作者: 紫雲 橙
【毒】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/12

出会った

 【薬】と【火】がそれぞれ契約をした翌日。

 

「はあ、ボクも戦花乙女になっちゃったんだなあ......でもたしか虹花戦争には契約しないと参加できないっていうし......いっそ参加しなかったら?でも、参加しなかったら夢が叶わない。そう考えるとボクの夢を叶えたいなら契約したい子を見つけよう。だって、こうしてまた戦花乙女が生まれているのは前回誰かが夢を叶えて世界が変わったからなのだろうし......」


 そう呟きながら早朝の土手を歩くものがいた。

 人間ではない【薬】や【火】と同じ戦花乙女である。

 そしてその戦花乙女はあまり虹花戦争には興味がない。だが、叶えたい夢はある。

 そしてこの世界がすでに、前回の虹花戦争が終わった後だということを理解している。


「んあ~でもやだなあ、できれば戦いたくない。虹花戦争って最後の一人になるまで終わんないって聞いたしなあ。ボクは戦い望んでないんだけど。可愛い子を愛でていられたらそれで満たされるのに......あとはその子たちが幸せでいてくれたら十分なのになあ」


 戦いたくない。この戦花乙女の根底にある思いはそれなのだ。

 傷をつけたくないし、傷をつけさせたくない。その思いがあるからこそ、悩んでいるのだ。

 

「契約っていうのも難しいねえ。だって、その人間を巻き込むことになってしまう。ボクはそれは望まないよ......はあ、荷が重い」


 歩いていたものはため息をつきしゃがみこんだ。

 

「ど、どうされたんですか⁈」


 そんな様子を心配してか、駆け寄ってくる者がいた。

 肩まである茶色の髪を片側だけみつあみをしているトレーニング着の女。

 大丈夫ですかとは聞かない。その女は知っているからだ。大丈夫ですかと聞くと大丈夫としか返ってこないということを知っているのだ。その女は自分の経験からも分かっていた。

 十七年ほどしかない人生の中でもそういった経験をしたことがあったからだ。


「ん......早朝なのに起きてる子がいるんだねえ。君は人間?それとも戦花乙女?」

「え?人間ですよ⁈人以外に何があるんですか⁈」

「いやあこっちの話しだよ。まあいいや。ボクはちょっと自分の在り方について考えてたらきつくなってきてね。どうしようかなって悩んでたら君が来てくれたんだ」

「自分の在り方について⁈壮大ですね......良かったらお話聞かせてほしいです!あっ、結城は結城鈴子(ゆうきすずこ)っていいます!!よろしくです!」


 結城鈴子と名乗った女は戦花乙女の横に座った。

 人か人でないかなど、どっちだって関係ないと。困っているものがいるのなら話を聞いて寄り添いたいのだと女は続けて言う。


「ありがとう、優しい子に会えてボクは嬉しいよ。......本当に聞いてくれるの?」


 しゃがんでいることで目の近くにかかっていた白く少し黄色の入った髪をかき上げて結城を見る。


「はい!結城が力になることができるのならいくらでも話してください!」


 勢いよく結城は頷く。

 その反応を見て戦花乙女は話し出すのだった。


「まずねボクは人間じゃないんだ。元はお花だった。人間ってよく花を愛でる人もいればそうじゃない人もいるよね。ボクはそれは少し寂しいよ。でもね、ボクたち花だってそうなんだと思う。こうやって人の姿になったら契約する人をどうしようか選ぶ。それってなにも違わないと思うんだよね。この花いいなって思うものとこれはどうでもいいって思うもの。選ばれるものと選ばれないものの違い。その違いに苦しむ子たちがいるのは分かってる。そんな人間たちの思いに踏みにじられてきた花たちがいるのも分かってる。だから、だからなのかな......」

「だから?」

「ボクは戦いたくないんだ。彼女たちがどんな想いを持っているのか想像して苦しくて泣きそうになるから。全力で願いを叶えたいから参加することにしたんだろうなって、想像してしまうから。そんな子たちと戦いをしてまでの夢ではないんだよボクの夢は」

「あなたは優しいんですね」

 

 泣きそうな顔をしている戦花乙女の顔を結城は両手で包み込む。

 戦花乙女は戸惑いながら


「優しい?ボクが?」


 と聞く。


「はい。優しいんですよ。人のことを考えて、人の痛みを想像して分かち合おうとして自分も苦しくなって......そういうのって優しくないとできないなって思うんです!人間である結城にだって難しいなって思うことなのに、それができるあなたはすごいんです!!」

「ボクが、すごい?」

「はい!とびっきりすごい人です!あっ、人ではないんですっけ?でも、そんなのどっちだっていいですよね!温かい心があるんですから!」


 結城はにこにこと笑う。

 それは本心。全て本心なのだ。

 その本心が戦花乙女の悩みを晴らしていく。


「結城鈴子さん、ボクと......【毒】であるボクと契約してくれないかな?ボク、君のおかげでやりたいことができたんだ」

「契約?なにかよく分かりませんが結城が役に立てるのなら!」

「ありがとう。じゃあ、ボクと手を重ねて?」


 言われた通りに結城は手を重ねる。

 それを確認し戦花乙女は唱え始めた。


「『咲け、咲け、咲き乱れろ。己が信念を貫け。己が思いを捨てるな。自然に大地に影響をもたらせ。今戦え。戦華乙女【スズラン】ここに見参』」


 唱え終わると結城の手の甲には契約の証が刻まれていた。


「おお!!ヒーローの証みたいでかっこいいですね!はっ、スズランさんとお呼びした方がいいですか⁈」

「ううん、ボクのことは【毒】と呼んでほしい」

「あなたがそれがいいなら!結城のことも好きに呼んでください!」

「本来なら主と呼ぶべきだと思うけど、ボクは鈴子さんと呼びたい。ダメ、かな?」

「いえ、お友達みたいで嬉しいですよ!!」


 こうして、また一人虹花戦争へと参加することになるのであった。

 この時に見つけた【毒】の叶えたい願いはまた明らかになる。


「鈴子さんを絶対に守ってみせるよ」

「結城もあなたの力になりますよ!!」

 

 願いが明らかになるその日まで二人は決して離れることはない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ