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かつて花だった乙女たちは願いのために華麗に舞う  作者: 紫雲 橙
【火】

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4/12

愛を知るもの

「はあ、つまらないですわ......せっかく面白そうな子を見つけましたのに。それに、あの子男性といましたわ。(わたくし)の復讐したい相手には似ていませんでしたから見逃してあげましたけれど、次はないですわよ」


 女は一人歩いていた。夜の中をただ一人で、ヒールを鳴らして歩いている。

 女は【薬】と小森の前に現れた者である。

 見逃したあと、行く場もないためたださまようしかない。


「どなたかが勝手に(わたくし)のことを語っている気がしますわ......そもそも、あの子契約するのが早いのですわよ。あの子が契約などしていなければ今頃(わたくし)が愛してあげていましたのに......ああ、でもそうなっていたとしても一人で歩いてはいたかもしれませんわ。(わたくし)、力加減が苦手ですから愛しすぎてしまうかも......」


 女は目を細めて想像する。

 【薬】が小森と契約していなかったなら自分がどうしていたのかを。

 女は愛を知っている歪んだ愛を。


「歪んだ愛とは失礼ですわ。(わたくし)の知っているものも愛といっていいもの。(わたくし)はたしかにその愛し方で傷つけられた。飾られて、愛でられて飽きたら捨てるだなんて酷いことでしたわ。しかも、(わたくし)は花でしたが知っている限りではあの男は人間にも同じことをしていましたわ......けれどあの男にとってはそれが愛だったのでしょう。呪いたいし復讐もしたい。(わたくし)のことしか見えないようにしたい。それが愛ですわ。って、誰もいないのに何を言っているのかしらね?」


 女は呟く。 

 自分の愛の形、在り方を。

 酷いことをされたという思いがあっても、彼女を形作るうえで必要なもの。それが、彼女が復讐したいと思う者との記憶であった。


(わたくし)は【火】。愛を伝える炎を使う黒百合......契約者はまだいない。ただ、あの子に愛を受け入れてもらうのなら契約者を見つけなければなりませんわ。でも、そう簡単に見つかるのかしら?男は嫌ですわ......どこかにビビットくる子はいないものかしらねえ」


 【火】は歩き続ける。どこかに自分と共に歩んでくれるものはいないかと探して辺りを見渡している。

 しかし今は夜。人が少なくなっているのだ。

 そうだとしても何としても契約してくれる人物を、自分が契約したいと思える人物を探している。


「どこにいるのかしらねえ……見つかったら(わたくし)はそれを運命と呼んでみようかと思いますわ」


【火】は月を見て笑う。

 月明かりがもしかしたら導いてくれるのではないかと淡い期待を抱いているのだ。


 そして、そんな期待が本当になる時間は思っていたよりもすぐにくるのだった——

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