青の願い
「そうだな。アジサイの願いは知ってるけど、震えてるぐらいならその願いのために他人の命までをかける気はないってことなんじゃないのかい?」
「そんな、そんなことない!私は......何にも代えがたいから願うのに!」
アジサイは泣きそうな眼をして男に反論する。
代えられないものだから願うというのにその覚悟ができていないと言われたことが嫌だったのだ。
「私は、また会いたい人がいるの!会わなきゃいけない人がいるの......あの人が苦しんでしまったこの世界を変えたいの。この世界を変えて私は会いたい人に会うの!これが私の願いなのよ。それなのにそんなこと言わないで!」
アジサイの手は男を平手打ちにする寸前のところで止められた。
「そんなに叶えたい願いがあるのならなぜ今おじさんをぶつことすらできなかった?なあ、なんでだ?アジサイ、君はいつだってそうなんだよ。会ってから数日しか立っていないが、君の性格は知っているつもりだ」
「私の何を知ってるっていうのよ......私が信頼する人はあの人だけだわ。あなたに何を知られていようが関係ない」
「アジサイは普段冷静そうにしているがそんなことないんだ。君は割と感情が高ぶりやすい。そして、人を傷つけることを怖いと感じている。そりゃあ当然だろうな。君が信頼していたという人間の話を聞く限りじゃあ人にも生物にも優しかったらしいからなあ。だから君自身も人を傷つけたくないと思っている」
「なんで私のこと分かっているように話すのよ......たしかに私はあの人のその優しさが好きだったわ。だからといって傷つけたくないなんて......」
「思ってる、だろう?アジサイが恨んでいるのはこの世界だ。彼を奪ったこの世界だ。だから君は人を傷つけることに意味はないと考えているんじゃないか?」
男はアジサイの眼をまっすぐとらえている。
彼女のことはすべて分かっているとでもいうかのように言葉を連ねた。
「はあ......ほんと、嫌な人ね。なんで私の根っこを見抜くのよ。私はたしかにこの世界を恨んでいるわ。彼のことを奪った......いや、縛ったこの世界をね。だから私が願うのは、彼の解放と彼にまた出会うことよ」
「そのために必要なものが何か分かっているのか?」
「分かっているわよ。あなたはさっきから私に攻撃ができないだのなんだの言うけれど、別に戦いを勝ち抜くのは相手を傷つけなくてもできるのよ?そんなこと気にしてたってどうにもならないわ。あなたはただ私のそばにいなさい」
「おじさんが心配するまでもなかったねえ。アジサイ青、これからも頼んだよ」
「あら、珍しいわね。ちゃんと呼んだ。でも、頼まれごとはあの人のしか聞かないようにしてるのよ」
「そうかい」
本音でぶつかり合ったアジサイ青たちはこれから先へと思いをはせるのだった。




