青
「どうやらまた契約したものが現れたみたいね」
「そうか、というかなぜアジサイはそれが分かるんだ?」
「ああ、私には関知できる力があるから」
「戦花乙女としての力か」
「ええ。誰がどこにいたって見つけられるわ。それよりも、私のことはアジサイはアジサイでも青と呼びなさいと何度言えば分かるのかしら?」
「でも君は反応してくれるだろう」
「あなたがアジサイと口に出すのは私以外にいないからよ」
スズランとドクダミたちが契約者とともに歓談している同時刻。別の場所ではこんな会話が行われていた。
アジサイと呼ばれるものがスーツを着た中年ぐらいの男と話をしている。アジサイはふわふわとした水色の髪を結いながら男と話をしている。
「おじさんは君意外に知らないからねえ。にしても、そういうことが分かるならいつ戦いが始まるかも見当がつくのかい?」
「そうね、つくわよ。まあもうすぐってとこかしらね。私は細部まで分かるわけではないのよ」
「そうかい。まあ、まだならもう少しゆっくりしておこうかねえ」
「そうやってダラダラしてるからいざという時動けないのよ」
「そういう人間を契約者に選んだのは君だろう?」
「魔力を感じたから選んだだけよ。まさか、こんなにやる気ない人だとは思っていなかったわよ」
アジサイはため息をつく。
やる気のない人間と組む気はなかったのに、と。
「別におじさんだってやる気ないわけじゃないさ~その時が来ないだけ」
「お酒飲みながら言われても説得力ないわよ。というか、仕事も終わってるんだからスーツ脱いだらいいのに」
「着替えるのも面倒なものだよ」
「まったく......」
アジサイは男に振り回されているようだが、笑っている。
まったくと言いながら彼女は笑っているのだ。
「それにしても、アジサイこそ戦えるのかい?いくら願いのためとはいえ......」
「戦えるわよ。私を何だと思ってるのよ。そんなに優しくないわ。私は【水】よ?いざとなれば水攻めだってしてやるわ」
アジサイは男の質問に食い気味で答えた。
願いのためならなんだってできると。彼女はそう答えた。
「戦える、ねえ......そんな震えた声で言ってたら説得力なんてないに等しいな。まっ、おじさんはしたくないことはしなくていいと思うよ。おじさんだって別に戦いたくないしさ」
男は缶に残っていた数滴の酒を飲み干しながらそう言った。
アジサイの覚悟が決まっていないことを男は見抜いたのだ。
だからこそ説得力がないと言った。
「なんでそんなこと言うのよ。私の、私だけの大事な願い知ってるくせに」
アジサイは月が出ている空を強いまなざしで見つめている。




