お隣
「そうだ、す~ちゃんまたお隣さんに行って様子見てきてくれる?ランちゃんの歓迎会もしたいのよ~」
「はーい。じゃあご飯食べたら行ってみるね!」
「お願いねえ」
結城は母からの頼まれごとを引き受け、朝食の皿を下げて準備を済ませると【毒】と共に家を出た。
「鈴子さん、お隣とは?」
「結城が昔から仲良くしてもらってる男の子が住んでいます!時々一緒にご飯を食べているんですよ。彼は今一人なのでお母さんも心配しているんです」
結城は少し悲しそうな顔をする。
その表情を見逃さなかった【毒】は結城に質問する。
「もしかして、鈴子さんが笑顔にしたいという男の子というのが......」
「分かっちゃいましたか、そうですよ。結城がずっと、笑顔でいてほしいと願っている男の子というのが今から行く場所にいます。というか、もう着きましたね」
結城が迷うことなく呼び鈴を押す。
すると中から人が出てきた。
「おはようございま......だ、誰ですかあ?!」
結城は自分のよく知っている者が出てきたと思ったから挨拶をしようとした。
しかし、出てきたものは自分の全く知らないものだったのである。
後ずさりをして驚いている結城にそのものが声をかける。
「申し訳ありません。主は今手を離せないそうでして......代わりに出てくれと頼まれたのです」
「そ、そうなんですね?あ、あの結局誰なのでしょうか?」
疑問は消えないのか結城は再び聞く。
「えと、その......」
そのものは自分のことについて話したくないのか言い淀んでいる。
このままでは平行線だというところに
「ああ鈴子だったのか、中に入ってくれ」
家の中から男が声をかけてきた。
結城はそう聞いて家の中に入っていった。
「おじゃましまーす」
「ごめんな鈴子。ちょっと卵焼き焦がしそうだったんだ」
「いえいえ〜そーくんの卵焼き美味しいですからね!えと、あの……こちらの方は?」
「ああ昨日からの居候の……えーと、【薬】だ。鈴子こそ、その方は?」
「今日から家族の【毒】ちゃんです!」
二人は、知らないものたちのことを紹介しあった。
その紹介を聞きそのものたちは
「【毒】⁈」
「【薬】⁈」
と、互いに驚いている。
それもそのはず。その名は戦花乙女特有のものなのだから。
「ん?お知り合いでしたか⁈それはびっくりですね!」
「いや、何か別の反応な気がするが……というか鈴子、もしかしてだがこの女性、戦花乙女というものでは?」
「戦花乙女ってなんですか?あれ、でも【毒】ちゃんが一瞬言っていたような……」
結城は何も知らないのだ。
知らないふりをしているのではなく、本当に何も知らない。彼女は【毒】と契約はしたものの戦花乙女に対しての詳しい説明は受けていなかった。
「ボクが人間ではないという話はしたけれど、戦花乙女の詳しいことは言っていなかったね。ボクたち戦花乙女は願いのために戦っていて、それには属性があるんだ。【薬】、【毒】、【水】、【火】。それと【中立】もいるんだよね」
「えっ、と、ということはこの方も戦花乙女さんですか⁈」
【毒】の説明を受けて結城は状況に気がついた。
「そうですよ。改めて……私は【薬】です。小森空斗さんと契約結びました」
「ほえ〜こんな近くに【毒】ちゃんと同じ方がいたとはびっくりです!そーくんとは昨日からなんですよね?」
「はい。主との契約は昨日です」
「ほお!それなら【薬】ちゃんも一緒にうちで歓迎会をしましょう!今日は【毒】ちゃんの歓迎会をするんです!!それにそーくんを誘うために来たんですよ」
結城が笑って【薬】を見る。
昨日来たのであれば歓迎会もまとめてした方がいいとそう思ったのだ。
「で、ですが……」
「いいんじゃないか。まだ戦いは始まっていないんだろう?それなら仲良くしたっていいと思う。もちろん【毒】がいいのであればな」
「ボクは鈴子さんが楽しそうなのがいいからね。鈴子さんが君も一緒にというのであれば、それがいいよ」
「ほら、こう言ってますし……どうですか?」
結城が【薬】を見て首を傾げる。
「では、私も行かせていただきます」
「やったあ!よろしくお願いします!」
結城は笑って喜び、【薬】と握手を交わすのだった。




