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Water
私は解体をしている。眼の前に横たわっているコレ(・・)は元は人間だったモノだ。
未知のウィルスに侵食された世界では、秩序が崩壊した。法律も何も意味をなさなくなっていた。生き残る為に必要なのは純粋なる欲望だけだ…。
私は時折、懐かしい夢を見る。
夢とは脳が記憶を整理する過程で見る、断片的な記憶だと聞いた事がある。だとしたのなら私が見ている夢は私の内にある記憶が関係しているのだろう。
だが…。その記憶は本当に私の記憶なのであろうか…。私は夢の中で名前が変わっている事がある。時に九十百千二三と呼ばれ、時に十七夜月華月と呼ばれ…。
時に…。
月城瑞葉と呼ばれている。私は誰なのだろうか?
頭の中で声がする。その声も遠い記憶にある声だった。【Water】と私に囁いている。
あぁ。
水が飲みたい…。