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熱帯夜
蒸し暑い夜だった。息苦しくて目覚めたのだと思う。斜め右上に視線を向けると時計の針は深夜の二時を指している。寝汗で濡れている肉体は月明かりを艶めかしく反射していた。
どうやら私は寝ている時は口呼吸しているらしい。喉が異常な迄に渇いている。水を飲もうとベッドからキッチンへと移動しようとした時、肌に生暖かい風が触れた事に気付いた。風が触れると云う事は…。風が入る箇所が存在すると云う事である。
ソコで私の頭に疑問符が浮かんだ。
寝る前に鍵は閉めていたのだろうか?
私が住んでいるのはマンションの一階角部屋である。キッチン、トイレ、風呂場。他に二部屋。寝惚けた脳が拾うのは、水が滴る音だった。ピチョンピチョンと鼓膜を刺激している。
【水が飲みたい】
そんな衝動が肉体を支配した。