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否定と安堵

 皆さまお疲れ様です^^ この小説に目を通してくれてありがとうございます!暇な時に読んでみてください!


 嫌な声に反射的に背後にいる、何かに振り返えった。そこにいたのは老人だ、その風貌はやけに不気味で低い身長に、白髭を腰までのばし、顔の原型も、確認できない程、白い毛で覆われていいる。片手には斧、使いこされた茶色の防具。


 不気味だ。ただただ不気味で怖く感じる。


 


「す…すいませんでした。もう何もしません……次何かやったら殺してもらって構わない!!!だから……」


「何言っとるんじゃ?お前さんに殺意は全くないんじゃが……まぁ、なんじゃ、本気でやろうとしとったやつは、捌いといたぞ。」


「え?」


 そんな言葉に戸惑いを隠せず、前を見渡すと、平原の真ん中に何かが横たわっていた、何か、いや、獣の死骸だった。


「あれは……」


「そうじゃ、そいつじゃ」



 小さくそこに引き裂かれた、獣の下半身というのだろうか。それが平原に倒れている。


 胸に残る違和感。

 それはこの獣に関係しているようなのだが、肝心なものは何も思い出せない。

 

 下半身だけが残された獣を見て思うのは、

 吐き気だけだ、違和感や恐怖、自分の過去に関係しているのが、こいつとは。

 その事を思うと、なんとも言えない気持ち悪さが襲ってくる。


「こいつが…さっきの…う…ぉ」

 


「ほう。吐きよったか。こんなことは初めてじゃ無いはずじゃがな?」


「ぶぉ。いや。初めてです。て言うか、ここどこかもわからないし、あいつの名前すら、分からない。」


「まぁそう焦るもんじゃねぇんじゃねぇか。じゃが、そうじゃったか、記憶はないんじゃな?」


「……ぉぇ…はい…ないです」


 まだ、残っている気持ち悪さをなんとか抑えながら、そう答えた。そんな今にも倒れてしまいたい気分のまま、老人の言葉の意味がおかしい事に頭を巡らせる。

 

 そうだったか。とはなんなのだろう。

 この老人は自分のこと知っているのか。

 まるで、知ってるかのような口ぶりだった。初めてじゃない、と言う言葉も妙に引っかかる。初対面でそんなことを言うだろうか。まるで、心配してるそぶりもない


「あの…何か知ってるんですか……?俺は何にもおもいだせなくて、知ってるなら話してほしいです。」


 気持ち悪さと同時に、この老人の得体の知れなさに焦りがある。いったいどういう対応をすれば良いのか、斧を持ってる人間が、少し前に何かの上半身を斬り飛ばす所業を平気でやってのけた、そんな人間に、対話なんてしていて良いのか。

 質問をする前に考えなくては意味がないのだが……だとしても、どうすれば良いのか。


 そんな事を考えていたら、気が緩んだのか


 


「ふむ。」


「っ……」


「なんじゃ。何を怯えとるんじゃ…」


 「情けないのぉ…」と、心底呆れたようなトーンで、しっかりしろと、いってくる。

 そんなことは、この際どうでもいい。

 俺が情けないだとか、そんなことは分かりきってること……なのか?

 

 どういうことだ?

 なんで俺は自分のことを知ってるように考えるんだ?


 なんでだ。なんで否定的に捉えるのに安心感があるのか。それが、正しいのか。


 疑問が尽きない。情けないと言われた時の濁ったような、羞恥心。なんでそんなものを感じるのか。


「何を考えてボーッとしとるか知らんが、お前さんはここに連れて来られたんじゃよ。簡単に言えばな。」


「は……?それってどういう……」


「細かいことはわしもしらなくてな。力になれんが……」


「え….!」


 何も知らないんですか?そんなふうに言いそうになる自分を必死に引き留めた。この老人が、自分を助けてくれる保障は最初からないからだ。

 少なくとも武器を持った人間に信用は置けない。

 俺は本当に危ない奴だ。何故この老人に期待をしていたのだろうか。


 助けてくれるなんて。


 そう思うと次はこの先どうすればいいのか、先の見えなさに、また怖さが、滲み出てくる。


「そんな顔をするな。何も見捨てたりはしないんじゃからな。それがわしの仕事なんじゃよ」


「は、はい!」



 そう言われ一瞬安心感が広がっていくのを、抑えながら、不信感を途切れさせないように思考を巡らせた。

 なんで、俺はこんなバカなんだ。何に安心してるのか。すぐに揺れ動く感情に嫌気が刺す。だが、今はそんなのはどうだって良い。


それより、考えることがある。

 

 あの老人は俺をどうすることが仕事なのか、疑問は絶えないが、はたして聞いていいのだろうか。


 でも、このままじゃ埒が明かない。

 このまま何かをするのは、恐怖しかないが、色々聞いてみるしかできることがない。というか、それ以外俺には思いつかない。


「見捨てないことが仕事なんですか…?」


「お前さんも色々聞きたい事があるんじゃろうが、わしから話せることは限られとってなお前さんに教えられることはあまりないんじゃよ。」


 背後にある恐怖を押し殺し、出た言葉は弱々しく保守的な言葉だ。その言葉は特に聞きたいことでもなかった。

 何故こんなにも自分が、情けなく感じるのか。

 

 また自省だ。老人の話が頭に全く入っていない。


 また自省に入る前に老人とコミニケーションを続けなくてはいけない。ただでさえ、怖いのに聞いてなかったですなんていえない。なんて言葉を返せばいいのだろうか。

 それを考える時間はとても苦痛だ。締め付けられるような痛みが胸を襲う。

 もう全てから抜け出したい。


 刹那の心の変化に、追いつけないでいる。

 楽になりたい。そう思いながら、地面を見つめる。


 太陽にあたって黄緑色に光る小さなススキが苦痛に一瞬だけの安らぎをくれる。


 それは安らぎとともに頭の中の思考を静寂に戻してくれる。


 ああ、本当にきれ…じゃが、不憫すぎる________


 え?


 幼い頃の体に戻され記憶もないんじゃ分岐どころか生きていけんじゃろ________


 死なれては困る________

 


「ん?」


「どうしたんじゃ?また、ボーッとしとったのー。大丈夫か?」


 え?は?


 頭の中に文字がながれた。なんだ今の?


 今のは自分の思考ではない。


 知らない文字だった。


 文字通り文字が脳内に映し出されたのだ。


 知らない文字なはずなのに文字と認識し意味が分かったんだ。


「ひどい顔じゃな……なにがあったんじゃ、といっても何にも変化ないんじゃが」


「……えっと、あの。頭に文字が流れたんです。これってなんですか…」


「文字?そら、お前さん、流れてくることもあるじゃろ、頭を使っておったら。」


「知らない文字だったんですよ!見たことない字だったのに意味が分かったんです…よ…」


 自分で言ってて、呆れてくる。なんだそれ。バカバカしい。そんなのは妄想かもしれないだろう、なんでそんな可能性まで考えず口にするのか。


 きっと何かの妄想だ。そんなこともある。


 よな? 


 腑に落ちない。


 普通に考えて自分の知らない文字が意図せず、頭に流れてくるだろうか。


「それは、どんな感じの文字じゃった?」


 先程の態度を変え、少し真剣な眼差しに変化したのが空気で感じとれる。

 やっぱり何かあるんだろうな。


「文字自体はごめんなさい。覚えていませんが、円形が特徴的な文字でした。真ん中に線が、入ったような形です。」


「……文字の意味が分かると言ったな、どいうい内容じゃったんじゃ?」


 俺は少し戸惑いながら、記憶を散策した。

 少し前の記憶で鮮明に覚えてはいるが、一文一句覚えてる訳じゃない。

 こう言う場合どうするのが正解なのか。


「えっと文字の内容は覚えているのですが、流れてきた文章は覚えていません。内容だけで、大丈夫ですかね…」


「それで良い、はよ言わんかい」


「は、はい…す、すいません、えっと、子供についての文章のようでした。子供に戻されて、不憫…かな?それに記憶も失っている状態で分岐どころじゃない、みたいな感じで、死なれては困るとかそんな事が頭に流れてきました。」


「そうか……お前さん……いきなりしよった。驚いた……」


 驚いた。それは俺もだ。雰囲気が変わりすぎてる、言葉がいきなり弱々しくなった。それに武術の知識はゼロだが、今の老人は隙だらけなのが素人でもわかる。今までどこを攻めてもまるで、意に返さなそうな、柔軟さがあったのに、今はえらく疲れた爺さんに成り果ててる。動悸じゃあるまいし。


「どうしたんですか?今にも倒れそうですが、病気だったんですか?」


「そうじゃあない。お前さんに驚いての、大丈夫じゃよ……それで文字は流れたかの?」


「いえ、流れてませんが……」


「不完全じゃな」


「っ…は…何がですか!?」


 この人は突然何を言い出すのだろうか。

 あまり、不安を煽らないで欲しい。

 不完全ってなんなんだよ。


 ただでさえ、お先真っ暗なのに、不完全って……俺どうすればいいんだ。


「そう怯えるでない。試したが、まだ、使いこなせてないな。別に不完全じゃからって何も起きる訳じゃないから安心せえ。」


「まぁ」と付け加え、変わらない余裕のある態度で、「何がとは教えられんのじゃがな」なんて呑気に言い出す始末。


 流石に俺も怒りが募る、何も進んでない

 この老人と話して前に進めると思ったら、肝心な事は何も言わずに、何かを匂わせて終わりだ。なんとまぁ、人をバカにできたもんだ。


「若いのーお前さんは、ご立腹なのはよーく分かっとるが、そうはいかん時があるもんなんじゃよ。まぁ、そのうち分かるもんさ」


 そう会話を締めるように言い放つ、かなり無理矢理終わらせようしてる、俺は納得いっていないし肝心な事は教えてもらっていない。切り上げる訳にはいかない。


 だが、どうすれば。


 考える時間がもったいなく感じる、早くしないと行ってしまう。


「お話の時間は、切り上げた方が良さそうじゃぞ?お前さん。ああ、そうじゃ、一応言っとくと、お前さんの身体は子供じゃぞ。」


「は?へ?」


 一体何のことだ。何の話だ。

 俺が子供…からだが?


 そんな訳……


 老人の背丈と一緒だ。いや、それよりも、

 てか、見上げてたじゃないか。


 この老人は俺からみても、かなり小さい小学生4年生くらいの身長だ。それよりも小さいだと、まさか、ある可能性が頭によぎった、子供の身体に戻されたって、俺のことか。記憶がないと言うことも当てはまる。


「ちょっと待てよ。なんで気づかなかったんだよ。誰が俺の頭に流し込んできたんだ。そいつが何か知ってるはずだ。」


「そこまでじゃよ。少しやばくなってきた。」


「え?」


 老人の言葉は静かでそのなかに焦りがあった。その言葉を聞き老人の向いてる方向に目を向けた。


「なんで、平原が動いてるんだ?平原…じゃない……?」


 植物状の生物の大群だった。


「こりゃ、随分とまた、偏ったな。こんなに繁殖能力は無かったはず……逃げるぞ。」


 黒い煙の出どころは火だった、平原の地平線は炎で覆われている。ここから見える地平線は全部街だったんだ。それが全て火の海と化している、黒い煙がその恐ろしさを空に映している、まるで、逃げる場所などないと言うように。


 ヤバい



「撤退じゃな。わしから離れるな、出来るだけリラックスするんじゃ、でないと飛び難いんでの。」


 老人はそう言うと同時、ポケットから、鉛筆のような形の物を取り出し、スイッチを押した。


 その瞬間あたりは霧に包まれた







 

 霧に囲まれ、一体どれほど時間が経ったのか、途切れていた意識が戻っていく。


 ここはどこだろうか。曖昧な意識の中そんな思考が過ぎる。


 あの老人は何処にいるのだろう。

 早く探すべきなのだろうか……


 今は良いか


 今目の前に映る光景に心が静かになるのが分かる。全く知らない場所なのに、何故こうも安心できるのだろうか。しばらく今のままでいたい


 今は何も考えたくない。


 


 そこはとても幻想的な場所だった。


 広い空間に、長テーブルと椅子が連なっていて、長方形の窓から、景色が見られる形式だ。

 その窓は一つの壁として作用していた、そのためか、外の景色は持て余すことなく全体が映される。


 その景色の木々が太陽の光に葉を伸ばし、木漏れ日が、内装を幻想的な空間に仕立て上げていた。


 本当に綺麗だ、まるで全てが理想的だ。

 こんな所で生涯を終えたい。軽はずみな結論だが、今は本気でそう思う。

 

 太陽の光がちょうど良い明るさで薄明光線のように部屋中を照らしている。


 あまりにも理想的なその穏やかさに意識が戻っても、立ちっぱなし状態が続いた。

 このままではいけない。そんな声もでるが、判断を心に委ねてしまう。


 だが、このままではいけないのは分かっている。だけど、少しあと少しだけ……


 心に任せ穏やかな心に身を委ねていたが、視界に何か影のようなものがある。元々あったのは気づいていたのだが、思考に入れていなかった。あれはなんだろう。よく見てみると、


「ん…?」


 右端の視界に何かの影が微かに動いた。


「マジかよ…」


 焦りと、一瞬の極度の緊張が心臓に負担をかける。そのまま右を向いてさっきの獣だったら?だったらなぜいままで放置してたんだ?じゃ、違うのか?いやそれじゃ結論はでない。何か理由があるかもしれない。振り向いたら死ぬのだろうか?


 でも、振り向かなければいけない気がする。俺はいつまで、メソメソしているのか、


 いやそんなことより早く逃げるべきじゃないのか?


 でも……


 埒が明かない。振り向きたいなら振り向けよ。おれ。意味ないと思うけどな。

 訳の分からない考えが浮かぶのは何度目だろうか。なぜ切迫してる状況で、こんな平和ボケした思考がよぎるのか、それに従う俺も、本当にバカだ。


 恐怖と、アホな勢いで、心臓に痛みをともないながらその方向に身体ごと向ける。


 その時間はどんな一瞬よりも長く感じる。

 心臓の痛みは重い、その痛みも


 それと同時だった。


「大丈夫です 私は彼らではありません。」


「……」


 俺はその言葉の意味を理解するのに、数秒ようした。だが、いきなり心から信じるわけには行かない。思考ではそう思いながら、心には安堵が広がっていく。安心してる場合じゃないのは分かっているのに。


 

 「ようやく貴方に会えました!」


 状況を認識しながら、頭の中は自省でいっぱいだ、他に考なくてはいけない状況なに、警戒心を高めなくてはいなけないのに、状況どころが自分を律するのに精一杯になる。

 それなのに集中力がまばらだ。なんて呑気なのか。


「はぁ……」


 耐えきれず小さくため息がでる。なんて呑気なのか。そんな自分に。


 ようやくに自分に会えたなんて。


 これ以上なにも言わないで欲しい。これ以上自分に失望したくはない。


 見知らぬ。信用もできない人物に、言われて、なぜこうも嬉しくなるのか。



 そいつは連なる長テーブルに座り、そう俺に微笑みかけたのだった。


 お読み下さり本当にありがとうございます^^

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