繰り返しの人生 終わりと再生 2
二話と一緒に投稿致します。お楽しみください。
「ほらな、お前は何も言い返せないだろ?」
そもそも、俺は、それを自分でやってたんだ。
沸点に達していた怒りがいつの間にか冷めていた、冷めていたというより、冷めさせられた。
目が回るほどの目まぐるしい思考に、怒りが冷めさせられた。
恐ろしく冷静で、高速の思考一つ一つに、寒気を覚え、胸の痛みが走った。その末。
そこででた結論は、笑えるほどしょうもない事だった。
そうかい
ならもうどうでもいいじゃないか
全てにもう諦めがついたんだ。
「どうせ俺が悪かったんだ…なら、もういい…」
自分が悪かった、そう言う結論が、今も頭に湧き上がり続ける兄への罵倒を虚無感に変える
「お前が全て悪い……おい?」
兄の胸ぐらに力を入れていた腕を解き、そのまま、自分の寝室へ足を動かせる。
兄が自分が悪いんじゃないと言いかけていたのが分かる。そんな言葉、もはや、自分には通じない。
そうか、俺が悪かったのか
自分が悪いのか、この言葉がまるで自分に呪いのように染み込んだ。
もう、全てが、自分が悪いように感じる
なら、もういいじゃないか………
寒い部屋。
冷たい床。
全てが今はどうでもいい。
明日は仕事だ、早く寝なきゃ、クソ上司を怒らせたんだ。明日は苦労するだろうな。
とりあえず仕事して人生を終えよう。
「……今日は寝るわ。悪かったな」
「ちょっと待てよ!まだ、お前納得してねぇだろ?話はこっから……」
兄が弟に対し、彼自身が言っていた言葉を伝えようとしていたのだが。
兄はそれをやめた。
何故か。それは
兄が呼び止めた弟の表情に、昔の、いや、自分を投影したからだ。
弟は、呼び止められた瞬間兄に視線を絡せ、固まっていた表情を変えた。
そして
「いや!悪かったな。どこも、怪我してないよな?」
「……」
「話なら、悪い!ちょっと今日は無理だ。だいぶ、今のでダメージデカくてさ。色々整理必要なんだ。まぁ、だから明日頼む!今日は休むな!おつかれ!」
「……」
わざとなのがわかりやすい演技にカチャと小さな音を立てて閉じられる扉に、ため息をつかざるを得ない。
「ちょっとヤバいか……」
「いきなり、すぎたかな。最初からイライラしてたんもんな……はぁ…」
やっちまっか。そんな言葉が頭に浮かんで消えない。
あまりに唐突すぎたか。
あんなに、イライラしてる弟は久しぶりだった。あちら側の世界の弟ではない弟。それは同一人物でも、違う世界の弟なのだから、性質が違うのは当たり前の事だ。それを知っていて、上手く事を運ばなかった自分が悪い。
今回も自分に非があっただろう。
弟に「弟」を、合わせずぎたか。
今の弟は、また違う人間なんだ。
どうやら、自分は「弟」に甘えすぎてたみたいだ。
「考えてもしょうがないか。別に話す機会なんて、いくらでもある。整理がついたらでいいかね……」
ここでも、彼には甘えが抜けなかった。
弟という人の全てを理解してはいなかった、できない、故に後に彼に訪れる悲劇は、彼自身が起こしてまうことになる。
時は経過し、兄の変貌から、一ヶ月程たった頃。
相変わらずというもの、兄の変貌は変わらず続いていた。
兄は元通りの態度で、元通りの性格に生まれ変わっていた。
つまり、ニートではなくなった。
変化はそれだけにとどまらず、兄の周りの環境すら驚くほど変わっていく。
ニートの時の兄には考えられないほどの知識、行動力、努力。
全てをとっても、比較にならないほど。
俺は負けていた。
だが、どうでも良い。
あれ以来、俺にある全てのものが、どうでも良くなった。
兄はあの歳で、ビジネスをやり始めていた。
それで、成功でも、するつもりかと聞けば、成功するのが、目的じゃないらしい。
一人で稼げる手段を設けて、あとは楽に暮らすのが、目的らしい。
兄いわく、成功は別にいらない。してはほしいけど、そこまで、富が欲し訳じゃない。
ただ、働き詰めでの人生は嫌なだけだから、そこそこ入るようになれば良い。と言っていた。
何をしてるのかと聞けば、ウェブで、自分のホームページを作り、米を売るビジネスをやるらしい。理由は農家をやってみたかったそうだ
どうやってこれを短期間でしたのか聞くと、人づてで、陸稲に適しているが、場所が、太陽に当たりにくく、害虫まみれになっている土地をもらったそうだ。
そこそこ、広い土地で、自分には丁度いい土地だから、貰い受けんたんだと。
探すのに苦労したとか、二週間で、そんなものを見つけて、何の苦労したのか。
そんな都合のいい話あるのか。
しかし、あいつが、一日やる事を決めて努力していたのも事実、自分の限界を越えずに、頭を使って情報集めていた。しまいには電話がなりっぱなしな時もあった。
それで、いま、米作りの準備を始めてるそうだ。ビジネスが安定するまで、それまで、ここにいさせてくれと、満足気に、俺に笑いかけてきやがったお前にはもう苦労させないってそう笑いながら、言ってきた。
「ははっ」
作業の最中、自分でも無様すぎて、空笑いをしてしまう。
あいつに、何があったのかは知らないが、ニートを超えて、新しくビジネスを始めるとは。
「おい!!指!!切れますよ!!」
「おっと」
「おっとじゃないでしょ!!!気をつけてよもっとぉ!!」
クソが何かを言っているが、何を言ってるのか、もう何も考えられない。
もうどうでもいい。
「君だけの問題じゃないんだよ?誰の責任になると思ってる?うちの会社だよ。もっと責任感もって仕事してよ」
「すいませんでした。」
「……」
とりあえず謝っておけばなんとかなるだろう。自分でも、悪いと思うが、もう、そう思う事しかできなかった。でも、大丈夫だろうと思っていた、その時
「クビだ。もう来なくていい」
少しの間、頭が空っぽになった。
今クビって言ったのか。
「はっきり言って、君には人格すら褒められたものじゃないし、仕事の責任感も持ち合わせていない。作業はともかく、そんな自覚すらないような人間だ。そんな人間はうちにはいらない。」
「そうですか」
「……」
何故だろうか、笑みが止まらない。
全て知ってるような口を利きやがって。
知ったような……?このクソの方が、まるで俺をわかっているじゃないか。
おかしくないのに笑ってしまう。
「ふふふふふ……すいまふふ…せん…はふふふ」
「……」
上司は無言のまま、俺の前を離れていった、平然を保ったままの表情をしようとしてるがコイツはダメだと心底見下している表情は隠し切れていない。
そうして、まだ、昼手前の午前中に帰路に立つことになってしまった。
とうとうクビか、解放感と喪失感が織り混ざった感覚だ。だけど、どうでもいい。そんなことをボーっと考えてたら、いつもの公園から兄の声が聞こえてきた。
「俺ニートでどうしようもないけどさ、あいつより、全然才能ないけど、やってみるよ。ニートになって養ってもらってた俺なんかの声聞きたくないと思うけど、頑張ってみる。家族は大事にしたいんだ。だから伝えとくよ。父さん。俺がしてきた事は、許せない事がいっぱいある。だけど、俺はずっと……」
「はぁ…… 切られちゃったか。」
「俺よりも能力的に劣り、家族の信頼にはヒビが入り、それで、ニートになり、それを克服しようと自らの過去の犯してきた小さくも大きな罪。そいつを抱えて生きている。」
ますますどうでも良く感じる。
俺の存在、人生全てが否定されたように、感じる。
否定してきたのは自分のはずなのに。
いや、もういいんだ。
否定されたんならそれでいいんだ。もういい。
そんな兄がいる公園から、アパートへと向かう。帰るんだ。
なんだかポッカリ穴が空いたような感覚だ、外の寒さに心が同調するような感覚を覚える。
家に帰りずっと、ぼーっとしていた。
殆ど飾りで置いてるボロボロのソファーに座り、何日も何日も、そこでぼーっとしていた。とりあえず必要な用事以外の時は座ってぼーっとしていた。 兄の顔すら見たくはなかったが、避ける気力も、俺にはない。なくていい。
そう言う生活を続けていると当然の如く兄から聞かれるが。
「どうした?最近仕事いってねぇよな?電話しなくて、大丈夫か?」
「いや。俺……」
「……そうか、まぁ、いいけど。あ!ごめん俺仕事あるから!行くわ。おっと鬱病の薬飲んだっけ?おれ?」
凄いな。鬱病に、なりながらでも、少しずつ、前向いてやがる。ニートからだ。凄いよまったく。
何だか、よく分からなくなってくるな。
俺はなんで、生きてんだろうか。
「……」
「なんだよ?元気ねぇな?あ……電話だ。ごめんちょっとでるな!お、サヤさん?どもども!僕の書いた小説はまとめれた?まだ、書いてた最中だけど。あ!ありがとうございます!」
どうやら、兄は最近気分が沈んでいた時期があったらしく、その時は外の仕事とかは休み、家の中で小説を書いていたらしい。
内容は頭でもう出来上がってたみたいだ。
人との関わり合いも増えてきた。対人関係がかなり億劫だったくせにこれだ。
電話も普通に出てやがる。
それに客も増え、俺は別の部屋で待機させられることも多くなっていた。
それに比べ自分はどうなのか、を考える事もなくはないが、正直言って一体何を頑張れば良いのか分からないし、これ以上何をする必要があるのだろうか、随分前にも話したが、俺は仕事をしたんだ。必死の思いで、怖くて不安だった。
でも、今よりはマシになるはずだと、そう思っていたのに。
辛い毎日だが働いてるだけ自分はマシだとみてみろあのニートを、ネットで随分とだらしない奴がいる。こいつよりかはマシだろ、俺は頑張ってるはずだ、こんな辛いのに頑張ってるんだ。
何もしてない?
なんの努力もしてないなら報われないのも当然?努力もしていないのにそれのどこが頑張っているのか。
そんな声が聞こえて来る事もあった。
もっともな意見だが、そんな言葉で動けるようになんてなれるわけがない。
というより、とうに知っているのだ。
何千回、いや、何万回考えただろうか。
何回やって、失敗したと思ってるのか、
何回相談しては、上司のような態度を取られただろうか。
「お前には、責任能力も足りてないし、何しろ、簡単な作業もできてないじゃない?やってみても良いけど、絶対に上手くはいかんよ。」
「結果もみえてないなら、その時点で終わってるでしょ。」
「結果を当ててやろうか?お前はきっと中途半端で終わる。今の状態にどっちにしろなる。」
そして今だ、見事に言い当ててるよ。
さすが、上司なだけある。
俺のことをすんなり、当ててきやがった、その末路でさえな。確かに自分で始めた事は全て半端で終わった。
特に際立ったのは、物事の粗末さだ。
ここに、責任能力の低さが表れていたとは笑い話にもならない。他にも注意されていた事が次々に起こりやがった。
これ以上何ができると言うのか、親にも助けを求めたら、結果を当ててやろうかと、聞く耳も持たない。
そりゃそうだ。俺は最低な人間認定されてるからな。
あの学校の件と言い、他にも、言えない事をやってきてる人間だ。
親に対してまでも、申し訳ない事をしてきた、そんな息子に今更協力なんてしてくれる訳がない、できる訳がないんだ。頼む俺もどうかしてる。
ニートを卒業して仕事を始める時なんて、お前が仕事か、茨の道だが、達者でな。とか応援の言葉すら皆無だった。
それだけ信用がなかったのだ。
そうだ。当然の報いだ。
だが、だ。
それが、動かない理由になる訳じゃない事も分かっている。それを、特に、感じさせたのが、兄や弟と言う存在だ。
あいつらも、かなり、親に迷惑をかけてきているし、俺よりかは仕事だってできることはあまりないだろうし、何回もやめたりを繰り返してきた。
人に言われる事もかなりあっただろう。
俺とは違う苦しみをかかえていただろう。
それにも、関わらず、何かを初めて、薬持ちになりながらも、決して止まることはなかった。ペースは遅くても、自分なりに努力していた。
そんな、弟だ、兄だ。ニートになって堕ちるのも、許されるだろう
それに比べちゃ、俺なんてマシなんだろうし、精神病で薬もちになんてなってる訳じゃない。
なら、あいつらよりかは全然マシじゃないか
でも、動けなかったんだ。
動けないんだ。
全然マシなのだ、あいつらと比べても、俺はまだ、動けたはずだ。
まだまだ、俺は苦しいと言う領域まで、達してなかったんだ。
そして、いままで、この状況を作ってきたのは俺か。俺のせいなのか。全ておれの責任なのか。少し努力すれば、俺は、また違う所にいれたのか。
誰に何かを言われても、あいつよりかは苦しくない。マシだ。
嫌な上司も、俺なんかより責任が重い。
かなりの数の社員や労働者を管理して、
上司より上の立場の奴に、嫌でも媚び売って、精神を削ってるわけだ。上司は上司なりのプライドも立場もあるだろう。
それに比べ俺は何の責任を、しょっているのか、日々が辛い、苦しい、とは言うが、俺は何が辛かったのか、上司や兄弟と比べるのが辛いのかよ。小さな事がきっかけで自己嫌悪で、自爆かよ。
何が苦しいのか、何が辛いのか、比べものにならないじゃないか。
それで、次は俺自身が何もなくなるのか。
自分で、作り上げた結果を、投げ捨てるように、この45年間、俺は俺自身で否定をしてたのか。
考えてるだけで、クソみたい人生だ。
なんなんだ、これは。
どうせ俺が悪いんだよ。そうだよ。
それ以上でも、それ以下でもない。
「もういいだろ。」
そんな事を考えてボーッとしていたら、朝の8時だった、時計の針が、もう15時を切っていた。
薄い太陽の光が、しめきってるはずのカーテンの隙間から部屋を明るくする。時間の経過とはこれほどまでに早いのか。人生で何度も感じた思考が湧き上がる。また、しょうもなく、意味のない時間が過ぎる。それと合わさって、諦めかけてたはずの心に暗い影を作る。胸が痛い、まるで締め付けられるような感覚だ。もう自分には、なんの気力もないはずなのに、心を痛めつけるのだけはご健全だ。
何だかもう疲れた。体は動かしていないのにもかかわらず、体が疲れた感覚を覚える。 あとは眠い、瞼を閉じればすぐ寝れそうだ。
そう思ってたら余計に眠くなってきた。
ちょっと寝ようかな。
そうしてソファに座ったまま、体を背もたれにあずけて、目を閉じた。
薄れゆく意識の中で、無の心地よい感覚を最後にそのまま、暗い谷へと完全に意識を無くした。
眠る事は、心をリセットするのと同時に人の心を歪ませる。この事を何と呼ぶのだろうか。
人という存在は、些細な事で、揺さぶられる存在だと言う事を彼は再度認識することになる。
そうして静かな眠りへと入っていった
深い眠りの中、目覚めたのはいつだったか。そこは、とても綺麗な平原だった。
とてもとても、綺麗だ。
ああ、なんて美しいのだろうか。
すぐ目の前に大きくたたずむ平原。
まるで、どこまでもどこまでも続いてるように思わせる幻想的な青い空、その壮大さをさらに思わせる。大きく真っ白な雲。
だが、その美しさを心の底から感じられるのは、きっと、身近に、側に、ずっといてくれる存在があるからだろう。
その「存在」が、近づいてくるのが分かる平原の真ん中からこちらにどんどん近づいてくる。嬉しいはずなのに、苦しい、胸が張り裂けそうな痛みが胸に、胸いっぱいに……
「会いたかったな……最後に……」
あ……え?
あまりの唐突さに、眠ってるはずの思考が一瞬脳裏に浮かんだのが分かる。
何だ……これ……
今の心境を言葉で表すなら、一言では語れない。辛い、苦しい、驚き。
この全てを表す言葉があるなら、教えてほしい。
とにかく最悪な気分だ。
何なんだ。
何が起きてるのか分からないのに辛い。
苦しい。何でだ。
そんな自分の状態など、まるで気にもしていないように、景色の場面から、「存在」の画面から、とある薄暗い平原に変わる。
そこは何故か既に知っている、雰囲気を覚えている。気持ち悪い。
そこは燃えた街、この世の終わりを思わせる、黒い煙とドス黒い雲。その景色を少し離れた丘の上で眺めている。
ふと、眺めていて少しの間止まっていた思考に気づくのと同時、また場面が切り替わった。次は、燃え盛る街の中だ、今さっきと、同じで人の視点だ。
燃え盛る街の中を歩いているようだ。いや、何かから逃げている。そういう感じだ。前方から、左の遠方にビッグベンのような、高い時計台がカミナリに打たれ、崩れていくそれが、自分自身を表してるように感じたのは、気のせいだろうか。嫌な予感がする。それと、あのノロノロと動く影はなんなのか。とても不安だ。
足は重くろくにいうことがきかないのがわかる。もうすでに、何時間も足っては歩いての、連続だったのも何故か分かる。
おそらく、この人物が、子供だという事も知っている。
何から逃げているのだろうか。
逃げ回ってはいるのだが、街からはでられないのと、絶対に出るわけにはいかない、
だから、同じ場所に逃げ、また戻ってくるの繰り返しだった。
何故同じところに戻るのかは、自分の家に答えがあった。
この家の中には、両親と妹がおり、中には小型の緑色の獣がいる。
最初街で見かけた時は可愛いなと思っていたのに、時間が経てばこのありさまだ。
僕は何か悪いことをしたのか。
なんで、僕のパパ、ママや、泣いてる妹を食べるのか。いやだよ。
いやだよ。はやく、はやくしなきゃ。
逃げてる場合じゃない。
今まで聞こえてた、妹のききたくない泣き声が止んだ。少し安心したけど、そんなのはすぐに吹き飛んだ。焦る気持ちがどんどん、出てくる。胸が痛い。
「ジュルッ……」
気づいたら、あったかいものが頬に伝った。泣いちゃってた。泣くなって、パパに、言われてたのを思い出した。
パパに怒られたあの時が、怒られるのは嫌なのに。
「パパ……ぐすッ……ママ…かえってきてよ…」
もう、なかないから。
もうにどとなかないから妹といっしょに帰ってきてよ。おねがいだよ。かみさま。
それだけだからおねがい。
「…うぅッ…」
むねがいたい。
でも、ここでまつのはもっといやだ。
はやくあいたい。
パパママも、妹もいきてるよね。
つたつたと、逃げては遠くにいって、様子を見ていた、幼い子供は、物凄い不安に誘導されたまま家の中に入った。
家に入り、小さなリビングに大きな影が、威圧感を放ちながらのそりと、寝そべっていた。
小さかったはずの獣は、一際でかくなっていた………
大きなデカいやつは、小さいのから大きくなった。でも、ボクをみてない。
こわいよ。かくれてるけど、みつかったらどうしよう。パパがたすけくれるのかな。
でも、パパがみえない。
このいえはへやが一つだけなのに、どこいったのかな。
「……う……」
泣きそうなのを我慢していたが、幼さ故の過ちだったか。
こえがでちゃった。
ばれてないかな。
いま家のドアのすぐちかくにある、みんなが、ごはんをたべるへやの、かべにかくれてる、だけど、なかがくらくてみえにくい。
あいつは、なにしてるのかな。
いままでは、大きくてみつけやすかったのに、また、こわくなってくる。ずっとこわいよ。
でも、なんで、パパやママがいないんだろう。
「へやそこしかないよ?……」
どこかにかくれてるのかな。それとも逃げれたのかな。
そうだ。きっとそうだ。
でも、ほんとなのかな。
おおきいやつがいないってことはパパが何とかしてくれたのかな。
あれ?パパとママのきてたふくがある。
さっききてたふくだ。おきたとき、きてたふくだ。
なんで、ふくがおちてるのかな。
妹のもだ。なんで。
「……え……」
なんだか、もっと不安になってきた。
どいうこと。
なんでふくだけなの。
先ほどの不安とは、比較にならない程の辛さだったのだろう。耐えきれなかった、その服の方へ行かずにはいられなかった。
だが、誰が責めれるだろう。
だれが、小さな子に、我慢しろなんていえるだろうか。冷静になれと。
まだ、自分が幼い頃、そんなことができただろうか。間違いなく無理だっただろう。
他にいい選択があろうが、最善を選ぶことは不可能だった。
「パパ?ママ?ユリ?だいじょうぶ?」
リビングに足を踏み入れた瞬間に、待ち侘びたとばかりに、この幼い子を緑の獣は自らの獲物とばかりに後ろから。
「パパぁ!!ママぁ!!なにこれぇ!!」
影から巧みに自分の腹の下に覆いかぶせる
そのなかからは無数の根のようなものが、その子に襲い掛かる。
肉体だけは残さずに、服だけがその子の、生きていた証。それ以上は獣の栄養として、蓄えられる。
「ゆ……り……」
ぱぱ。まま。ねむいよ。
はやくでなきゃ。
どこいったの。
パパ……
まま……
ゆり…どこ…
ねむいなぁ
ちょっとだけ
いい
かな
「…ぁ………」
…………………………
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お読みいただきありがとうございます^^