プロローグ
「東京に核爆弾が落ちてきた」
それが、誰も口にしたことのない。誰もが想像しなかった現実だった。
あの日、空は異常なほど青く、風はいつもと変わらないように吹いていた。人々は平穏無事な日常を送り、渋谷のスクランブル交差点には、まるでいつも通りのように人々が行き交っていた。スマートフォンの画面には、いつものように通知が届き、広告やニュースが流れている。だが、そんな当たり前の風景が、たった一瞬で、過去のものになるとは誰も予想してなかった。
突然、空が裂けるような音と共に、光が町を包み込んだ。目に見えない衝撃波が大地を揺らし、ビルが一瞬にして崩れ去り、人々の悲鳴が空を切り裂いた。それは、時間が止まったかのような瞬間であり、そしてまた、時間が再び動き出した瞬間でもあった。
核爆発のあまりの衝撃で、渋谷の街は瞬く間に地獄のような景色に変わり果て、生命の息吹は一掃されたかのように感じられた。ビルの残骸、煙、そして死の雨が降り注ぐ中で、誰もがその場に立つ尽くしていた。無情にも、日常は壊れ、誰もがその混沌に飲み込まれていった。
その時、真琴はまだ渋谷の中心にいた。今、目の前に広がるのは、あの頃の都会の煌びやかさではなく、ただ静かな絶望の景色だけだった。彼は震えながらも、無意識に走り出した。生き残るために、ただそれだけを考えて。
そして、運命のように、彼もまた、破壊された世界で、新たな決断を下すことになるのだった。
――生きること。それが唯一の答えだと、彼は、その時、ようやく気づき始めていた。