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架空の書き物  作者: 如月瑠宮
とある怪異に纏わる人々の記
6/6

【みお】から【こと】へ

 私はその記録を目にした時、眉を寄せてしまった。それは一人の女性の記録である。名前はこと。彼女はの母親は三姉妹の次女で虚弱体質であった。その虚弱は彼女に受け継がれなかったが、母親は彼女を手元に置きたがった。理由は分からないが、推測する事は出来る。彼女の母親はキサラギヒメだったのだろう。

 ことには産まれた時からだった為知る事は無かったが、母親の容姿は普通では無かったのだ。真紅の目に鋭い牙。額は異様に盛り上がっていた。ことはそれを不思議に思う事さえ無かったようである。彼女にとって当たり前であったからだろう。

 それが異常であると彼女が知ったのは従妹からの言葉であった。鬼の娘と呼ばれた彼女は異常を理解してしまった。


 それから、彼女は母親から離れようとしたらしい。従妹の言葉は彼女を傷つけていた。そんな事は母親には関係無かったのだ。

 親不孝者と叫んだ母親に彼女は思わず言い返してしまった。人でなしのくせに。その一言は母親を狂わせてしまった。元々盛り上がっている額が更に肥大していく。遂には皮膚を破り、血を流しながら母親は咆哮する。完全に角が生えた姿はまさに鬼に見えただろう。

 ことは足が竦んで動けなかった。何も出来ないまま母親は殺された。


 ことは母親が息絶えた瞬間に起きた激しい頭痛によって気を失った。意識を手放して尚、苦痛に呻く様は異常な程であったという。そして、目覚めた彼女は母親と同じ存在になっていた。


***


 ことへ


 申し訳ないと思っている。それは本当なのよ。貴女の些細な幸せを崩壊させてしまった。

 でも、貴女が恐ろしい鬼に囚われたままなのが可哀そうだと思っていたの。これも嘘じゃないのよ。

 だから、解放したかった。貴女の母は鬼なのだと理解して欲しかった。


 みおより


***


 ことへ


 貴女は今、幸せ?


 みおより


***


 ことへ


 嫁ぐ事になりました。貴女が心配です。

 これが最後の手紙になるでしょう。手紙は貴女に届いていましたか?

 貴女の幸せを祈っています。


 みおより


***


 手紙は短いが数が多かった。それによって分かる時の流れは残酷にも思える。みおという従妹の成長さえ感じられる手紙からはことが無事に一生を終えた保証は何処にも存在していない。

 もしかしたら、最後の手紙の時にはもう彼女は死んでいたかもしれないのだ。

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