(6)
今日も今日とてユズとナナは一緒に暮らしていた。
「ユズの馬鹿!なんで分かってくれないの?」
「だからいつも言ってるでしょ?ナナの方こそ何でわかんないの……」
一緒に暮らす上ではやっぱり喧嘩は避けては通れないものでシェルター暮らしというストレスも加わってここのところこんなことばかりだった。
外は危ないからと言ってもまだ子供である二人はお互いに説得する力もなくこうして言い争いになってしまうのだ。
「ちょっと出るくらいなら大丈夫だってば!」
「なにかあったらどうするの!命はひとつしかないんだよ?怪我してもお医者さんはいないんだよ?」
「昔は普通に外で遊んでたけど怪我しなかったじゃん!」
「それは昔のことでしょ?今は戦争中だから街もボロボロで怪我しやすいんだってば!」
「……なんでユズは外のこと知ってるの?」
「……ラジオで言ってたから。」
「ユズって嘘つく時髪触るよね。ユズは外出たんだね。もう知らない。」
「周りに危険がないかとかシェルターの入口が塞がれてないか見ただけだよ……。ナナ分かって。不発弾とかもあるみたいだしナナ見つけたら絶対触るじゃん。爆発したら死んじゃうんだよ?」
「ちょっと外出たいだけだよ。何もしないから……それでも駄目なの?そんなに信用できない?」
「そんな……信用してないわけじゃ……それくらいならいいけどさ、私も一緒に出るからね。警報鳴ったらすぐ戻るからね?」
こういう時は必ずと言っていいほどユズが折れる形になる。ユズとていじわるで言ってるわけではないから安全さえ確保できるのならできる限りの事はしてあげたい気持ちはある。それにナナと喧嘩なんかしたくない。本当に大事だからこそ心配なのだ。ナナの行動パターンが分かってるからこその葛藤であって、でも世界的に戦争が始まってから何年もユズの言うことを守って外に出ないでいてくれたナナの言うことだから聞いてあげたい気持ちもあって。
だからこそいつも一緒にいるようにしているのだけれど。
「じゃあ少しだけだけど出よっか。」
「ありがと。ナナちゃんはちゃんとユズの言うことを守るから安心してね。」
「ショック受けるかもだけどなるべく綺麗なところに行くからね。」
そうして二人が向かったのはかつてよく遊んでいた公園で、その道中の建物はどれもこれも半壊していて脳天気なナナですらこの戦争の厳しさを痛いほど分からされた。
口数少なく歩き続けてようやく着いた公園で二人してブランコに座る。昼間だと言うのに人の影ひとつない街は不気味で、だというのに何故か気分はスッキリして、それはきっと久々に外の空気を吸えたからなのだろう。二人を包む静寂を破るようにナナがポツリポツリと話し始める。
「……ユズ。ありがとね。こんな街見せたくなかったんでしょ?」
「……うん。」
「でもね、ナナちゃんは平気なのです!……うん、予想はしてたからさ、こういうの。でもさ、ここは無事でよかったよね。ほら、遊ぼ?」
「うん、そうだね。少し遊ぼっか。」
そうして二人でブランコを揺らす。心地いい風が肌をくすぐった。それは長年のシェルター暮らしで塞ぎ込んだ心に降り積もったホコリを吹き飛ばしてくれるかのようで、少し時間が経った後にはもう既に晴れやかな気持ちになれていた。
あまり長時間出ていると誰か悪い大人に見つかるかもしれないからと短い時間だったけれどナナも喜んでくれてユズとしても心の底から安堵したのだった。
こうしてまだまだ続くシェルター暮らしは少しずつだが確かに変わっていくのだった。




