(3)
キッチンで料理をしているのはユズ。
戦争が終わった話は聞いたが核汚染で外には出られないまま。
せめて栄養だけは楽しく摂れるようにと非常食と栽培した野菜で献立を考えたのだ。
「ねー、また料理してるのー?」
「そうだよ。ちょっと時間かかるから待っててね。」
「ナナちゃんはいい子なのでちゃんと待ってるのです!」
「そうだねー。いい子だね。」
慣れた手つきで料理を進めていくユズ。
そう時間はかからず出来上がった料理を皿に盛ってリビングに持っていく。
「わー!ユズの料理だー!美味しそー!」
「食べてみないとわかんないよー?」
「ナナはユズの料理好きだから大丈夫!」
「そっか。それならいいんだけど。」
待ちきれずにおかずを一口つまみ食いするナナ。
「もー!ご飯食べる時はいただきますでしょ!」
「えへへー、忘れてた!」
「仕方ないなぁ……ほら、手を合わせて。」
「「いただきまーす!」」
そこで何かに気づくユズ。
「あっ、ちゃんと手洗った?」
「……洗ったと思うよ……そんな目で見ないでよー!ちゃんと洗ってくるから待ってて!」
「お腹壊しちゃうからちゃんと洗ってっていつも言ってるでしょ。」
「ごめんごめん!だって美味しそうだったんだもんー!」
「仕方ないなぁ。」
キッチンで手を洗って戻ってきたナナはさっそくご飯を食べ始めた。
ユズもそれを確認すると一緒にご飯を食べ始めた。
「あー!ナナの嫌いな野菜入ってるじゃん!ユズ食べてー!」
「好き嫌いしちゃダメって言ってるでしょ。」
「だってー。」
「無理なら一気に飲み込んじゃえばいいから。どっちにしても胃が消化してくれるし。」
「わかったよぅ……んっ。ほら食べたよー!褒めて褒めてー!」
「嫌いな野菜食べられて偉いねー。よしよし。」
「えへへー、褒められちゃった!ナナは偉い子なのです!」
「そうだねー、偉い偉い。」
この情勢でご飯が食べられてるだけでも奇跡だから。好き嫌いして栄養失調にでもなったら大変だとユズはなんとか嫌いな野菜でも食べてもらおうといつも工夫していた。
そのため食べやすくはなっているのだが、ナナは目ざといのでどうしてもいつもこういうやり取りが行われるのだった。
でも食べてくれればそれでいいから。やっと一安心。
ユズが工夫した料理はあっという間に二人のお腹に入っていったのだった。
「ねー、今度はナナも料理してみたいなー!」
「包丁とか危ないから使い方から教えなきゃね。」
「ドラマで人刺す時によく使うやつでしょー!ナナ知ってるー!」
「なんでそんな物騒なの。包丁は食べ物を切る時に使うものだからそんなことしちゃダメだからね!」
「はーい!ナナちゃんいい子だからそんなことはしません!」
そうしてナナにも料理を教えるようになった。
非常食をこうやって食べるのも珍しいとは思うがそれでシェルター暮らしが少しでも華やかになればそれでいいと思ったから始めたこと。
ナナは器用だからあっという間にユズの教えを吸収していった。
「ほら、今日はナナちゃん特製料理なのですー!」
「わー!凄いじゃんナナ!美味しそうだよ!」
「へへっ、味も期待していいよー?」
「「それじゃ、いただきまーす!」」
黙々と食べるユズ。と、あることに気づいた。
「ナナ、これ野菜入れてないでしょ。」
「ポテトも野菜だもん。」
「またそうやってー。ちゃんと緑黄色野菜食べなきゃダメって言ったでしょ!」
「次は入れるよー。ユズはしょうがないなぁー。」
「なんで私が悪いみたいになってんの……。」
野菜はないけれどちゃんと美味しくできてはいた。
ナナが器用なのは今に始まったことじゃないけれど、こういうことがある度に思い知らされる。
「将来いいお嫁さんになれるかなー?」
「なれるかもねー。」
「ナナちゃんの料理で胃袋を掴むのです!」
「よく知ってたねそんな言葉。」
「お母さんがよく言ってたから!」
「そっか……。また会えるといいね。」
「うん!ナナちゃんがいい子にしてればきっと会えるのです!」
二人の両親は今も行方不明のまま。
それでもいつかは会えると信じて今日も生きていく二人だった。




