(2)
これは世界が戦火に包まれたあとの二人の何気ない話。
「ねーユズ?でちゃダメ?」
「ダメだってば!まだダメだよ!」
「そっかー。……ん?何読んでるのー?」
「これ。」
「……なんて読むの?」
「非常災害マニュアル。今みたいな時にするべきことが書いてある本だよ。」
「ひじょーさいがいまにゅある?」
「そう。ってナナ絶対分かってないでしょ。」
「うんっ!わかんない!」
「なんでそんな自信満々なの……。いい?まず、戦争が終わるまでは外に出たら危ないの。」
「危ないの?」
「そう。危ないの。」
「危ないって?」
まだ8歳の二人だからまだ子供らしいナナとちょっとしっかりしてるユズ。
それでもユズでも難しい単語も載ってて、そういう時は辞書で調べていた。
「今度は分厚いね。何読んでるの?」
「辞書。言葉の意味が載ってるの。」
「ふーん。よくわかんないけどユズは賢いなぁ。」
「ナナも勉強しないとダメだよ?」
「ナナちゃんは勉強しすぎるとお腹が痛くなるのです!」
「そこは頭じゃないんだ……。」
ナナの自由奔放っぷりにはいつも困らせられる。
でもユズはそんなところが嫌いじゃなかった。
「それ終わったら遊ぼ!」
「分かったからちょっと待っててね。」
「はーい!ナナちゃん待ってる!」
毎日のように勉強をしているユズは少しずつ色々なことがわかるようになってきていた。
ラジオをつけて外の情勢を聞き始めるユズ。
「なにそれー?」
「ラジオ。それくらい知ってるでしょ?」
「あのよく大人っぽい音楽流れてるやつだよね!」
「それはFMでしょ。今聴いてるのはAMの方。ニュースとかやってるから。」
「よくわかんないやー。ねー、このつまみくるくるしていいー?」
「ダメ!局が変わっちゃうからナナは触っちゃダメだからね!おもちゃじゃないし。」
「曲が変わる?ナナ曲聴きたい!」
「その曲じゃなくてラジオ局の局だから。」
「えー、よくわかんないけど色々あるんだね!」
「はいはい、ナナもわかるようになろうねー。」
こう見ると歳の離れた姉妹みたいだがあくまでも同い年である。
混沌とした世界情勢を聴きながら深刻そうにするユズとあっけらかんとした表情でおもちゃのピンボールで遊ぶナナ。
「……はい。とりあえず終わったから遊ぼっか。」
「ねー、これ難しくない?ユズできる?」
「私はこういうの得意じゃないからなー、できるかな?」
「やってみてー!」
「分かったから急かさないの。……えいっ。えいっ。」
頑張って弾くがあっさりボールが下に落ちていく。
「ユズ下手っぴー!ナナちゃんの方が上手いのです!」
「……もう一回やるから。……えいっ、ほら100点のとこ入ったよ。」
「あー!ユズは大人気ないなぁー。」
「まだ子供だし。」
「それもそっか!あはは!」
「ナナは能天気だなぁ……。」
「ねっ、次曲かけて!」
ナナはまだ子供っぽいから移り気なのだ。
ピンボールに飽きたナナはすぐに別のことを始めようとする。いつもこんな感じなのでユズも慣れていた。
「今日はどれがいい?」
「朝やってるアニメのやつ!」
「昔やってたやつね。……はい、これ。」
ユズがCDを入れるとCDコンポから軽快な音楽が流れ出す。さっきまでラジオを聴いていた機械だ。
「ナナ魔法少女になりたい!」
「……なれるといいね。」
「魔法少女マジカルナナなのです!きらーん⭐︎」
「ナナは可愛いなぁ。」
ナナのこういう明るさに何度救われたかわからない。だって外では戦争が続いていてニュースといえば暗い話題ばかりだったから。
音楽に合わせて楽しそうにポーズをとるナナを見ながらユズは考え事をしていた。
いつになったら戦争が終わるんだろう。
終わったとしていつ出られるんだろう。
そんなことを考えているとナナに引っ張られる。
「ねーユズもやろうよー!魔法少女は二人組だよー!」
「もう、仕方ないなぁ。」
ナナに合わせてユズも慣れたように踊る。
シェルターが広くて良かったと思うユズだった。




