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17-2

夜遅くに帰ってきたルドルフにケニーからの提案を相談したところ、すぐに進めようということになった。


「それとアランのことですが、ずっとメイド達に世話をさせるのもどうかと思いますの」


「リリベルは面倒を見ないのかい?」


「そうですわね・・・あまり関わらないようにしているみたいですわ」


「なぜ?」


「よく分からないです・・・ロバートが言うにはそれが愛人としての覚悟だろうと・・・」


「ははっ!良い心がけだね。立派なものだ。要するにマリアンヌの子供として育てろということだろう?自分は関わりたくないとは・・・女性って強いんだねぇ。それとも子連れじゃ次の男のところに行きにくいのかな?」


ルドルフの言葉にマリアンヌは冷静さを失い、口調が乱れたことにも気づかない。


「ルドルフ!それはあんまりよ!酷すぎるわ!アランの顔をまともに見たことがあって?あなたにそっくりなのよ?なぜそんなことが言えるの!それを言ってはおしまいよ!」


「はっ!マリアンヌだって気づいているのだろう?リリベルが宝石を買いあさっていることをね!出ていく準備だって専らの噂じゃないか!黙って見逃してやっているこちらの度量を褒めてもらいたいくらいだ」


「ルドルフ・・・」


「君の父親と違って私は他の女性に逃げたりはしていない!それともアランを見ていると子供のころの自分を見るような気分になるのかな?でもそれは違うよ。君は独りぼっちだった。でもあの子は違う。君はこの家の女主人だ。君があの子を捨てない限り居場所は確保できるじゃないか!」


「居場所より親の愛が必要よ」


「君が愛してやってくれよ・・・私は・・・私は・・・」


ルドルフは両手で顔を覆い肩を震わせた。

マリアンヌはルドルフの隣に移動して、彼の肩をそっと抱いた。


「ねえルドルフ。あなたはまだリリベルを愛しているのでしょう?あの頃のように駆け寄って抱きしめて、ごめんねって言うだけでいいと思うのだけれど」


「ああ・・・愛しているさ・・・だからこそ疑ってしまったんだ。苦しいよ・・・辛いんだ・・・この胸を引き裂いて心臓を取り出して・・・ズタズタにしたいほどにね。駆け寄って抱きしめろ?ああ、何度もチャレンジしたよ。でもね、できないんだ・・・なぜだろうね・・・ごめんねって言えば修復できる時期は・・・もうとっくに過ぎ去ったんだよ」


「諦めるの?あんなに好きだったじゃない。私を嫁がせてまで守ろうとしたんじゃないの?それとも私が来たことがいけなかったのかしら」


「それは違うよ。マリアンヌがいてくれたから・・・君がいなきゃ・・・ごめん・・・ホントにごめん・・・君の人生を・・・」


「私は幸せよ?望んだとおりの毎日だわ。だからあなたにも幸せになってほしい。リリベル無しで幸せになれるの?」


「リリベルは・・・もう私を愛してはいない。彼女はとても強い心を持っている人だから、私があの子を・・・アランのことを疑った日から・・・もう私への愛は無い」


「どうにもならないの?」


「ああ・・・それにリリベルには次の恋人がいるみたいだし。彼女を疑い傷つけた私にできることは、リリベルの幸せを邪魔しないことだけだろ?だから・・・なるべく家にいないようにして・・・出ていきやすいようにしてるんだ・・・」


「マーキュリーのこと?」


「え?護衛騎士のハンセンだろう?」


「そうなの?」


「君はマーキュリーって聞いたの?」


「ええ・・・彼らしくないとは思ったけど」


「うん。マーキュリーは違うと思うよ?リリベルとそんな仲になった時点で私に告白していると思う。あいつはそんな奴だ」


「そうね、彼ならきっとそうだと思うわ・・・じゃあハンセン?」


「私の情報ではそうだね」


「なんだか切ないわね」


「ああ、そうだね・・・マリアンヌ、ひとつ確認したいんだが」


「何かしら?」


「もしもリリベルが出て行ってもここに居てくれるんだろう?もうこの家は・・・いや、私自身だな。君がいないとダメになってしまう・・・だから・・・」


「契約内容の変更ということかしら」


マリアンヌはキリッとビジネスライクな表情を浮かべ姿勢を正した。

スッと雰囲気が変わったマリアンヌの顔を見てルドルフが笑い声をあげる。


「さすがだ!マリアンヌ。君はぶれないねぇ!ああ、大好きだよ!そんな君にどれだけ救われるか!ははは!マリアンヌ、君は最高だ」


突然の絶賛の嵐に戸惑うマリアンヌ。

そんな会話が交わされる部屋の外にリリベルがいたことに二人は気づいていない。

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