06 チームカミス
心配無用、でした。
カミス邸一同から、穏やかにして丁寧な、歓待のお出迎え。
「いつものメンバーだけじゃなく、頼もしい用心棒さんも一緒だから心配はしてないけど、くれぐれも気を付けてね、モノカ」
「ジオーネの街の人たちは、あの悪党どもとは一切関わりないって聞いているけど、くれぐれも気を付けてね、カミス」
カミスさんとモノカさん、熱く見つめ合っております。
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いかん、モノカさんのお仲間の乙女一同が進展無き事にやきもきしている理由、とてもよく理解出来ました。
旅から戻り次第、早急に皆と相談して何とかせねば。
ずっとこの生殺し状態を見せつけられ続けるのは、かなわん。
「すでに私とは縁を絶った故国が要因となった今回のジオーネ遠征」
「皆さまには、本当にご迷惑を……」
エルミナさんが、とても申し訳なさそうにしておられます。
エルミナさんは、カミスさんの奥方にして元王女。
彼女の故国のエルシニア王国は、ここエルサニア王国と因縁浅からぬ間柄とか。
後ほど、皆さんに詳しい事情を聞いてみねば。
「エルミナのせいじゃないって、みんなちゃんと分かっているから、いつも通りのエルミナに戻ってくれると嬉しいな」
カミスさんの優しい言葉に、エルミナさんがうつむいて、涙。
それを見て、おろおろしているカミスさんに一言。
「まだまだ、だな。 カミス」
エルミナさんを優しく抱きしめるのはシスカさん。
シスカさんは、エルミナさんの親友であり永遠を誓った守護騎士。
カミスさんの奥方のおひとりではあるが、どうやら姉さん女房的な立ち位置の模様。
「では、エルミナを泣かせたお仕置きとして、私がカミスをハグしましょう」
クリスさんが、後退りするカミスさんを追い詰めるかの如くにじり寄って行きます。
カミスさんの婚約者のおひとりではありますが、なにせ『秀麗無双の槍乙女』
その圧倒的な実力差で追い詰められていくカミスさん。
その時、助っ人が!
「あぅ」
クリスさんが、モノカさんからの渾身のハグにて、実に幸せそうな表情。
こちらの西方の国々では、親愛の証しとして、お互い抱き合う『ハグ』なる行為が一般的なのです。
モノカ邸でも再三見受けられましたが、やはり東方出身の俺のような人間には、見ているだけでも刺激が強すぎる。
遠方出身のカミスさんも恥ずかしそうに目を逸らしておいでです。
何はともあれ、如何とも、しがたし。
「マクラお姉さん、本当に、気を付けてねっ」
「ハルシャちゃんも、いっぱい、気を付けてねっ」
ハルシャさんは、カミスさんの愛娘。
最年少ながらチームカミスを支えるお母さん的な優しい娘さん。
チームでの立ち位置も、その優しい性格も、マクラさんとは瓜二つ。
ふたりは同い年で大の仲良しなのですが、どうやらふたりのあいだではマクラさんがお姉さんのようですね。
お互いのチームが異なる道行の旅に出るゆえ、しばしの別れとなるふたり。
今のうちに、存分に甘え合ってください。
「旅支度中の忙しい時に、お邪魔しちゃってごめんね」
「こっちこそ、一緒に行けなくてごめん」
別れの挨拶の後、またもや見つめ合うモノカさんとカミスさん。
本当にもう、如何ともしがたし。
そして、カミス邸を出たチームモノカとお供の俺。
次に目指すは、エルサニア城。
ツァイシャ女王様への、出立の御挨拶。
とは言っても、お城はカミス邸から歩いてすぐなんですけどね。