04『若先生』
「ひとつ御相談が」
俺の言葉に、一同注目。
秀麗乙女たちから一斉に視線を注がれましたが、苦手などとは言っておられぬ。
今は、俺なりに全力で頑張らねば。
「この国に来てからまだ日は浅いのですが、皆さんのおかげで大勢の良き方々と知り合う事が出来ました」
「出来ればこの機会に、今まで魔導通信機越しでしか交流出来なかった方々に御挨拶に伺いたいのですが」
「チームモノカとしての旅の行く末を語り合う大切な会合である事は重々承知しているのですが、俺のわがまま、何とぞお聞き入れいただきたく」
「すみませんでしたっ、シナギさんっ」
突然、モノカさんが立ち上がった。
「自分の事にかまけてばかりで、マクラの恩人たる『若先生』シナギさんを大切な仲間たちにお披露目する機会を失いかけるとは、このモノカ一生の不覚」
「ぜひこの旅にて、その勇姿を皆の眼前に!」
モノカさんの瞳に力が戻ったのは何より。
なのですが、はて『若先生』とは?
「私たちと共に過ごすシナギさんを見ていた城下町の人々が、いつしかそのような呼び名を」
二つ名、という事でしょうか。
「お似合いですよ」
先生と呼ばれるような事、俺、何かしでかしましたっけ。
「シナギさんの普段の立ち居振る舞いから、自然とそう呼ばれるようになったみたいですよ」
何となく、『若旦那』カミスさんの気持ちが分かったような。
「それでは、旅の計画、煮詰めましょうかっ」
モノカさんのやる気、満開。
「ありがとう、シナギお兄さん」
マクラさんから、こっそりと、お礼の御言葉。
居候冥利に尽きますね。