03 相談
ジオーネ遠征準備のため、カミスさんは早々に帰宅。
居間にいるチームモノカの面々は、やる気満々。
なのですが、肝心のモノカさんは今回の旅、あまり乗り気では無い様子。
「やはりカミスさんと離ればなれは、お嫌ですか」
「えーと、違うんです。 今回の旅は、ぶらり旅のためにぶらり旅をするっていう方向で話しが進んじゃってしまって、なんとなくいつもとは違う違和感といいますか何といいますか……」
モノカさん、しどろもどろ。
いつものリーダーシップ満開乙女では無い、乙女心揺れ揺れな振る舞いに、
少々、いや、かなり心配。
「このあいだ、戦争屋どもを相手に大暴れし過ぎた反動なのでしょうか」
ノルシェさんも、心配顔。
「なればこそ、今の乙女感丸出しモノカを守護することが、誓いの騎士たる私の務めっ」
気合いを入れ直しておられますけど、丸出しという言葉は、乙女としてはいかがなものかと。
「どうしよう、カミスさんたちがお仕事から戻ってくるまで、長旅は保留にした方が良いのかな……」
アイネさんも、困り顔。
「やっぱり『恋する乙女モード』のモノカは、今までみたいな長旅は無理なのかもっ」
困っているひとを放ってはおけないお世話大好き乙女と評判のアイネさんが、いつもと違うモノカさんの様子に、とても困っておられますね。
チームの皆さんが不安を感じているのでしたら、ぶらり旅一時留保もやむ無しかと。
「ぶらりじゃない旅なら、モノカのやる気もきっと元通り、なの」
シジミさんが、思案顔。
シジミさんとモノカさんは、双子姉妹みたいな間柄なのだそうで、良い提案、期待しております。
「モノカがモノカらしくできるような旅の目的を探さなきゃ、なの」
『武神』が思う存分暴れられるような大悪党とか、『可憐なる闘神』が挑戦しがいのあるような大冒険とか、そういうのってぽこぽこ見つかるものなんですかね。
「みんなに相談してみるのっ」
シジミさんが魔導通信機マツカゼにて、何やらお話し中。
チーム一同、悩めるモノカさんのために頑張っておられます、けれども。
俺が言うのも何ですが、今すぐどうこうしなくても、モノカさんが落ち着きを取り戻すまで待ってあげるのも、有りかなと。
「シナギお兄さん、ちょっとお話聞いてもらえるかな」
マクラさんからの、真剣顔での、お願い。
皆から少し離れて、ふたりでこっそりと、お話し。
「迷ってるお母さんを、旅に連れてってほしいの」
モノカさんの迷いの原因、マクラさんならご存知なのでしょうか。
「きっと、マクラのせいなの」
……
「このあいだマクラが悪者から襲われちゃったから、これ以上怖い思いをさせたくなくて、おうちから出たがらなくなっちゃってると思うの」
…………
「マクラは、お母さんが楽しく旅ができなくなっちゃうのはイヤだから、あのときシナギお兄さんがマクラを助けてくれたみたいに、お母さんを助けてあげてほしいの」
………………
マクラさんの目に、涙。
乙女を泣かせる要因の排除、俺が出来る事を、全力で、成すのみ。
「マクラさんたち皆に笑顔でいてもらえるよう、俺なりに、やってみます」