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29 ふたり
けんちゃんたちが去った後、しばしの、沈黙。
ぱちん
焚き火がはぜる音に、今が夜番中であることを思い出す。
先に口を開いたのは、モノカさん。
「ゼファーゴーレムでは、今の私じゃ無理、でしたね」
「なぜアリシエラさんは、演習にあんなものを」
「たぶん、開発中に興奮しすぎてやり過ぎちゃったのかと……」
「アリシエラさんの気持ち、私には良く分かるんです」
苦笑する、モノカさん。
「私の仲間たちって、とっても優秀なんですけど、たまに歯止めが効かなくなっちゃって」
ふと思い出す、モノカさん駄目駄目モードの姿。
とても良く、理解出来ました。
「いつでも落ち着きを失わないシナギさんのような人が、うらやましいです」
モノカ邸の乙女たちの乙女っぷりに、いつもぐだぐだな俺の姿をお忘れですか。
「これからも、末長く、用心棒でいてくださいね」
「日々これ修練、という事で、お互い頑張りましょう」
ふたり、目を合わせて、にこり。
「私の『ゼファー』も、シナギさんの『ぶなしめじ』みたいに後世で大切にされているといいな」
モノカさんの、小さな、つぶやき。




